エピローグ
こちらのメンタルケアを冬樹はどうにかしなければならない。
「不肖レーヴァテイン、まさかこんな状態になっているとは露知らず……」
「まぁ、仕方なかったってやつだ」
「仕方が無かったで済むならわたくしは不要でございます」
「まぁ、今回は何とかなったっつー事で一つ。な」
めっちゃどんより状態である。
咲哉の庵の中で虚ろな瞳で朝食を作り始めているが明らかに手元がおぼつかない。動揺が隠しきれていなかった。
「あー簡単なもので良かったら俺が作るからさ、今は座ってろ。頼むからそんな状態で動かんでくれ」
「申し分かりません」
「なんてぇ~?」
レーヴァテインの代わりにネギを切り味噌汁を作っていく。ただ分量を間違えているのか数十人分はある。
落ち込み具合が尋常ではなかった。それこそ、絶対に守らなければならないものを壊してしまったような、そんな落ち込み方に見える。
「……なぁ」
「はい、何でございましょう」
「昔の咲哉ってどんな奴だったんだ?」
おもむろに聞いた。レーヴァテインといいアリスといいあまりにも人徳が過ぎる。咲哉の記憶破損をここまで後悔できるのは少しばかり行き過ぎな気がしたから。
「どんな、と問われると、アレですね。人誑し」
「あー」
「子供のようで、大人のようで、お年寄りのようで、でもその全てが咲哉様なのです」
「それは……レーヴァテインが会った時からか?」
「申し訳ありませんが、天の花の時代の事をおっしゃっているのならば私は知らないとしか言いようがありません」
「そうか……」
知らないと言ったその後にレーヴァテインは遠い昔を思い出す。
「ただ、天の花の名残の時代は知っています」
その言葉に他の誰でもない冬樹は耳を傾けた。
「そう、あれは……決して幸せな終わりではなかった……私と、私の前の主、ハル様が咲哉様に救われた日の出来事です」
レーヴァテインは語りだす。百五十年以上前の未だ神話の残滓漂う、一柱の子供の話を。




