邀撃作戦 【撃破】2
血に塗れた生だった。けど後悔は無い。
あの魔法使いの記憶に俺はいつまでも残る筈だ。それだけの戦いは出来た。
「強かったな。魔法使い」
心残りは無い。どこに行くのかは知らないが、どこかへ行かないと。ここは、俺の居るべき場所じゃない。
なのに、足に何かが纏わりつく。
振り返るとそこには今にも泣き出しそうな子供がいた。
「ワンワン、置いて行かないで」
「あぁ、良いぜ。一緒に行こう。送ってやる」
何処かに向かう。よく知った乳臭い子供と一緒に。生き汚く現世にしがみ付いたツケを払うために。
浄化され燃える吸血鬼の遺体を目指し冬樹は足を引きずりながら近づいた。
「……名前、聞いてねぇな」
原型を留めた遺体に最大の敬意を込めて、冬樹はその吸血鬼に名を送る。
「さようなら、銀血」
【銀弾】ならざる【銀血】、この世にただ一匹の魔法を破り星を噛み砕いた偉業の達成者。
冬樹の瞳にいつまでも残るであろう越えなければならない壁は、燃え尽き、灰となって消えて行った。
「シャル」
『はい」
シャルロットの乗っていたスパイダーはほぼスクラップ状態、魔力電池も三基ダメになった。それでもまだ仕事は残っている。
「咲哉の所に行くぞ」
『しかし怪我が」
「んなもん後回しだ。まだ咲哉が戦ってる。一番長引いちゃいけねぇ奴がまだ戦ってんだ」
『……了解しました。ですがここからでは五分ほどかかります」
「上等、急ぐぞ」
よじ登るようにスパイダーの背に乗るとゆっくりではあるが走り出し、途中から立体軌道へと切り替え急いで咲哉の元へ跳んで行った。
冬樹達が戦っていた場所とは別の方向に走っていく影が一つ。長く黒い髪を靡かせ黒い光を纏って全力疾走するは楓の姿だった。
十輪はアインの治療に、アリウスは子供が心配と隠れ家の空間と出入り可能な鳥居へと向かい、自力で肉体を治した楓は十輪の制止を振り払い一足早く駆け付けに行った。
遠くで銀の月を思わせる真っ赤な血の球体浮遊しているのが視認できる。距離にして十キロ、後五分で到着できる距離だった。
別に楓が行く必要はない。しかし、不安があった。胸騒ぎと言うべきなのだろう。
そもそも最後に残った吸血鬼だけアインと冬樹、そして咲哉しか見ていない。そして咲哉からその吸血鬼の情報は語られていない。
何故かと問われれば咲哉はこう言うだろう。
自分が倒すべき敵、と。
それはアリスを傷付けたからだけではない。倒せるのが自分一人しかいないという意味でもある。
第二真祖に直接吸血鬼に変えられた第一世代の吸血鬼、血が古ければ古いほど呪いは濃くなる吸血鬼の特性上長く生きた存在程強くなる。
だからこそ咲哉は一人で抱えた。アリスと共にみんなから放れたのだ。
「待っててね。咲哉君」
黒い光は空を裂き一直線に最後の戦場に向かう。
白い少年を助ける為に。




