幕間 【とある少女の思い出】
私の体は穢れている。穢れた母から生まれ、年端もいかない内に穢されて、母が目の前で死んだ時も穢されていた。
だから、終わった時には死ぬと思っていた。でも、一生媚びて生きて行けとその誰かに言われた。
寒かった。寒かった。寒かった。寒さで指の先が欠けて、新しいのが生えてきた。
太陽の光が私は大嫌いになった。燃えはしないけど痛かった。
腹が減ったら人が食べ物に見えた。それが嫌で下水道に逃げた。
誰も助けてくれなかった。誰にも手を伸ばさなかった。
死にたかった。惨めに生きるぐらいだったら死にたかった。生まれた時から私の居場所はこの世界のどこにもなかったのだから。
だからあの真祖様は私を眷属にしたんだと思う。死にたい私を死ねなくして、嗤うために。
おなかが減って誰かを殺したくなかったからネズミを食べて生き延びた。それでも喉の渇きだけはどうしようもなかった。
死にたい、殺したくない。誰か助けて。誰も助けないで。
死にたくない、誰か殺して。
そんな時に、彼に出会った。
狼の彼に。
「無事か?人間の娘」
耳と尻尾と、手足の先端が獣の人間のようだった彼は優しく私に話しかけてくれて、私を自分の住処へと案内してくれた。
おんぼろの家で病気とかで死んだ人間の血を飲んで、それ以外は蛇とかネズミとか、たまに良いもの食べて、多分幸せってこんなんなんだなぁって、実感できた。
細々と、でも彼の毛は暖かった。
寒い眠い苦しい、ヘリス、どこ?
お願い置いて行かないで、死なないで。
わたしをひとりにしないで。わたしをつれていって。




