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第15話 実家に帰れば、温かいご飯と布団が待っています。

「……よっくん、この(ひと)、誰ですか?」

 もう、最初の出会いのときといい僕が同人誌買ったときといい、ほんとタイミング悪いな栗山さんは。むしろ天才なのではないのか?

「そ、そうだよな……二人は、初対面だもんな……」

 これから始まるであろう惨劇を予想しては、身震いしてしまう僕。いっそのこと逃げ出したい。実家に帰りたい。

「はじめましてー。上川くんと同じ大学同じ専攻の三年生の、栗山由芽っていいます。よろしくね?」

 ……にこやかな調子で綾に自己紹介をする栗山さん。このときばかりはこの人の性格がこんな感じでよかったと内心感謝した。……いや待てよ? 栗山さんがもうちょい常識ある人だったらそもそもこんなことになっていないのだから、やっぱり感謝するのは筋違いだ取り消します。

「……もしかして、この人がよっくんの家に泊まった女の人ですか?」

「へー、よっくんって呼んでるんだー。そういう呼び名もいいよねー」

 ……栗山さん、最初は名前呼びだったのになぜか上川くん呼びになってますからね。万が一にもあなたに距離感を測るっていう気持ちがあったのならばそうかもしれませんが。

「……そ、そうだよ、栗山さんが、昨日僕の家に泊まっていったんだ」

「そうですか……あ、申し遅れました、よっくんの幼馴染の、池田綾です。高一です」

 敵意剥き出しでとりあえず名乗る綾。……頼む、何事もなく終わってくれえ……。

「高校一年生かあ、若くていいなあ……」

「栗山さんこそ、女子大生ということで、さぞ色々と遊んでいらっしゃるんですね?」

 もう獲物を前にした狼だよこれ。戦う気満々だよ僕の幼馴染。

「いやだなあ、そんなことないよー、わたしは上川くん一筋だから、ね?」

 こっちを向いてウィンクするなあ! 確かに局所的に見れば可愛いかもしれないけど、それ本当の意味で死人が出る「燃え」案件だよ!

「…………」

 ほらあ、綾の眉間が寄っちゃっているよ。どうしてくれるんだ栗山さん。

「ちなみに、栗山さんはよっくんとどういった関係でいらっしゃるんですか?」

「えへへっ……」

 ちょ、まさかこの悪魔──

「恋人……」

 う、嘘だろ……?

「候補かなあ」

 喉元まで出かかった「違う!」のツッコミをしまいこみ、ホッと一息つく。が、その答えはどうやら綾の導火線に火をつけるには十分だったようで、

「へえ……恋人候補、ですか……そうなんですね……ということはまだよっくんと付き合っているわけではない、んですね?」

「うん、そだねー。このあいだ恋人になってーってお願いしたんだけど、断られちゃった」

 綾さーん。何ちょっと嬉しそうな顔しているんですかー? 頬膨らませて表情崩しているの僕にバレてるよー?

「……へ、へえ……そうなんですね……それなのに、今もよっくんにつきまとっているんですか……?」

 笑い堪えているのも見え見えですよ……。

「えへへ……そんな、つきまとっているなんて……そんなことないよー。だって上川くんなんだかんだでわたしのこと追い出したりしないもの」

 それはあなたが僕の弱みを握っているからですよ勘違いしないでください。

「ぐっ、ぐぬぬ……」

 それリアルで言う人初めて見たよ。てっきり二次元のみの言葉だと思っていたけど使う人いたんだね。

 どうやら、この二人が関わると、突っかかる綾、いなす(というより都合いいほうにしか考えていない)栗山さんという化学反応が見られるようだ。……よかった、危険な気体が生まれるとか、引火するようなものでなくて……。

「あ、上川くん、じゃあ約束通り服持って帰るよ……? あれ、私の服が入った紙袋は……?」

 他にも持って帰るものがあるでしょーがと内心毒を吐きながら、僕はああそういえばベッドの下に隠したなあと思いだした。……ん? 待て、よ?

 もし今ここで僕がベッドの下からその紙袋を出したらどういう状況になる?

 端から見れば女性の服を盗もうとした男子……の図? しかも、中身はパジャマだけでなく「服とか」の「とか」まで入っている危険物……。

 あ……今度こそ詰んだ気がする。

「あれれ、部屋の隅に置いたと思うんだけどなあ。上川くん、知らない?」

「……え、なんでしょう、僕は何も触っていないので知りませんよ?」

 とりあえず状況をごまかすためにとぼけてみるも、そこで何も知らない綾が地雷を放り込む。

「そういえば、さっきよっくん必死に何かを隠そうとしていましたよね?」

 神様……どうか、僕に救いを。

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