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作者、『その少女、殺人犯につき』を振り返る。

 カーテンから夕日が透ける。薄いグレーのチェック柄の素っ気ないカーテンが、色味を帯びている。仄暗い中で、内側に小さな明かりを灯していた。ぽわんと、暖かい。


 まるで、つられたように。無機質な白い色のドレッサーとスツールも表情を緩めている。辺りは静まり返っていた。


 ——きっと、歩と夜がいるのは、こんな世界なのに。


 殺伐とした空気は似合わないな、と少し笑って、私は第6部分を振り返った。


 第6部分で。私が元原稿と大きく変えたのは、歩のキャラクターだった。


 双子になぞなぞを持ちかけられた歩は、脱出のヒントになるかもしれないと思って、元原稿ではかなり思考していた。


『ネメアの獅子については知っている。ヘラクレスの12の難行に出てくる、最初の1つだ。ヘラクレスは矢を放ち、棍棒で殴りつけたが、その毛皮には傷1つ、つかなかったという。確か、最後は殺されたと思う。そして、その魂が獅子座になった。つまり、ギリシャ神話が関係しているということか。もう1つ。地獄を守る底無し穴の霊とは、ケルベロスのことだろう。3つ首で竜の尾と蛇のひげを持った巨大な犬の姿をしている。その弟がオルトロス。蛇を纏う黒き猟犬。「灼熱を放つ」という言葉とギリシャ神話。ケルベロスとオルトロスから推測すれば、残る1つはキマイラだろう。獅子の頭、山羊の胴、蛇の尾を持ち、炎を吐く怪物。ケルベロス、オルトロス、キマイラ、ネメアのライオン、ギリシャ神話に出てくるクリーチャーに共通するもの、は』


 待て待て待て。やりたいことはわかる。読者に、脱出の方法を考えさせたいわけだ。


 でも、私が察するところでは。歩に、ここまでの思考能力はない。歩に思考能力があるとするなら、なぞなぞに辿りつくまでに、思考してほしいことが、たくさんあった。


「殺さないことよ、最も残酷な殺し方は」の意味。

 夜が笑わなくなった理由。

 夜が見下すのは歩だけ?

 そうだとしたら、なぜ?


 ——ブチ切れて殺して、幻想世界に来る前に。現実世界でもっと思考してみろや!!


 絶対、却下だった。キャラクターを変えることによって、小説が多少つまらなくなるとしても、だ。思考できるのに思考しなかった歩なんて、私は大嫌い。


 それに、世界のカラクリはもう明らかになっている。勘のいい読者様は気づいている。


『夜を待つ世界』の一言で。


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