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作者、『夕刻メランコリー』を振り返る。

 気づけば部屋の時計が0時を回っていた。

 今日も1日、ずっとスマホで小説を書いていた。明日からまた仕事だ。


 仕事中も最近、小説のことばかり考えている。

 寝不足で体がおかしい。それでも書きたいなんて、頭もおかしい。


 憂鬱に思いながら、私はたった今、書き上げた第2部分について、振り返ることにした。


 不思議の国のアリスで言うなら、第2部分は穴に落ちるシーン。穴に落ちるためには、歩が夜を殺さなければならない。それが、必須条件。


 元原稿では、歩は夜を殺すために、ナイフをポケットに忍ばせていた。しかし、私にはどうしても歩が夜を殺す準備をしていたとは思えなかった。


 それでも、殺さないといけない。タイトルからして、殺さずには通れない。


 考えに考えた結果。歩にナイフは用意させなかった。衝動的に割ってしまった戸棚の中に、刃物が収納されていたということにする。が、ご都合主義も甚だしい。


 うーむ、と。悩みながらも、悩んでいるだけでは進まないと思い、刃物を突き刺すシーンまできた。


 しかし、ここでも問題があった。元原稿では、ナイフの柄を握って、突き刺した後、すぐにナイフを引き抜くことになっていた。


 ——が、本当に引き抜けるだろうか?


 無理だ、と私は思った。怪力設定でもない限り、硬くて引き抜けない。格好良く、引き抜くなら身体を蹴るくらいしかない。


 そもそも、柄に力を込めただけで、真っ直ぐ刺せるだろうか? 


 まず、無理だ。人を刺したことのない、普通の高校生だ。刃は横にしよう、左手は添えるだけっと。



 考えに考えた結果。描写を変えてみた。が、歩の殺し方がプロい……。何者なんだ、こいつ。


 壁にぶち当たる、ぶち当たる。


 だ・か・ら、私は人がすぐ死ぬ小説は嫌いなんだ。普通の高校生が格好良く同級生を殺すなんて、シーン自体に無理があるんだ! と私は叫んだ。


 そもそも、私はここで、夜を殺したくない。キャラクターを助けたい。 


 キャラクターがやってしまった行動を、作者として取り消す方法は、たった1つ。


 ——夢オチか。


 ありきたりなパターンだが、全ての過ちと全ての矛盾を打ち消すには夢オチしかない、と私は独りで大きく頷いた。

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