第四話 再会
春休みが終わり、新学期になり、夏がきたが、あの日のことは忘れかけていた。というか、忘れようとしていた。あれこそ夢だったんだ。うん、そうだ。そう自分に言い聞かせて、俺は机の上に伏せていた。そんないつも通りの休み時間。教室内がいつもよりも騒がしくなってきた。何かあったのかな。気の所為かもしれないが、その音が近づいてくるような気がした。どういうことだと思っていると、
「真琴、起きてるんでしょ」
という声がした。驚いて飛び起きると隼人がいた。近距離に。思わず悲鳴をあげそうになったが、何とか耐えていると、また隼人が話始めようとする。俺は慌てて立ち上がり、隼人の手を取り教室を飛び出した。
「ちょっとは空気読めよ!!」
誰もいない棟で、そう叫んだ。後でどうしよう。マジで面倒くさい!!クッソー隼人のせいで…。
「とにかく、これからはみんながいる所では話しかけてくるな」
そう言うと、
「なんで?」
と言った。本当にわからない。そんな表情で。嘘でしょ?なんで分からないんだろうそう思いつつ、理由を説明した。どうか伝わってくれと思いながら。
「不思議な人だね、真琴って」
説明を終えると、開口一番なぜかそう言った。どういうことだろう。こっちからしたら、隼人の方が不思議だ。完璧と呼ばれるほどの奴がどうしてこんな俺とわざわざ関わろうとしてくるのだろう。そう思った。なんだかんだ言いつつ、俺が言いたいことは理解出来たようで、次から気をつけることを誓ってくれた。わかってくれてよかった。
「で、なんで来たんだよ?」
「新しい小説を書いたからまた読んでほしくて」
俺は疑問に思った。なんで俺なんかに…。
「また俺が読んでいいの?」
「真琴に読んでほしいと思って」
どういうことだろう。まぁいいや。小説読めるし。
「面白くなってるよな?」
「多分…。でも、前よりはマシだと思う」
ならいいか。アドバイスが生かされてるといいなと思っていたところ、ふと気になって、一応聞いて みた。
「今回も目の前で読んだ方がいいか?」
「いや、照れくさいからいい」
少し赤面しながらそう言った。そんな顔するなよ。なんかこっちまで 照れくさくなってきた…。
やばいな……。
「じゃあ読んだら連絡する」
あの日に連絡先(LINE)を交換しといて正解だった。
そう思いながら、教室に戻った。
「森さん!小野寺君と知り合いなの?!」
教室に戻ると、案の定クラスの女子達に詰め寄られた。 予想はしていたけど、面倒だな。そう思いながらも、答えなくてもそれはそれで面倒だから
「最近話す機会があったからだよ」
と、簡潔に答えた。
「えぇー!!いいなぁー!羨ましい!!」
そう言う女子達を見て、羨ましいなら変わってくれよと皮肉にも思った。
そこから隼人ってすごいんだよーといった内容の話が始まったため、俺は静かに自分の席に戻った。