第二話 共通点
「お前も小説を書くのか?」
そう聞くと、少し動揺しながらも小野寺は小さくうなづいた。
へぇー。こんな奴も小説を書くのか。意外に思いながらも、少し興味が湧いた。あらゆる才能をもつ者は、この世界がどんなように見えるのか,それをどのように表現するのかが気になった。
「読ませてよ。小説」
俺はフェンスから手を離し、小野寺の方へと向かった。
「あれ、死なないの?」
「いいから読ませろよ」
そう言うと、小野寺は何も言わずに屋上を後にした。
……せっかく分かり合えると思ったのに。せめて一言「無理」とか言っていけばいいのに。てか言えよ。そう心の中で毒づいていると、また扉が開いた。
「はい」
そう簡潔に言った小野寺の手には、原稿用紙が握られていた。
「いいの?」
「君が読ませろと言ったんだろう?」
「あっさり了承してくれると思わなかったから…」
「僕も人から評価してもらいたかったから」
「ありがとう」
とりあえずお礼を言いつつ、俺は原稿を受け取った。今時アナログかよと思いながら。
「じゃあ家で読んでみるから」
そう言うと、小野寺隼人不満そうな目で俺を見つめた。
「すぐに感想が聞きたいから今目の前で読んでほしい」
「よほど自信があるんだな」
小野寺は何も言わなかった。
今すぐに小説を読みたかった俺は、小野寺の意見を聞き入れた。 屋上でも良かったが、また誰か来るかもしれないから、近くにある喫茶店へと移動した。そして小野寺はコーヒー、俺はオレンジジュースを注文した。
俺は本の中へと入っていった。