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あなたを食べてもいいですか?  作者: 渋谷かな
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神の使徒と神の騎士

「分かった! あなた神の騎士だわ! 面白くない私の人生に、神様が救いの手を差し伸べてくれたんだわ!」

 不思議とアップルは、教師を丸飲みにした羽の生えた鎧騎士を見ても怖くなかった。逆に自分の思い通りの出来事を起こしてくれた神の使徒に親近感を覚える。

「何やってるの!? アップル!?」

「え?」

「逃げるわよ!?」

「うわわわわー!?」

 アップルは、友達のオレンジたちに手を引っ張られ、神の使徒から慌てて逃げていく。


「なんなんだ!? あの化け物は!?」

「食った!? 食ったよな!? 人間を食ったよな!?」

「怖い!? 誰か!? 助けて!?」

 オレンジ、マスカット、モモたちは、神の使徒に恐れを抱いた。

「そうかな? 私には嫌な教師や面白くない授業を壊してくれた、まさに神の騎士だわ!」

「これだから王族の世間知らずのお嬢様は嫌いなんだよな。」

「そうそう、他人が食われたら、自分も食われるかもしれないって、どうして考えられないんだ?」

「王族でごめんなさい。バカでごめんなさい。」

「まあまあ、アップルちゃん!?」

「ありがとう、モモちゃん。」

 オレンジとマスカットは厳しい性格で、モモは優しい性格だった。


「こ、これは!?」

「キャア!?」

 アップルたちが逃げていると学校の廊下には、真っ赤な血と血塗れの手や足の肉片が飛び散っていた。

「おえー!? 気持ち悪い!?」

「みんな、食われたんだ!?」

「嫌!? 早く、ここから逃げなくっちゃ!?」

「ヤバイ!? ヤバいじゃない!? 兵士は何をやっているの!? 私はフルーツ家の人間よ!?」

 能天気なアップルも、悲惨な赤い世界を見て、事態の危険さに初めて気づく。

「ギャア!?」

「え?」

 マスカットの悲鳴が聞こえ、アップルが振り返ると、マスカットが大きな口にモグモグと食べられていた。

「助けて!? ギャア!?」

 マスカットは大きな口から頭と片手を出して、助けを求める。

「マスカットを助けなきゃ!?」

「無理だ!? あそこまで食われては!?」

「キャアアアー!?」

 マスカットの噛み千切られた頭部が、アップルたちの足元に転がって来る。マスカットは息をしていない。

「ゲップ。」

 フルヘイスのマスクの中に大きな口を収納した神の使徒はゲップをする。

「マスカット!?」

「いやー!?」

「来るな!? 化け物!?」

 教師が丸飲みされた時とは違い、友達のマスカットが無残に食べられるのを見たアップルたちは体がブルブルと震え恐怖に支配される。

「どうせ食うなら! こいつを食え!」

「え?」

 オレンジは、アップルの背中を押して、神の使徒の方に押して差し出す。

「逃げるぞ! モモ!」

「うん!」

 オレンジとモモは、アップルを犠牲にして逃げるつもりだった。

「どうして!? オレンジ!? モモ!? 私たち友達でしょ!?」

「おまえなんか友達じゃねえ!」

「そ、そんな!?」

「知らなかったのか! 私はおまえが王族だから友達のフリをしていただけだ! 生きるか死ぬかの時に王族や金に意味なんかねえんだよ! 人間は自分のことが一番かわいいに決まっているだろうが!」

「そ、そんな!?」

「マスカットも、おまえなんか生きる価値も無いって言ってたぜ!」

「モモ!? モモは違うわよね!? いつも私に優しくしてくれたもんね!?」

「疲れた。」

「え!?」

「あんたみたいに生まれだけが良くて悠々自適に生きている人間に、庶民だからって下手に出て気をつかって生きることに疲れていたのよ! あんたなんか、死んでよ! 庶民を守る王族なんでしょ!? 死ぬ時ぐらい庶民の役に立って死になさいよ!」

「モモ!?」

 友達と思っていた二人の言葉にアップルは深い暗闇に落とされる。誰も自分のことを友達とは思っていなかった。誰も自分のことを助けてくれる人がいないことに、アップルは初めて気がついた。

「逃げるぞ! モモ!」

「うん!」

「いやー!? 置いていかないで!?」

 オレンジとモモは、アップルを見捨てて走って去って行く。

「ギャア!?」

 神の使徒はフルヘイスのマスクを開けて、神様から授かった神の口を大きく開く。そして「いただきます。」と言ったかのように、アップルを食べにかかるだった。

「いやー!? やめて!? 助けて!? 来るな!? 来るな!? 来ないで!?」

 神の使徒は、アップルに一歩一歩と近づいていく。

「私なんか食べても美味しくないわよ!? お腹を壊しても知らないからね!?」

 パクッ。アップルは大きく開いた口に食われ始める。

 つづく。


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