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21【現実的シンデレラ】

 そろそろカノプスの町から出ようかと、レオと話がまとまった。

 巨大ゴーレム爆誕は国王が「すげぇからご褒美だしちゃう」というレベルのことだったようなので、これ以上騒ぎが大きくならないうちにとんずらしてしまえと。なんでも国王が直々に出向いてくるらしい。

 自称商人だけれど、それらしい活動ができていない。町で雑用してお小遣い稼ぎくらいしかしていない。申し訳程度にガラスのペンダントを販売している。花を模したりと繊細な工芸品は仕入れ先を怪しまれる可能性があると、レオから指摘があった。確かに、普通に運搬したら壊れそうなものだったら、本当に町の外から仕入れたのか怪しまれるかもしれない。なので表面には角がなく内部がカラフルなものを製造。ベネチアングラスに似ているかもしれない。レオの監修のおかげでなかなかいい価格で買い取りしてもらった。小金持ちのお嬢さん向けのつもりだったけれど、ギルドの商人さんは個人で一つ購入しループタイにしたいと言っていた。

 さて、町を出るにあたってだ。


「ムンクゴーレム馬車だめ?」

 俺の作った馬車の評判は芳しくない。土でできているから用がすんだら核だけ回収すればいいし、野外でキャンピングカーのようにも使えてすごく便利だと思って試行錯誤しながらデザインをいじっていたのだけれど、レオ曰く、モンスターとして遠距離から火球くらうからダメだと。

「デザインも問題なんだけどさ、実用的にもやばいんだよ。あの重量がほかの馬車と接触したら惨劇になる。具体的に言うと木っ端みじ」

「それはだめだ」

 見た目以外でよそ様に迷惑かけるのダメ絶対。確かに重すぎると道にへこみができたりする。それは危険だ。

「どうしてもゴーレム馬車が諦められないなら、ウッドゴーレム」


 自動で動く木造馬車、なるほどシンデレラのフェアリーゴッドマザーが製造したあれだ。

 レオにかぼちゃの馬車のイメージ図を提出した。

「正気か!湿気るぞ!」

 ダメだった。確かにカボチャの馬車は内装がちゃんとしていた気がする。もちろん乗合馬車を体感しているから、縦揺れを緩和するつもりで設計したけれどかぼちゃはダメ。ムンクゴーレムの段階でも乗車部分の下に、粘土をしこんで衝撃緩和を考えていたけれど根本から失敗。

「材料から考え出さないとだめか・・・」

 俺が木の加工ができればいいのだけれど。種から植物をはやすことはできるから、まあ、いけるといいなとは思う。材料にしていい適当な植物を採集したい。でも常識的に考えて町の土地で勝手にむしったらまずい。懇意にしている農家のおっちゃんに、魔法の練習で植物が欲しいので伐採していいものを確認することにした。

 ちょうど、一時血の池になった場所に邪魔な木があったのでレオが素手でそれを引っこ抜いてきた。


「魔法で強化してるの?」

「身体強化とかは属性とかはなくて魔力の操作の範疇だから。できると殴られてもいたくないし。最初に覚えた」

「そうか」

 レオの故郷って、血の海にしたらダメかな。ダメだよな。証拠が残るもんな。どこにあるかもわからないし。そもそも、故郷の人間が犯人でない場合もあるし。

 まずは、乗り心地のいい馬車を作ろう。


 目的を忘れたらいけない。



***



 ノブはやればめちゃくちゃできる子なんだとレオは感心している。

「これなら、乗れるかな」

 ノブがレッドミントの木を使ったウッドゴーレムの馬車は、見た目も乗り心地も及第点だった。馬車特有の縦揺れはあっさりと改善された。蔓で編むように作られた乗車部分は驚くほど快適。けれど、けん引するゴーレムが遠目から見ても大丈夫な造形にするのに時間を費やした。モンスターの大規模襲撃が起きた後に、ノブのやべぇデザインゴーレムを披露するわけにはいかない。

 町から離れた場所でこそこそ練習した。一度見つかってしまい、冒険者が警邏を手伝い始めてかなり焦った。

 ちなみにレッドミントは戦場に生える繁殖力の強い木だ。ミントとは分類上は違うのだけれど成長速度としつこさからレッドミントと呼ばれている。レッドは察してもらいたい。

「・・・やっとか」

「町でまたモンスター騒ぎ起きたらゴーレム出てくるよ」

「それはやばい」


 お世話になった宿の女将さんや、ハンバーグを伝授したコックさんにお弁当を渡されて、またこいよと言われた。


「またくる」

 またいきたい。ノブの方を伺ったらにっこりうなずいてくれた。


ループタイの発祥は二十世紀のアメリカらしいけど気にしないでください。


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