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叛逆の赤い月  作者: 九尾
第2章
7/23

悪意の暗躍

 

「貴方、ここで何をしているの」


 夜。

 人気も灯りもない静かな路上で、漆黒の刃を翳した少女は問いかけた。

 問いに対する答えはない。いや、それも当然か。


 少女がその足で踏みつけているのは、黒い影だった。


 影は人の形をしている。だがその顔に鼻や口といったパーツはない。ただのっぺりとした黒い闇と、そして額に大きな一つの目だけがあった。


「波紋からわかっているわ。貴方、形代(かたしろ)ね。けれど石垣を殺したときに助けに入らなかったところを見ると、戦闘能力は低いと考えられる。でも、波紋は極めて微弱……このわたしでも意識しなければ見つけられない。偵察に向いているわね」


 影は何も答えることはしなかった。

 あるいは、答える機能が備わっていないのかもしれない。


「口はなくとも質問には答えられるはずよ。イエスなら首を上下に、ノーなら首を左右に振りなさい」


 少女は黒い影を抑えていた足を持ち上げ、容赦なく振り下ろした。蹴りの衝撃が影を伝わり、大地にわずかな亀裂を入れる。

 黒い影はうめき声に近い音を出した。


「貴方は、あの鉄仮面と通じているわね」


 黒い影は首を激しく横に振った。


「貴方は、大堂聖議会の一人でしょう」


 黒い影はやはり、首を横に振る。

 少女は呆れたように嘆息し、黒い目を細めた。


「嘘吐きは、悪徳の始まりよ」


 少女の手に持ったナイフが、黒い影の頭に突き刺さる。


       ◇ ◇ ◇


 人を殺す夢を見た。

 303便の中、血に染まりながら人を殺す夢を見た。


 それは――赤い月の夜だった。

 赤い月の夜の下、狂気に染まった人々を次々と殺していった。


 臓器に腕を突き込む感触、人から零れる血の暖かさ、そして命が消える瞬間の悦びは、他の何にも例えようもない快楽だった。

 悪魔だ。まるで悪魔のような蛮行だ。


 ああ、そうか。あの少女の言う通りだったのか。

 ぼくは。天城和巳は――悪魔であったのか。


『貴方はまだ、自分は日常の中で生きていけると思っているのでしょうけれど、それはもう叶わない願いよ。貴方が今の貴方でいられる場所は、もうこの世の何処にもない』


 いつかの少女の呟きが胸にある。

 纏わりつく幽鬼のように、和巳の心を掴んで離さない――。


「――ッ!」


 ビクンと大きく痙攣して、和巳は目を覚ました。

 普段、303便の夢を見ては最悪だと呟いていたが、あの夢はいつも救いがあった。決まって最後には、刀を持った少女が助けてくれるのだ。しかし今日の夢は最悪どころか、敢えて死語で表すと最凶だ。これほど不吉な夢を和巳は見たことがない。


「あの女のせいだ……」


 半開きの瞳で頭を掻いて、和巳はあの少女を思った。彼女の呟きは、どこまでも和巳の心を疲労させる。ちょっとしたことでも「ああ、ここは自分の居場所じゃないのかな」と思ってしまうことがあるのだから、まさしく呪いの類に相違ない。

 絶対にあの女には協力してやらない。そんな決意を胸に和巳は起き上がった。

 隣で安らかな寝顔を見せている夕凪を見て、荒んだ心が癒される。


 自分の部屋は各々に割り振られているものの、寝室だけは和巳と夕凪の共同のものだ。本当は五年も前に別々の部屋で寝ようという話が上がっていたのだが、普段は我儘を言わない夕凪たっての要望だった。また二年前の事故からは、視力を失った夕凪が目の届かない所へ行くのが心配だということもあり、和巳も今のままでいいと思っている。

 近頃の和巳にとって夕凪の存在は日常の象徴であり、居場所だ。

 他の何にも変えられない、大切なものだ。

 彼女の笑顔に何度元気づけられたか。彼女がいることで、何度挫けずにいられたか。

 思い返すと愛しくなって、和巳は起こさないように夕凪の頭を撫でた。


 外は日も昇っておらず、まだ暗い。いつもは和巳より早く起きて身なりを整えている夕凪だが、今日ばかりは和巳の方が早起きだ。

 時刻を見れば午前三時。二度寝をしてもいい時間だが、あんな悪夢を見たあとでは眠ろうという気も失せる。

 どうせなら朝食を豪華なものにしてやろうと、和巳は布団を出ることにした。


「おはようございまあす、にいさあん……」


 午前五時頃、眠たげな眼を擦りながら夕凪が起きてきた。

 両手には枕を抱きしめて、壁に背中をつけながらふらふらと歩いているものだから、非常に危なっかしい。和巳は調理していた油の火を一旦止めて、夕凪の手を取った。


「寝ぼけたまま歩き回るのは感心しないよ、もう少し寝ていた方がいい」


「でも、兄さんが起きてますから……」


 どうやら眠るつもりはないらしい。

 仕方ないので、和巳はコーヒーカップに牛乳を注いで電子レンジで温めたものを夕凪に差し出した。半目の状態でちまちまとホットミルクを口にした夕凪は、次第に意識をはっきりさせていき、「着替えてきます」と枕を片手に自分の部屋へ戻っていった。

 その間、和巳は調理を続けた。今日の朝食はいつもと変わらず味噌汁と焼き魚をおかずにする予定だ。昼食は普段、購買などで購入したパンや簡素な弁当なので、たまには豪華にしてみようと思ったのだ。ついでに夕凪や若菜の昼食分も作っておくことにする。


 ちょうど弁当ができた頃、夕凪が着替えや支度を済ませてやってきた。ついでに今日の新聞も取り込んできたらしく、むむ、と唸りながら新聞を読み始める。

 時折掲載されている新聞の健康料理欄が、最近の夕凪のマイブームらしいのだ。

 弁当を詰め終えた和巳がエプロンを椅子に掛ける。夕凪と共に新聞を目にしていると、夕凪がページを捲る拍子に何かが落ちたことに気が付いた。

 夕凪は気付かなかったようで、メガネの位置を調節しながら熱心に新聞に目を向けている。落ちたのは、小さなはがきか何かのようだ。

 和巳はそれを手に取って、目を通す。

 だがその内容に、言葉を失った。

 はがきには宛先も何もなかった。新聞や雑誌などの切り抜きの文字を使って並べた文字だけが、不気味に連なっていた。


『彼女ニ近づくナ』


 まるで、ドラマなどで見る脅迫状のようだった。やけに陳腐な出来であるのが、言いようもない不気味さを醸し出している。

 背筋に冷たいものが流れるような錯覚があった。


「兄さん、どうかしました?」


 和巳の不自然な様子に気付いた夕凪が心配の声を掛けるが、「脅迫状めいたものを貰った」などと正直に言えるわけもない。


「何でもないよ。数カ月遅れの残暑見舞いだった」


 キョトンと首を傾げた夕凪は、


「随分と遅い残暑見舞いですね」


 そういって朗らかに笑った。

 和巳の両親は交友関係が広く、また律儀な人だった。毎年正月には年賀状を何百枚と送っていたし、暑中見舞いや残暑見舞いも欠かさずに出していた。そんなだったから、何ヵ月か遅れて暑中見舞いや残暑見舞いが送られてくることも珍しいことではない。

 どうやら上手く誤魔化せたようで安心する。和巳は『数カ月遅れの残暑見舞い』をポケットにしまい込み、学校のゴミ箱へ処分することを決めた。

 そういえば、と思い出したように夕凪が口を開く。


「二日くらい前にも、数カ月遅れの残暑見舞いが来ていたみたいですよ。今になって、郵便局の人が忘れていたはがきを送っているんでしょうか」


 夕凪がふふ、と笑った。和巳も笑おうとしたが、できなかった。

 代わりに乾いた笑いが出た。

 二日前――それは確か、小牧たちを殴り倒し、あの少女に殺されかけた日だ。


「えっと……その残暑見舞いはどうしたの?」


「その時は春見さんが先に見つけたので、返事を返してくれたみたいですよ」


 もしかしたら、その残暑見舞いは本当に数カ月遅れの残暑見舞いであったのかもしれない。和巳は少しだけ胸を撫で下ろした。


「でも変ですよね。そのはがき、わたしが見たところ住所とか書いてなかったみたいなんですけど……表に書いてあったんでしょうか」


 撫で下ろした胸が、張り裂けそうなほど締め付けられる。

 嫌な予感が、止まらなかった。


       ◇ ◇ ◇


 例え和巳が得体の知れない少女にナイフを向けられようと、例え和巳が得体の知れない青年に殺されかけようと。そして不気味な脅迫状が送りつけられて不安であろうとも、いつもと変わらず時間は進む。

 やはり学校には登校しなければならない。

 胸に残る不安を拭えないまま学校に到着した和巳は、教室の扉を開いた。

 なぜか、いつもと教室の雰囲気が異なるような気がした。


「……ああ、翔也がいないんだ」


 たったそれだけのことなのに、やけに恐ろしく感じた。

 自分の日常が、少しずつ欠けていくような感覚があった。


 ――貴方が今の貴方でいられる場所は、もうこの世の何処にもない。


「……うるさい。ぼくの居場所はここだ」


 決意するように呟いて、和巳は教室で翔也を待つことにした。

 クラスメイトに挨拶をしながら、翔也のことを聞いてみる。しかしほぼ全員、「そのうち来るだろう」と楽観的な答えだった。和巳には、それがとても恐ろしいもののように思えた。翔也が来ることが当たり前になりすぎて、誰もがそれを疑わないのだ。

 数日前、小牧弦が亡くなったときもそうだった。誰もが、小牧は学校へ来ると疑いもしなかっただろう。どころか、来なければいいと思った者までいるだろう。和巳に至っては、「暴力に悩まされるくらいなら来ないでほしい」とまで思った。


 しかし、小牧弦が学校へ来ることはなかった。二度と学校へ来ることもない。

 小牧弦は死んだのだ。


 結局、尾崎翔也は昼を過ぎても学校に来ることはなかった。

 教師が言うには、やむにやまれぬ事情で休みということらしい。休みの連絡があるということは、翔也の身に何が起ったわけでもないのだろう。そのことに和巳は安堵しつつも、心のどこかで不安を拭えないでいた。


 昼食の時間になった。普段は翔也と二人で食べていたのだが、今日はその翔也がいない。一人で食べようと弁当を開くと、クラスメイトが食事に誘ってくれた。好意に甘えて、和巳も同席させてもらうことにする。

 話の主な内容は、小牧弦についてのことだった。数日前に和巳は、琴葉を庇おうと小牧や水戸を前に一歩も引かなかった。それを見ていた者たちがちらほらと和巳のことを噂していたらしい。

 和巳の勇気への賛辞、そして小牧への恨みつらみを彼らは語っていた。


「こういうことを言うのは悪いと思うけどさ、小牧が死んでくれて良かったよな」


 誰かが言った。それに和巳を除く全員が賛同した。


「天城もそう思うだろ? もし小牧が生きてたら、天城も岡みたいに呼び出されて袋叩きになってたかもしれないぜ」


 その当日、実は袋叩きにされていたとは言わない。

 和巳は彼らの意見に賛同できず、首を横に振った。


「確かに小牧は嫌な奴だったよ。ぼくも関わりたくないとは思ってたけど……」


 両親を失った天城和巳。

 父を失った春見若菜。

 人が死ぬということは、誰かの心に傷を残すということだ。


「あんなやつにも、家族はいるんだ。死人を悪く言うのはよくない」


 和巳が言うと、生徒たちは少しばかり驚いたあと、悪かったと謝罪した。


「お前の言う通りだよ。確かに死人を悪く言うのはよくないな」


 それからは当たり障りのない会話をした。主に会話に上がったのは和巳の弁当の話だ。今日の弁当は和巳の自作であったものだから、多くの生徒の興味を引くこととなった。

 小牧の話題が上がることは、なかった。


       ◇ ◇ ◇


 何事もなく六限が終了し、最後のSTを終えた生徒たちは各々帰宅や部活動へと向かった。和巳もまた帰宅をしようかと思ったのだが、翔也のことが気にかかる。

 家まで見舞いにでも行こうかどうかと迷っていたところ、「天城くん」と声がかけられた。

 担任教師の岩倉だ。


「なんでしょうか」


「えっとね……警察の方が来ていらっしゃる。小牧くんの件だ」


       ◇ ◇ ◇


「どうぞ、入ってください」


 扉をノックした後にその声を受け、和巳は視聴覚室へ入った。

 二十代であろう若い警官と、四十代ほどに見える痩せた警官が座っていた。

 若い警官は全体的にガタイがよく、見るからに運動系だ。四角い形をした顔の輪郭から法に忠実な印象を感じた。正義感が強そうだ。

 もう一人は痩せ形の体型で、とてもではないが暴れる人間を捕まえられるようには見えない。しかし視線は鷹のように鋭く、頭が回りそうな男だった。


「適当な所に座っていいよ」


 痩せた警官に言われて、和巳は彼の正面の席に座ることにした。和巳の態度に、警官は驚いたように目を開く。


「どうかしましたか」


「いや、普通の人は事情徴収に気を良くしない。何も悪いことをしていなくても私たちを避けて座ることが多いんだけどね、きみは堂々と正面に座ってきたものだから。ここまで積極的な人は珍しいよ」


 単に翔也の様子が知りたくて、早く終わらせたいだけだ。


「何を聞きたいんですか」


 逆に問いかけると、警察の二人は顔を見合わせて苦笑した。


「先日、小牧弦が殺害されたことは知っているね。そのことに幾つか聞きたいことがあるんだけど、いいかな」


「手早くどうぞ」


 和巳の態度に少し訝しみつつ、若い方はペンを握って手帳を広げた。それを見て、痩せている方が質問を始める。


「きみは小牧くんをどう思っていたのかな」


「あまり快く思っていませんでした」


 あまりに素直な言葉に、若い警官は「え」と声をあげ、痩せた警官は目を細める。


「それはどうしてかな」


 痩せた方が続けた。


「白河琴葉という女子生徒がいるのですが、彼女に執拗に迫っているようでしたので」


「うん、その証言は何人かから受けている。そういえば、小牧くんが殺害されたその日にきみはその白河さんと一緒にいたそうだね。小牧くんやその友達に目を付けられたとか」


 おそらくあの場に居合わせた生徒の誰かが証言したのだろう。

 和巳は静かに続けた。


「笹田翠という女子生徒も一緒でした。ぼくと彼女は彼らから恨みを買ったと思います」


「どうして恨みを買ったと思う?」


「白河さんとは一年次から仲良くさせてもらっているのですが、小牧くんたちはぼくに威嚇をしながら彼女に近づくなと言いました。それを断ったので」


「笹田という子の方は?」


「彼女はぼくと白河さんを庇ってくれました。彼らの性格からしたら、邪魔をするだけでも恨みを買うには十分だと思います」


 なるほど、そういう繋がりがあったのか。と痩せた方が笑う。よくわからない。


「次の質問だ。きみは小牧くんが恨みを買っていそうな人物を知っているかな」


 その問いの意図はよくわからない。しかし和巳は少し考えてから答えた。


「小牧くんは普段から素行がよくありませんでしたから、多くの生徒から恨みを買っていたと思います。実際、小牧くんが死んで良かったという声もありますから」


「きみ自身はどう思った?」


「正直なところ、これで彼に学校生活を脅かされずに済むとは思いました。でも、死んでしまったことについては、その、少し――悲しいと思います」


「きみは小牧くんを迷惑に思っていたんだろう。どうして悲しいと思ったんだい」


「家族を失うのは悲しいことです。小牧くんにも、家族がいると思ったので」


「そうか。……天城。うん、そういえばきみは、303便の生き残りだったね。それなら家族が死ぬことに対する悲しみも人一倍強いわけだ」


 痩せた警官は説明するように和巳に言った。

 まるで、303便の話を出して和巳の冷静な態度を崩そうとしているようだった。


「はい、ぼくはあの事故で両親を失いましたから」


 カリカリ、と若い男がペンを走らせる音が聞えた。

 しばらく考える素振りを見せたあと、痩せた方は再び口を開く。


「小牧くんの死因については、何か知っているかい」


「詳しくは知りません。ただ噂で絞殺だと聞きました」


「それを聞いてどう思った?」


「少し安心しました。その日ぼくは、小牧くんたちと喧嘩をしてしまったので。もし殴殺が死因だったら、自分が犯人かもしれないと思いました」


 ふむ、と痩せた男は自分の爪を触り始めた。


「ちなみに聞くけど、どうして喧嘩をしたんだい」


「学校から帰ろうとしたら、人気のない河川敷まで連れていかれて袋叩きにされました」


「その割に、きみは身体に怪我がないね」


「殴られている最中に抵抗しましたから。それで小牧くんたちを何度か殴りました。一応聞きたいんですが、もしかしてこれは何かしらの罪になりますか?」


「いや、それは複数人による暴行から逃れるための正当防衛として処理されるだろうね。君が複数人の生徒に連れられて歩いていたという目撃証言もある」


 和巳は少しだけホッとした。


「そのあときみは、どうしたんだい」


 しかし、続く言葉に答えられなかった。

 そのあとどうしたか。少女に殺されかけた、と言えばいいのだろうか。困った和巳は、あの少女についての部分を省略して、教会で治療を受けたことを説明した。


「……そうか。うん、質問は以上かな。協力感謝します、また何かあれば聞くことがあるかもしれないけど、その時もご協力をお願いしたい」


       ◇ ◇ ◇


 和巳が一礼の後に視聴覚室を出ると、そこには琴葉が立っていた。


「あ、天城くん……」


 彼女が此処にいるということは、彼女も事情聴収を受けるのだろうか。

 それを問うと、琴葉は既に事情聴取を受けていたと言った。


「あの、天城くん。わたしこれから翠ちゃんの所へ行こうと思うんだけど、一緒に行く?」


 翠の所へ行くというのは、どういうことだろうか。

 首を傾げた和巳に、「翔也くんから聞いてない?」と琴葉が恐る恐る問いかけた。

 ポケットからスマートフォンを取り出して通知を見てみれば、確かに翔也から何件か通知が来ている。そのうち、メールの一つに詳細があった。


『翠が白那岐総合病院に入院した。悪いが俺は、翠の看病をする』


 と、普段の翔也から想像もできないような淡々とした一文だ。


「笹田、何か病気でもしたの?」


 あの翠に限ってそんなことはない。しかし、病気でないとしたら――。

 和巳の嫌な予感に、琴葉は周囲を気にしてから囁くように言った。


「翠ちゃん、誰かに襲われたらしいの」


 それを聞き、和巳は歯を強く噛みしめた。

 あの少女の嘲笑が、聞えた気がした。


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