拝啓、十二のあなたへ
拝啓、十二のあなたへ
お元気でしょうか。11年前から現在へ向けて、あなたが書いた手紙の返信をこの小説に書き綴ります。
あなたは「会社の会計係」というタイトルで卒業文集を書きましたね。わたしはいま、あなたが澄んでいる場所からちょっと遠い、でもあまり遠くない東京都のハズレで一人で暮らしています。
あなたが思っている生活とはちょっと違うかもしれないけれど、なんとか自分なりに頑張っています。あなたが描いた「会社」に入ることはできなかったけれども、その「会社」を自分で立ち上げようと頑張っています。
あなたに、伝えたいことがあるのです。それは「未来は絶対にわからない」ということです。
あなたは、コンピュータが好きなのを私は知っています。ですが、私は某農業大学を卒業したのです。信じられないでしょう。高校時代にとある先生と出会ってとても面白い学問だなと思ったからこの道を選んだのです。ですから、あなたもきっと自分の考えを180°変えてくれるような素敵な人に出会えます。
それから、今付き合っているともだちは大切にしてください。あと、部活動の先輩や後輩も。きっとあなたの力になってくれるでしょう。
母校というのはとてもいいものです。私も、不意に訪れたくなるものです。あなたは公立の小学校に通っていると思いますが、私は高校大学は私立の学校に行ったのですよ。だから人間関係が大変でした。あなたは人付き合いが苦手なので、きっとこれから苦労することでしょう。でも大丈夫。きっと乗り切れます。
そうそう、11年前といえば東日本大震災がありましたね。未曾有の大災害でした。たしかその時、私は小学校卒業式の予行練習をしていたのですが、体育館の中で先生たちの携帯電話が一斉に鳴動したのをよく覚えています。確か卒業式はきちんとやったはずですが。あなたが澄んでいるところは確か海が近いでしょう。津波とか液状化とかに気をつけてくださいね。
それでは、ごきげんよう。 敬具