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トレーディングカードゲームの理想と現実

作者: writera


授業終わりのチャイムが鳴り響く。

海道高校に通う神木才は放課後いつものように小学校からの親友である二藤貴人とカードショップに行く。神木達が所属するTCG部(通称帰宅部)は毎日活動があるのだ。店内には知った顔ぶれ達がすでに遊んでいる。神木はすぐに声をかけられデュエルスペースへと着席する。声をかけてきたのは同じ海道高校1つ上の先輩である斎藤優馬だ。彼とは神木たちが中学校の頃から頻繁にこの店で会っていたが以前学校終わりに店に寄った際お互い同じ制服を着ていたため同じ高校だと気付き斎藤に誘われ神木たちはTCG部に加わることになった。

彼らはほぼ毎日のようにカードゲームをプレイし己を高める。 

「優馬君、最初はMDからで。」

MDとはマスターズデュエリングの略でカードゲームの1つである。

様々なカードゲームをプレイする神木だがMDは最も得意とするカードゲームであり、何度も全国大会に出場しており実力は折り紙つきだ。

「来週の大会に備えてやろうぜ!」

斎藤は全国大会の経験こそないが関東大会まで進んだ強者である。

試合が始まろうとする頃にはすでに子供たちのギャラリーがぞろぞろと集まっている。

「優馬君から先攻どうぞ」

どんなカードゲームも先攻が有利である。このMDも例外ではない。先攻を譲るということは野生の動物に対して攻撃を受けてから攻撃するのに等しい。

「その言葉後悔させてやるよ。」

斎藤は早速モンスターを召喚していく。

しかし全国大会に出てる神木のプレイングは一味違った。

あっという間に斎藤のフィールドをがら空きにしゲームセット。

「お前相変わらず強いなぁ」

「優馬くんのデッキは長期戦に弱いから他の種族と合わせた方がいいよ」

そう神木が提案すると二人は早速ストレージを漁りはじめる。

「エンジェルアサルト....このカードを俺が使いこなせるのか?」そう呟く青年がいる。

カードショップではこのような光景は珍しくない。むしろ日常な位だ。だが遭遇すると驚かずにはいられない。

そうこうしているうちに組み合わせるカードを購入した斎藤たちは再びデュエルスペースへと戻るとそこにはとんでもない光景があった。


第二話 シャーク

仁藤が血相を変えて見た目大学生の男と口論している。神木はこんな表情の仁藤を久しぶりに見た。

気になって神木は状況を聞いた。

「才、こいつが小学生から鮫トレードをしてやがった!」

鮫トレードは低い価値のカードと高い価値のカードをトレードすることだ。主に餌にされるのは始めたばかりの子供が多い。

「おいおい失礼だろ。このガキがパラサイトインセクト欲しいって言うから獄炎のドラゴンと交換してやろうって話だよ。」

カードショップではこういうトラブルが生じた際に対処ができないためトレードを禁止にしているところも多い。

しかしこの店ではトレードもカードの面白い要素の1つなので個人任せにしている。

「パラサイトインセクトはストレージで50円、獄炎のドラゴンはショーケースで1000円だろうが!」

仁藤が声をあらげ視線の槍が降り注ぐ。

(「こんなトレードは子供が可哀想だもっとまともなトレードをしてやるべきだ」)と言わんばかりの仁藤の考えに対し(「弱肉強食はどの世界でも起こりうる。カードの価値を知らないこのガキが悪いのだ」)という大学生の意見が衝突する。

神木たちにはどうすることもできない。ただ仁藤の発言によりトレードが中断し子供も呆然とするだけだ。

そこで店員が駆け寄ってきた。

仁藤が説明して大体の流れを把握した店員は子供に優しく問いかけた。

「君の持っているこのカードとお兄さんのあのカード交換したい?」

子供は首を縦には降らず

「こんな遊びもう嫌だ!」と言い放ち泣きながら店を出ていった。

それからその子供が店に来ることはなかった。

鮫トレードが原因でカードゲームを辞める子も少なくない。

「あ~あぁトレードが台無し。もう二度と邪魔してくんなよ。」

そう呟き大学生の男はすぐに店をあとにした。

「もう来んなよ!二度と来るな!」

仁藤はトレードを止めることはできたが子供がカードゲームを辞めてしまったことにショックを隠せない。

もうこんなことを二度と起きてはいけないと思い。言い放った一言だった。

だがその言葉は男には届かず虚しく夜風に消えていった。


第三話 

TCG部には昨日の出来事で暗いムードが漂っていたが天気はその出来事を掻き消すかのような快晴だった。

二人は快晴の空を見上げているだけで沈黙が続く。

突然神木が切り出した。

「仁藤落ち込むなよ。お前は間違ってなかった。」

仁藤を励ますがその言葉を右から左に聞き流される。

授業開始のチャイムが鳴り響き神木たちは席に着つく。

授業中には仁藤の表情から悩んでいるのがよくわかる。

授業時間の55分の間に神木が仁藤にできることはひとつもなかった。

この55分という時間は神木にとって味わったことのない歯がゆさであった。

授業が終わると神木はすぐに仁藤の席に向かう。

「悩んでてもしょうがねぇだろ!この先ああいうことを起こさせねえことが大事なんだろうが!」

神木の言葉は教室一体に響いた。

「どうした急に?」

「あいつあんな熱いキャラだったか?」

同級生はいつもと違う神木に驚きを隠せない。

「でも、でもこの先もしあんなことがまた起こっ....」

「俺たちの前で二度とあんなこと起こさせない!あの子のことは気の毒だけど前をみるしかないんだよ。」

神木は仁藤の言葉を遮るようにいい放った。

だがその言葉は仁藤を呪縛から解き放った。

「俺はいつもお前に背中を押されているよ。」

神木は何も言わずに仁藤の肩を軽く叩き席に戻った。

こうして10分という短い休み時間が終わる。

彼らをより強くし、友情が深まった短い10分間であった。


第四話

放課後、神木達はいつものカードショップではなく秋葉原のカードショップに向かう。

そこはTCG部の3年の先輩達が通いつめている店だ。

かなり大きい店舗でデュエルスペースも在庫も充実している。

「おぉ!!優馬に才にそれに貴人!久しぶりだなぁ。」

デュエルスペースに入るとすぐに話しかけて来たのは三年生のTCG部の部長の冬木だ。

モデル顔負けのルックスだが同級生はカードショップに通ってるのは知らない。

「貴人、優馬から聞いたぞ鮫トレードの件。この世界ではあいいうこともあるし残念だけど簡単に解決できる問題じゃないんだ。」

横やりに副部長の田沢が入ってきた。

「分かってますよ。ただ前に進むことしかできないんですよ。」

清々しい表情で仁藤は答えた。

(「どうした?貴人のやつショックうけてたって聞いたんだけど」)部長と副部長がヒソヒソと話している。

「とりあえず来週のMD大会に向けて回しましょう。」

神木のその一言で引き締まる。

全国大会へ出るためには来週の店舗予選を勝ち抜きそして地区予選それから都大会その次に関東大会を勝ち抜かなければならない。

「部長強すぎですよぉ~。この部活には全国クラスが二人もいるなんて奇跡だよなぁ。」

優馬がため息まじりに嘆く。

「俺らより強いやつに大会で当たる可能性だって十分にある。諦めるんじゃなくて可能性を追及し続けろ。そうすれば勝てる。この繰り返しだ。」

部長が放ったその一言は神木達全員に緊張感をもたらした。

神木達はしばらくカードを回した後にショーケースを見に行く。

「ピーチガールこいつが俺のことを呼んでいる。俺にはカードの声が聞こえるんだ!!!!!」

ショーケースを眺めている中年男性が叫んだ。

カードショップにはアニメや漫画の影響を受けているお客さんが多いのである。

「とりあえず来週の大会に向けて健闘を祈る!皆で全国に進もう!」

部長の一言で本日はひとまず解散となる。


第五話

MDの大会当日、神木達はそれぞれバラバラの店で大会にでる。今回の店舗予選は店舗の優勝者一名が地区予選に出場できるからだ。

大会はトーナメント方式で行われる。

神木の店舗は16人が参加者として集まる。

(「やっぱり店舗予選っていっても初戦は緊張するよなぁ。皆緊張しねぇのかぁ?」)

頭の中で考えるが不安は消えない。

そうこうしている内に大会が始まる。

「これからMDの店舗予選を始めま~す!参加者の方はこのトーナメント通りに対戦してください。」

店長の指示通り席に着くプレイヤー達の顔ぶれは子供が数名と主に青年と中年男性ばかりだ。

神木の最初の相手は同い年位の高校生であるが様子がおかしい。 

「よ、よ、よ....よろしくお願いします!!!」

「あぁ!よろしくな!」

TCGプレイヤーはコミュニケーションが必須だがなぜかシャイボーイが多い。

試合は神木の圧勝で終わったが隣の台では何かトラブルが起きてるようだ。

「ここは遊び場じゃないんだ!遊びなら他でやりな。」

中年の男がそう言い放った瞬間置いてあるカードの台をひっくり返した。

「もう二度とやんね....」 

言葉を言い切る前に中年男性は子供の髪を引っ張り地面に叩きつけた。

「てめぇこのカードがどれだけ高いか分かってんのかよ!もう許さねぇ許さねぇぞ!!!!」

子供は大泣きしその後男は警察を呼ばれ連行された。

大会は続行され決勝でも相手を圧倒したが後味が悪く終わった。


第六話

神木達は祝勝会を開催した。

だが1人浮かない顔をしている者がいる。

副部長の田沢だ。

皆が悟った。彼は散ったと。もう一度言う彼は散ったのだ。

部員全員が地区予選を悠々突破だと考えてたのでかける言葉も無く無言が続いた。

「とりあえず皆お疲れ様....」

部長が一言切り出した。

「み、み、みんなごめん...」

唇を震わせながながら言葉を発し、涙を流した。

「詳しく話してくれよ。別にお前が悪いわけじゃないさ。」

部長は優しく声をかける。

「決勝でイカサマされたんだ。どうやってやったかわからないがコストと手札が合わない気がした。」

「なんでジャッジ呼ばないんですか!!!!」

仁藤が熱くなる。

「相手はコスト加速を使ってて俺の計算が合わないだけだったかもしれないし手札が一枚多いと気づいたのは終わった瞬間だった。見破れなかった時点で負けは決定していたんだ。」

イカサマによって副部長の部活は幕を閉じた。 

神木が口を開く。

「つまりそのイカサマ野郎は店舗予選を突破したってわけで来週の地区予選で当たる可能性が高いですよ。地区予選は1地区2店舗で行われます。俺と貴人は違う地区ですけど部長は当たる可能性が高いじゃないですか?」

「待てよ、そもそも地区予選までは店舗ごとに開催時間は違うはずだ。時間が違えば皆で監視できるぞ。俺は10時からだけどお前らは?」

斎藤が話に加わってくる。

「11時です。」「10時です。」

そして皆が部長を見る。

「あ、あぁ俺は14時だけど...皆わざわざそこまでしなくても」

副部長が負けたことがなかったかのように場が盛り上がる。

「いやいやここはチームプレーですよ。絶対に負かしましょう!副部長、顔は覚えてますよね?」

「あぁ、覚えてる。あいつの顔は忘れないさ。」

そして料理が運ばれてくると会話が終わり無言でひたすら食べ続ける部員たちであった。


第七話

地区予選当日皆が開催店舗に向かう。

グループトークに神木、仁藤、斎藤達が地区予選を無事に突破したことが知らされた。

正午には終わっていた彼らも部長と同じ秋葉原のお店に向かった。

「やっぱりアイツがいる!あの帽子にリストバンドとネックレスは間違いない!」

副部長が前回イカサマをされ敗北した相手がそこにいる。

しかしまだ開始前、下手に動くことはできない。

じっくり様子を伺っているうちに神木達三人が到着した。

到着した途端に仁藤の顔色が変わる。

「イカサマしたのってあいつですか?」

神木達は気づいているが副部長はなぜだという顔をしてる。

「あぁそうだが、なぜ分かったんだ?」

「鮫トレードの事件覚えてますか?同一人物ですよ。俺らは絶対あいつの悪事を見逃しません。」

神木と仁藤は大会が行われていないデュエルスペースで見張ることになり斎藤と副部長は観戦しながら見張ることになった。

「ではこれから地区予選を始めたいと思います。参加者はこちらのテーブルでトーナメント通りにお願いします。」

部長が悠々と勝ち進みとうとうイカサマ師と当たる。

「よろしくお願いします。」

部長が挨拶をするが相手は頷くだけだ。

「カットお願いします。」

部長がカットをお願いすると相手はハサミを取り出した。

何をするかと思いきやカードを切ろうとする。

「ちょちょ、ちょっと何をするんですか!?」

部長は慌てて止める。

「いやぁカットって言ったので切って欲しいのかと思い...」

思いもよらない行動で会場はざわつく。

「そんなわけないでしょ!シャッフルですよシャッフル!わざとですよね?」

部長が珍しく向きになる。

「もう、そんなに怒らないでくださいよ。最初からそういえばいいのに。」

大会は最悪のムードで始まった。


第八話

先攻は部長が貰うことになり試合が始まった。

部員たちはイカサマをしないか見張っているが動きはない。

「チッ、あーくそなんだよこのカードうざったいなぁ。」

相手は部長のカード効果にイライラして独り言を呟いている。

「このカードの効果で特殊召喚し攻撃します。なにかチェーンありますか?」

ここで部長の攻撃が決まれば部長の勝ちが確定する。

誰もが何も起こらず終わると思っていた。しかし相手は伏せカードをわざと落としその瞬間リストバンドからカードを取り出しすり替えた。

「チェーンあります。」

満面の笑みで答えた。

「いまリストバンドからカードをすり替えましたよ!元々の伏せカードを手札に戻してますよね?手札が1枚多いんですよ!」

副部長はイカサマ師の行動を見逃してなかった。

急いでジャッジが駆け付ける。

副部長が事情を説明するがイカサマ師は言い訳をだらだらと述べる。

「遡って検証してみましょうよ。もし違反行為をしてなければ僕の敗けで構いません。」

部長が切り出した一言に皆が動揺を隠せない。

しかしそれ以外方法は無い。

検証されたイカサマ師は別室行きとなり部長が勝者となりその後も勝ち進み大会を制した。

「皆のおかげで助かったよ。何はともあれ皆無事なんとか地区予選突破だ!次の都大会では部員同士が当たることもある。だけど今日はひとまずカンパーイ!!!」

祝勝会を行い、いざ都大会へ!


第九話

都大会は一か月後に行われる。

しかし一年は夏休みに熱海での臨海学校が行事として挟まれていた。

「よぉぉし、来週の臨海学校はこの男女2人ずつの4人1班で1週間の間行動してもらう。以上。」

臨海学校の班決めが行われたが神木にとってはどうでもよかった。

カードゲームをできないのが苦痛でしょうがない。

「おぉい才!臨海学校はもちろん持ってくよな?」

仁藤に話かけられ神木は表情が明るくなる。

「もちろん先生達にバレないように持ってこうぜ!強化合宿だ!」


~臨海学校当日~


「これから一週間怪我せず規則正しく生活するように!」

先生の挨拶から始まりバスに乗り臨海学校に。

移動中神木はひたすら音楽を聴き外を眺めているだけだ。

バスが宿舎に到着しオリエンテーションを終え夕食を取る。

食事を終えた後、周りはお祭りモードで騒ぐが神木と仁藤はひたすらデッキ調整をし続ける。

「あいつら今さらカードゲームなんてやってんのかよ。子供かよ。」

同級生から手厳しい声が上がる。

「気にすんな気にすんな。挑戦してないやつが何かに挑戦しているやつを笑う資格はないんだ。」

大会前の緊張感があるのかいつもより口調が強い神木を察知した仁藤は頷くだけで何も言わなかった。

その日はあまり遅くまで調整せず翌日に備えて早めに就寝した。

第10話

~臨海学校2日目~

神木たちは目覚めよく起きた。

朝食を取り支度を済ませホテル前のビーチに向かう。

教師からの指示を受け午前中のメニューに取り組む。

中には泳げない生徒もいるが神木達は問題なく泳ぐ。

昼休憩を挟み午後のメニューをこなしすっかり日がくれた。

「久しぶりだったなぁ、ただ黙々とこなすだけで退屈だよ。お前も退屈だろ?」

神木はやや疲れた表情で仁藤に問いかける。

「時が止まるほど退屈だね。夕食食べたら自由時間だし少し散歩しに行かね?」

「あぁ、いいけど。」

二人は熱海の町を散歩することに。

空に花火が打ち上がる。

気づいた二人は花火の方へ進む。

「祭りかぁ!いやぁグッドタイミングじゃん!海と言えば夏、夏と言えばお祭りだよな!」

仁藤のテンションが一気に上がる。

「相変わらず祭り好きだねぇ。まあ息抜きには丁度いいか。」

屋台を見回っていると後ろから声をかけられる。

「仁藤君と神木君?」

さくらんぼのように甘く優しい声をかけられ振り向くとそこには同じクラスの西条香織が他のクラスメイト達といた。

「さ、さ、西条さん、どうしてここに?て言うかみんなも?」

クラスのマドンナ的存在に仁藤はテンパり始めた。

「あのね皆で近くのお祭り行こうってなって歩いてたら見かけたから。仁藤くん達もよければ皆と一緒に回らない?」

仁藤は断る理由も無くOKを出し神木は仁藤に着いていく形になったが元々西条と共にいた男子達からは冷たい視線が向けられた。

しばらく歩いていると誰かがこちらの集団に声をかけてくる。

「おい!神木ぃ!なに無視しとんねん!」

スラッと背の高い坊主頭の関西人に話し掛けられる。

神木は驚いた表情で答える。

「お、お前は兵藤、兵藤新助!1年ぶりだよなぁ?」

兵藤とは昨年、MDの全国大会で戦った関西代表の相手であり神木を敗退に追いやった強者だ。

「やっと思い出したんか。遅すぎっちゅうねん。俺らは修学旅行で来とるけどお前らここで何しとんの?」

「あぁ、臨海学校で来てんだよ。こいつが同級生と祭り回ろうって言うから着いてきたんだ。ところで今年の大会は順調に勝ち進んでんの?」 

仁藤は場の空気に圧倒され何も言葉が出ない。

一方同級生達は何も理解できないまま話が進む。

「当たり前やろ!楽勝やわ。お前こそどうなんや?」

「こいつと共に順調だよ。」

神木は仁藤の肩を掴みながら答える。

「さすがに番狂わせが起きるには早すぎっちゅうわけか。その子もプレイヤーなんか、全国でお前らを待っとるわ。負けるなよ。」

「首を洗って待ってろ必ず倒してやるから。」

二人は握手を交わし兵藤は仁藤の方へも向かい握手をし夜の祭りへと消えていった。

「神木君って全国とかいろいろ言ってたけど何やってるの?」

重い空気の中、西条が一言切り出した。

「俺らカードゲームの大会出てて俺はあいつとは以前戦ったことがあるんだよね。」

「そうなんだぁ。日本一になれるといいね。ファイト!」

西条に笑顔で声をかけられた神木にはその場の男子全員が嫉妬していた。

言うまでもなく仁藤は余計複雑な気持ちになった。

そうこうしているうちに解散となり就寝する。

「才やっぱりお前はスゴいよ。あの兵藤と互角に話しているんだもん。圧倒されて何も話せなかった。それに、西じょ....」

「昔からカードゲームでも交流あるしな。それに西条がなんだ?」

「いや、なんでもない!おやすみ!」

こうして長い1日が終わった。



授業終わりのチャイムが鳴り響く。

海道高校に通う神木才は放課後いつものように小学校からの親友である二藤貴人とカードショップに行く。神木達が所属するTCG部(通称帰宅部)は毎日活動があるのだ。店内には知った顔ぶれ達がすでに遊んでいる。神木はすぐに声をかけられデュエルスペースへと着席する。声をかけてきたのは同じ海道高校1つ上の先輩である斎藤優馬だ。彼とは神木たちが中学校の頃から頻繁にこの店で会っていたが以前学校終わりに店に寄った際お互い同じ制服を着ていたため同じ高校だと気付き斎藤に誘われ神木たちはTCG部に加わることになった。

彼らはほぼ毎日のようにカードゲームをプレイし己を高める。 

「優馬君、最初はMDからで。」

MDとはマスターズデュエリングの略でカードゲームの1つである。

様々なカードゲームをプレイする神木だがMDは最も得意とするカードゲームであり、何度も全国大会に出場しており実力は折り紙つきだ。

「来週の大会に備えてやろうぜ!」

斎藤は全国大会の経験こそないが関東大会まで進んだ強者である。

試合が始まろうとする頃にはすでに子供たちのギャラリーがぞろぞろと集まっている。

「優馬君から先攻どうぞ」

どんなカードゲームも先攻が有利である。このMDも例外ではない。先攻を譲るということは野生の動物に対して攻撃を受けてから攻撃するのに等しい。

「その言葉後悔させてやるよ。」

斎藤は早速モンスターを召喚していく。

しかし全国大会に出てる神木のプレイングは一味違った。

あっという間に斎藤のフィールドをがら空きにしゲームセット。

「お前相変わらず強いなぁ」

「優馬くんのデッキは長期戦に弱いから他の種族と合わせた方がいいよ」

そう神木が提案すると二人は早速ストレージを漁りはじめる。

「エンジェルアサルト....このカードを俺が使いこなせるのか?」そう呟く青年がいる。

カードショップではこのような光景は珍しくない。むしろ日常な位だ。だが遭遇すると驚かずにはいられない。

そうこうしているうちに組み合わせるカードを購入した斎藤たちは再びデュエルスペースへと戻るとそこにはとんでもない光景があった。


第二話 シャーク

仁藤が血相を変えて見た目大学生の男と口論している。神木はこんな表情の仁藤を久しぶりに見た。

気になって神木は状況を聞いた。

「才、こいつが小学生から鮫トレードをしてやがった!」

鮫トレードは低い価値のカードと高い価値のカードをトレードすることだ。主に餌にされるのは始めたばかりの子供が多い。

「おいおい失礼だろ。このガキがパラサイトインセクト欲しいって言うから獄炎のドラゴンと交換してやろうって話だよ。」

カードショップではこういうトラブルが生じた際に対処ができないためトレードを禁止にしているところも多い。

しかしこの店ではトレードもカードの面白い要素の1つなので個人任せにしている。

「パラサイトインセクトはストレージで50円、獄炎のドラゴンはショーケースで1000円だろうが!」

仁藤が声をあらげ視線の槍が降り注ぐ。

(「こんなトレードは子供が可哀想だもっとまともなトレードをしてやるべきだ」)と言わんばかりの仁藤の考えに対し(「弱肉強食はどの世界でも起こりうる。カードの価値を知らないこのガキが悪いのだ」)という大学生の意見が衝突する。

神木たちにはどうすることもできない。ただ仁藤の発言によりトレードが中断し子供も呆然とするだけだ。

そこで店員が駆け寄ってきた。

仁藤が説明して大体の流れを把握した店員は子供に優しく問いかけた。

「君の持っているこのカードとお兄さんのあのカード交換したい?」

子供は首を縦には降らず

「こんな遊びもう嫌だ!」と言い放ち泣きながら店を出ていった。

それからその子供が店に来ることはなかった。

鮫トレードが原因でカードゲームを辞める子も少なくない。

「あ~あぁトレードが台無し。もう二度と邪魔してくんなよ。」

そう呟き大学生の男はすぐに店をあとにした。

「もう来んなよ!二度と来るな!」

仁藤はトレードを止めることはできたが子供がカードゲームを辞めてしまったことにショックを隠せない。

もうこんなことを二度と起きてはいけないと思い。言い放った一言だった。

だがその言葉は男には届かず虚しく夜風に消えていった。


第三話 

TCG部には昨日の出来事で暗いムードが漂っていたが天気はその出来事を掻き消すかのような快晴だった。

二人は快晴の空を見上げているだけで沈黙が続く。

突然神木が切り出した。

「仁藤落ち込むなよ。お前は間違ってなかった。」

仁藤を励ますがその言葉を右から左に聞き流される。

授業開始のチャイムが鳴り響き神木たちは席に着つく。

授業中には仁藤の表情から悩んでいるのがよくわかる。

授業時間の55分の間に神木が仁藤にできることはひとつもなかった。

この55分という時間は神木にとって味わったことのない歯がゆさであった。

授業が終わると神木はすぐに仁藤の席に向かう。

「悩んでてもしょうがねぇだろ!この先ああいうことを起こさせねえことが大事なんだろうが!」

神木の言葉は教室一体に響いた。

「どうした急に?」

「あいつあんな熱いキャラだったか?」

同級生はいつもと違う神木に驚きを隠せない。

「でも、でもこの先もしあんなことがまた起こっ....」

「俺たちの前で二度とあんなこと起こさせない!あの子のことは気の毒だけど前をみるしかないんだよ。」

神木は仁藤の言葉を遮るようにいい放った。

だがその言葉は仁藤を呪縛から解き放った。

「俺はいつもお前に背中を押されているよ。」

神木は何も言わずに仁藤の肩を軽く叩き席に戻った。

こうして10分という短い休み時間が終わる。

彼らをより強くし、友情が深まった短い10分間であった。


第四話

放課後、神木達はいつものカードショップではなく秋葉原のカードショップに向かう。

そこはTCG部の3年の先輩達が通いつめている店だ。

かなり大きい店舗でデュエルスペースも在庫も充実している。

「おぉ!!優馬に才にそれに貴人!久しぶりだなぁ。」

デュエルスペースに入るとすぐに話しかけて来たのは三年生のTCG部の部長の冬木だ。

モデル顔負けのルックスだが同級生はカードショップに通ってるのは知らない。

「貴人、優馬から聞いたぞ鮫トレードの件。この世界ではあいいうこともあるし残念だけど簡単に解決できる問題じゃないんだ。」

横やりに副部長の田沢が入ってきた。

「分かってますよ。ただ前に進むことしかできないんですよ。」

清々しい表情で仁藤は答えた。

(「どうした?貴人のやつショックうけてたって聞いたんだけど」)部長と副部長がヒソヒソと話している。

「とりあえず来週のMD大会に向けて回しましょう。」

神木のその一言で引き締まる。

全国大会へ出るためには来週の店舗予選を勝ち抜きそして地区予選それから都大会その次に関東大会を勝ち抜かなければならない。

「部長強すぎですよぉ~。この部活には全国クラスが二人もいるなんて奇跡だよなぁ。」

優馬がため息まじりに嘆く。

「俺らより強いやつに大会で当たる可能性だって十分にある。諦めるんじゃなくて可能性を追及し続けろ。そうすれば勝てる。この繰り返しだ。」

部長が放ったその一言は神木達全員に緊張感をもたらした。

神木達はしばらくカードを回した後にショーケースを見に行く。

「ピーチガールこいつが俺のことを呼んでいる。俺にはカードの声が聞こえるんだ!!!!!」

ショーケースを眺めている中年男性が叫んだ。

カードショップにはアニメや漫画の影響を受けているお客さんが多いのである。

「とりあえず来週の大会に向けて健闘を祈る!皆で全国に進もう!」

部長の一言で本日はひとまず解散となる。


第五話

MDの大会当日、神木達はそれぞれバラバラの店で大会にでる。今回の店舗予選は店舗の優勝者一名が地区予選に出場できるからだ。

大会はトーナメント方式で行われる。

神木の店舗は16人が参加者として集まる。

(「やっぱり店舗予選っていっても初戦は緊張するよなぁ。皆緊張しねぇのかぁ?」)

頭の中で考えるが不安は消えない。

そうこうしている内に大会が始まる。

「これからMDの店舗予選を始めま~す!参加者の方はこのトーナメント通りに対戦してください。」

店長の指示通り席に着くプレイヤー達の顔ぶれは子供が数名と主に青年と中年男性ばかりだ。

神木の最初の相手は同い年位の高校生であるが様子がおかしい。 

「よ、よ、よ....よろしくお願いします!!!」

「あぁ!よろしくな!」

TCGプレイヤーはコミュニケーションが必須だがなぜかシャイボーイが多い。

試合は神木の圧勝で終わったが隣の台では何かトラブルが起きてるようだ。

「ここは遊び場じゃないんだ!遊びなら他でやりな。」

中年の男がそう言い放った瞬間置いてあるカードの台をひっくり返した。

「もう二度とやんね....」 

言葉を言い切る前に中年男性は子供の髪を引っ張り地面に叩きつけた。

「てめぇこのカードがどれだけ高いか分かってんのかよ!もう許さねぇ許さねぇぞ!!!!」

子供は大泣きしその後男は警察を呼ばれ連行された。

大会は続行され決勝でも相手を圧倒したが後味が悪く終わった。


第六話

神木達は祝勝会を開催した。

だが1人浮かない顔をしている者がいる。

副部長の田沢だ。

皆が悟った。彼は散ったと。もう一度言う彼は散ったのだ。

部員全員が地区予選を悠々突破だと考えてたのでかける言葉も無く無言が続いた。

「とりあえず皆お疲れ様....」

部長が一言切り出した。

「み、み、みんなごめん...」

唇を震わせながながら言葉を発し、涙を流した。

「詳しく話してくれよ。別にお前が悪いわけじゃないさ。」

部長は優しく声をかける。

「決勝でイカサマされたんだ。どうやってやったかわからないがコストと手札が合わない気がした。」

「なんでジャッジ呼ばないんですか!!!!」

仁藤が熱くなる。

「相手はコスト加速を使ってて俺の計算が合わないだけだったかもしれないし手札が一枚多いと気づいたのは終わった瞬間だった。見破れなかった時点で負けは決定していたんだ。」

イカサマによって副部長の部活は幕を閉じた。 

神木が口を開く。

「つまりそのイカサマ野郎は店舗予選を突破したってわけで来週の地区予選で当たる可能性が高いですよ。地区予選は1地区2店舗で行われます。俺と貴人は違う地区ですけど部長は当たる可能性が高いじゃないですか?」

「待てよ、そもそも地区予選までは店舗ごとに開催時間は違うはずだ。時間が違えば皆で監視できるぞ。俺は10時からだけどお前らは?」

斎藤が話に加わってくる。

「11時です。」「10時です。」

そして皆が部長を見る。

「あ、あぁ俺は14時だけど...皆わざわざそこまでしなくても」

副部長が負けたことがなかったかのように場が盛り上がる。

「いやいやここはチームプレーですよ。絶対に負かしましょう!副部長、顔は覚えてますよね?」

「あぁ、覚えてる。あいつの顔は忘れないさ。」

そして料理が運ばれてくると会話が終わり無言でひたすら食べ続ける部員たちであった。


第七話

地区予選当日皆が開催店舗に向かう。

グループトークに神木、仁藤、斎藤達が地区予選を無事に突破したことが知らされた。

正午には終わっていた彼らも部長と同じ秋葉原のお店に向かった。

「やっぱりアイツがいる!あの帽子にリストバンドとネックレスは間違いない!」

副部長が前回イカサマをされ敗北した相手がそこにいる。

しかしまだ開始前、下手に動くことはできない。

じっくり様子を伺っているうちに神木達三人が到着した。

到着した途端に仁藤の顔色が変わる。

「イカサマしたのってあいつですか?」

神木達は気づいているが副部長はなぜだという顔をしてる。

「あぁそうだが、なぜ分かったんだ?」

「鮫トレードの事件覚えてますか?同一人物ですよ。俺らは絶対あいつの悪事を見逃しません。」

神木と仁藤は大会が行われていないデュエルスペースで見張ることになり斎藤と副部長は観戦しながら見張ることになった。

「ではこれから地区予選を始めたいと思います。参加者はこちらのテーブルでトーナメント通りにお願いします。」

部長が悠々と勝ち進みとうとうイカサマ師と当たる。

「よろしくお願いします。」

部長が挨拶をするが相手は頷くだけだ。

「カットお願いします。」

部長がカットをお願いすると相手はハサミを取り出した。

何をするかと思いきやカードを切ろうとする。

「ちょちょ、ちょっと何をするんですか!?」

部長は慌てて止める。

「いやぁカットって言ったので切って欲しいのかと思い...」

思いもよらない行動で会場はざわつく。

「そんなわけないでしょ!シャッフルですよシャッフル!わざとですよね?」

部長が珍しく向きになる。

「もう、そんなに怒らないでくださいよ。最初からそういえばいいのに。」

大会は最悪のムードで始まった。


第八話

先攻は部長が貰うことになり試合が始まった。

部員たちはイカサマをしないか見張っているが動きはない。

「チッ、あーくそなんだよこのカードうざったいなぁ。」

相手は部長のカード効果にイライラして独り言を呟いている。

「このカードの効果で特殊召喚し攻撃します。なにかチェーンありますか?」

ここで部長の攻撃が決まれば部長の勝ちが確定する。

誰もが何も起こらず終わると思っていた。しかし相手は伏せカードをわざと落としその瞬間リストバンドからカードを取り出しすり替えた。

「チェーンあります。」

満面の笑みで答えた。

「いまリストバンドからカードをすり替えましたよ!元々の伏せカードを手札に戻してますよね?手札が1枚多いんですよ!」

副部長はイカサマ師の行動を見逃してなかった。

急いでジャッジが駆け付ける。

副部長が事情を説明するがイカサマ師は言い訳をだらだらと述べる。

「遡って検証してみましょうよ。もし違反行為をしてなければ僕の敗けで構いません。」

部長が切り出した一言に皆が動揺を隠せない。

しかしそれ以外方法は無い。

検証されたイカサマ師は別室行きとなり部長が勝者となりその後も勝ち進み大会を制した。

「皆のおかげで助かったよ。何はともあれ皆無事なんとか地区予選突破だ!次の都大会では部員同士が当たることもある。だけど今日はひとまずカンパーイ!!!」

祝勝会を行い、いざ都大会へ!


第九話

都大会は一か月後に行われる。

しかし一年は夏休みに熱海での臨海学校が行事として挟まれていた。

「よぉぉし、来週の臨海学校はこの男女2人ずつの4人1班で1週間の間行動してもらう。以上。」

臨海学校の班決めが行われたが神木にとってはどうでもよかった。

カードゲームをできないのが苦痛でしょうがない。

「おぉい才!臨海学校はもちろん持ってくよな?」

仁藤に話かけられ神木は表情が明るくなる。

「もちろん先生達にバレないように持ってこうぜ!強化合宿だ!」


~臨海学校当日~


「これから一週間怪我せず規則正しく生活するように!」

先生の挨拶から始まりバスに乗り臨海学校に。

移動中神木はひたすら音楽を聴き外を眺めているだけだ。

バスが宿舎に到着しオリエンテーションを終え夕食を取る。

食事を終えた後、周りはお祭りモードで騒ぐが神木と仁藤はひたすらデッキ調整をし続ける。

「あいつら今さらカードゲームなんてやってんのかよ。子供かよ。」

同級生から手厳しい声が上がる。

「気にすんな気にすんな。挑戦してないやつが何かに挑戦しているやつを笑う資格はないんだ。」

大会前の緊張感があるのかいつもより口調が強い神木を察知した仁藤は頷くだけで何も言わなかった。

その日はあまり遅くまで調整せず翌日に備えて早めに就寝した。

第10話

~臨海学校2日目~

神木たちは目覚めよく起きた。

朝食を取り支度を済ませホテル前のビーチに向かう。

教師からの指示を受け午前中のメニューに取り組む。

中には泳げない生徒もいるが神木達は問題なく泳ぐ。

昼休憩を挟み午後のメニューをこなしすっかり日がくれた。

「久しぶりだったなぁ、ただ黙々とこなすだけで退屈だよ。お前も退屈だろ?」

神木はやや疲れた表情で仁藤に問いかける。

「時が止まるほど退屈だね。夕食食べたら自由時間だし少し散歩しに行かね?」

「あぁ、いいけど。」

二人は熱海の町を散歩することに。

空に花火が打ち上がる。

気づいた二人は花火の方へ進む。

「祭りかぁ!いやぁグッドタイミングじゃん!海と言えば夏、夏と言えばお祭りだよな!」

仁藤のテンションが一気に上がる。

「相変わらず祭り好きだねぇ。まあ息抜きには丁度いいか。」

屋台を見回っていると後ろから声をかけられる。

「仁藤君と神木君?」

さくらんぼのように甘く優しい声をかけられ振り向くとそこには同じクラスの西条香織が他のクラスメイト達といた。

「さ、さ、西条さん、どうしてここに?て言うかみんなも?」

クラスのマドンナ的存在に仁藤はテンパり始めた。

「あのね皆で近くのお祭り行こうってなって歩いてたら見かけたから。仁藤くん達もよければ皆と一緒に回らない?」

仁藤は断る理由も無くOKを出し神木は仁藤に着いていく形になったが元々西条と共にいた男子達からは冷たい視線が向けられた。

しばらく歩いていると誰かがこちらの集団に声をかけてくる。

「おい!神木ぃ!なに無視しとんねん!」

スラッと背の高い坊主頭の関西人に話し掛けられる。

神木は驚いた表情で答える。

「お、お前は兵藤、兵藤新助!1年ぶりだよなぁ?」

兵藤とは昨年、MDの全国大会で戦った関西代表の相手であり神木を敗退に追いやった強者だ。

「やっと思い出したんか。遅すぎっちゅうねん。俺らは修学旅行で来とるけどお前らここで何しとんの?」

「あぁ、臨海学校で来てんだよ。こいつが同級生と祭り回ろうって言うから着いてきたんだ。ところで今年の大会は順調に勝ち進んでんの?」 

仁藤は場の空気に圧倒され何も言葉が出ない。

一方同級生達は何も理解できないまま話が進む。

「当たり前やろ!楽勝やわ。お前こそどうなんや?」

「こいつと共に順調だよ。」

神木は仁藤の肩を掴みながら答える。

「さすがに番狂わせが起きるには早すぎっちゅうわけか。その子もプレイヤーなんか、全国でお前らを待っとるわ。負けるなよ。」

「首を洗って待ってろ必ず倒してやるから。」

二人は握手を交わし兵藤は仁藤の方へも向かい握手をし夜の祭りへと消えていった。

「神木君って全国とかいろいろ言ってたけど何やってるの?」

重い空気の中、西条が一言切り出した。

「俺らカードゲームの大会出てて俺はあいつとは以前戦ったことがあるんだよね。」

「そうなんだぁ。日本一になれるといいね。ファイト!」

西条に笑顔で声をかけられた神木にはその場の男子全員が嫉妬していた。

言うまでもなく仁藤は余計複雑な気持ちになった。

そうこうしているうちに解散となり就寝する。

「才やっぱりお前はスゴいよ。あの兵藤と互角に話しているんだもん。圧倒されて何も話せなかった。それに、西じょ....」

「昔からカードゲームでも交流あるしな。それに西条がなんだ?」

「いや、なんでもない!おやすみ!」

こうして長い1日が終わった。


こんな感じです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・鮫トレードなど、悪い面(悪質大学生、荒ぶる中年男性も含む)もきちんと書いているところ。 [気になる点] ・第三話に関して。高校生の授業時間って、一時間当たり50分じゃないですか? ・前書…
[一言] 「なぜデジタルTCGが流行したのか」がよく分かりますね。デジタルTCGならシャークやイカサマや暴言を心配せずいつでもどこでもプレイできます。
2018/01/04 23:09 退会済み
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