表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたを食べてもいいですか?  作者: 渋谷かな
8/48

執事とメイド

「アッハハハハ! 女王!? 使えない子、ドジっ子、ダメっ子、いらない子のアップル様が!?」

「そうよ! アップル様に何ができるのよ!? 黙ってなさいよ! なんで生き残ったのがアヒルの子なの!?」

「もう終わりだわ。あんたなんかアップル様じゃなくて、腐ったりんごよ。ケッケッケッケ。」

「ああ~、明日からどうやって暮らせばいいのよ? 家賃が払えない!?」

「ど、どうしましょう? アケビさん。」

「ん、んんんんん!?」

 血塗られたアップルの城で、フルーツ家に仕えていた執事とメイドたちは、主の訃報によって、本音が口から出てしまう。

「去る者は去ればいい。私に仕える気がないものは、この世から去れ。」

 黙って聞いていたアップルが口を開く。

「何よ!? 偉そうに!? こんな所、こっちから出て行ってやる!」

「そうよ! そうよ! あんたなんか生まれが良かっただけじゃない! もうフルーツ家も終わり! こんな泥舟に誰がいるものですか!」

「あなたは、これから何もかも失って、体でも売って暮らせばいいんだわ。ケッケッケ。」

 3人のメイド、アンズ、イチジク、ウメが暴言を吐いて去って行った。

「残ってくれて、ありがとう。アケビ、アセロラ、アボカド。」 

「もったいないお言葉です。我が家は代々フルーツ家に仕えてきた執事の家系。スイカ様の亡き後、当主になられるアップル様に忠誠を誓うのは当然のことです。」

「アンズ、あなたがいてくれて、私は心強いです。家のことは全て任せます。」

「はは。アップル様。」

 アンズは思った。もしかしたらアップル様は偉大な主になるかもしれないと。

「あの、どうして私のような一メイドの名前を御存じなのですか?」

「私はメイドさんの名前は全員知っていますよ。だって、この家で私に優しく接してくれたのは、メイドさんたちだけですもの。アセロラさん、これからもよろしくお願いしますね。」

「はい。アップル様。」

 アップルはあえて言わなかった。私に冷たくしたメイドの名前も全て覚えていると。

「アップル様!? お給金は出るんでしょうか!? 私、家賃が払えないと家を追い出されてしまいます!?」

「安心して下さい。アボカドさん。残ってくれた皆さんのお給金を2倍にします。」

「2倍!?」

「それから、皆さんはお城の好きな部屋を使ってください。もちろん家賃は取りませんよ。」

「タダ!? い、い、い、いいんですか!? アップルお嬢様!?」

「はい。残ってくれた皆さんに今の私が思いつくことは、こんなことしかありません。きっとご先祖様たちも、フルーツ家が存続できて喜んでくれているでしょう。」

「アップル様、何なりとお申し付けください。」

「私も何でもやります。何でも言って下さい。」

「はい! はい! アップル様! 私も心を込めて働かせていただきます!」

 本当のアップルは先祖を思いやる心は持ち合わせていない。だが、アップルは、自分に忠誠を誓う召使を3人手に入れた。

「それでは部屋をきれいにしてちょうだい。ちょっと血生臭いから。」

「かしこまりました。」

「私は、ちょっと行く所があるので。」

 アップルは広間から去って行った。

「あれがアップル様か!? 信じられん!? なんと優雅に堂々とした態度だ!?」

「本当ですね!? ダメっ子、ドジっ子、使えない子、いらない子と罵声を浴びせられていたアップル様には見えません!?」

「やったー! 残って、正解だ! これで家賃が払えるぞ!」

 執事とメイド2人もアップルの変貌ぶりに驚いた。


「いや~ビックリしたよ。」

「何が?」

「アップルが執事さんやメイドさんに堂々とした態度で話しているから。」

「簡単よ。人間は困った時ほど本性を現すから、自分にとって、誰がいい人で、誰が嫌な人か分かりやすわよ。」

「確かに。残ってくれた人は、アップルのことが好きなんだね。」

「んん~そうとも言えないわよ。」

「元々、私に優しかったのはアセロラさんだけ。でもアセロラさんは臆病だから、みんなに強く出れない平和主義者だし、アケビはフルーツ家に忠誠を誓っているだけで、私に忠誠を誓っている訳じゃないし、アボカドは、お金目当て。もし私が貧乏なら去っている人よ。」

「すごい。執事やメイドさんのことをよく知っているんだ。」

「ずっと見てきたからね。私は傍観者として。だから、フルーツ家の全権を与えたり、お給金を上げて、お城にも住まわせて、ここが平和に落ち着けば働き続けてくれる。結局、人間は地位や名誉、お金に住まい、安定した治安、自分に何かを与えてくれる人に従う者よ。」

「そういうものなんだ。勉強になります。」

「ジュライ。私、神様に会ってみたい。」

「神様に?」

「神様に会って、どうすれば私とジュライが幸せになれるのかを聞きたいの。」

「アップル。」

 ズキューンと胸を撃たれるジュライ。

「行こう! 神様の元へ!」

 アップルとジュライは神様の元を目指す。

「その前に用事を済まさないとね。」

 アップルの用事とは?

 つづく。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ