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叛逆の赤い月  作者: 九尾
第1章
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曼荼羅

 

「……またか」


 寝起きの顔を片手で覆い、大きく息を吐いて天城和巳(あましろかずみ)は目を覚ます。

 まず、状況の確認。布団代わりにダイニングテーブル、枕はテーブルの上に置いた自分の腕。服装は寝間着姿だ。枕代わりにしていた腕の下に、汗で濡れたルーズリーフがあった。どうやら、昨日は勉強中に眠りこけてしまったらしい。


 視界の端には見慣れた食器棚、正面には見慣れた居間の中央に居座るテレビがある。

 安堵の溜息が漏れた。

 夢見が悪かったせいで気分は良いとはいえない。加えて、全身からは汗が滝のように吹き出ているせいで、肌に濡れた服が張り付いて不快だった。


 夏はとうに過ぎ去り、今はもう十月だ。台所は我が家の中でも肌寒い場所に当たるのだが、いくらなんでもこの汗の量は異常だろう。

 寝ぼけた頭で時刻やその他状況を確認していると、次第に意識は鮮明になっていく。トントンと包丁でまな板を叩く音が認識できる程度には、意識が戻る。


「おはようございます、兄さん。また怖い夢でも見ましたか?」


 背後から聞こえたのは、風鈴のように明るく透き通る声。

 その一言で、和巳の胸に残っていた不快感の多くが洗い流されたような心持ちになる。


「そんな……感じかな」


 和巳は背後で朝食作りに励む少女に目を向けた。

 天城夕凪(ゆうなぎ)。和巳の実の妹だ。長く伸ばした色素の薄い髪を持つ小柄な少女で、見るものの心を癒す可愛らしい顔立ちと、リスのようなくりくりとした瞳、その瞳を柔らかく包むようにしたピンクのフレームのメガネが大きな特徴である。


「昨日も遅くまで勉強していたんですか? 勉強も大切ですが、身体も大切にしてください。寝不足が理由で、また事故に遭われても困りますし」


 夕凪はどこか拙い様子で動きながらも、一人で調理を続ける。その様を心配そうに見つめながら、和巳は返す言葉もなく「ごめん」と小さく唸った。

 痺れた腕に血が回り始めたのを感じた和巳は、立ち上がって夕凪の隣に並んだ。


「今日の朝食はぼくの当番だろ。あとはぼくがやるよ」


「今日のお弁当はわたしが当番なので、朝食もついでにやってあげましょう」


 ふんす、と夕凪は小さな胸を張る。

 普段なら甘えてしまいたいところだが、今日はあの夢を見て起きてしまった。和巳はとある夢を見てしまうと、その一日は人に恩を作りたくないと思ってしまう癖がある。

 例えそれが、家族であっても。


「悪いけど夕凪、今日は譲ってくれ」


 和巳が言うと、夕凪はしぼんだ風船のように縮こまってしまった。「わかりました」と、あからさまに意気消沈した様子で後ろに下がる。和巳がそういって台所に入る日は大概、「危ないからついでにやっておく」と弁当作りをされてしまうのが不服らしい。

 けれど、危ないのは事実なのだ。


 夕凪は二年前に巻き込まれた事故の影響で、視力が大きく低下してしまった。現在ではメガネをかけた矯正視力も0.03を下回るほどのものだ。ただ本を読むことですら苦労してしまうものだから、一昨年の冬には障がい者手帳の発行が承認されるほどだった。


 そんな彼女に料理をさせること自体間違っていると和巳も思うのだが、家事くらいはやれるようになりたいという本人の強い希望から、週に一度の弁当と、平日の夕食の準備を任せている。

 だが、女の子に危険があるくらいなら、できるものなら自分でやってしまおうというのが男心――というか、兄心というものだろう。和巳は夕凪の不満に気付きながらも、台所から退場してもらうことにした。

 しかしせっかく早起きしてくれた妹をただ退かすだけでは忍びない。なので、もやしが入ったボウルを渡しておくことも忘れない。

 顔をぐっと近づけてボウルの中身を確認した夕凪は、大げさに嘆息する。


「わたし、こういう役回りばっかりです。もっと兄さんの役に立ちたいのに」


「十分役に立ってくれてるさ。今だって、ほら、夕凪がお湯を沸かしておいてくれたおかげで、すぐに味噌汁が準備できる」


 そう言って和巳は、手慣れた様子で掌の上に乗せた豆腐をさいの目切りにして、夕凪の作りかけの味噌汁に放り込む。次いで火をかけた和巳は、これまた夕凪が冷蔵庫から取り出していた鮭の切り身を油の敷かれたフライパンに放り投げた。

 じゅうじゅうと魚の焼ける匂いを嗅ぎながら、ダイニングテーブルに腰掛けてぷちぷちともやしの根を千切る夕凪は唇を尖らせる。


「兄さんが言うと、なんか嫌味に聞こえます」


「嫌味なもんか。本当はさ、ぼくは夕凪がいてくれるだけでいいんだ。例え何もしてくれなくても、夕凪が「おかえりなさい」って言ってくれるだけでさ」


「ただの引きこもりじゃないですか、それ。わたしはもっと兄さんの役に立ちたいのに。はいもやし、もやしですよできましたもやし」


 文句を言いつつも仕事はこなすあたり、夕凪は非常にできた妹だと和巳は思う。


「そのもやしはナムルにして弁当のおかずにしようと思うんだけど、どうかな」


 もやしのナムルは電子レンジで温めて水分を絞り、ごま油や塩、鶏がらスープの素などで味付けをするだけで完成する。夕凪にも安心して任せられる簡単な料理だ。


「仕方ないですね。このもやし、最高のナムルにしてあげますとも」


 夕凪が少しだけ機嫌を直したことを尻目で確認して、和巳は鮭の調理を続けた。


        ◇ ◇ ◇


 天城家の食事は静かに行われることが多い。基本的にテレビは付けず、兄妹の間で会話が交わされることも少ない。

 だがその日だけは、和巳がテレビをつけた。

 理由としてはなんとなくの一言に尽きるが、しいて言うならば、あの夢を見たからだ。

 何かしら行動をして、夢の内容を忘れたいからだ。

 ニュースの内容を見てみれば、和巳たちの住む計都(けいと)市のすぐ隣、白那岐(しらなぎ)市でのレポートが行われていた。


 どうも白那岐市では、数百人規模で体調不良を訴える人たちが出ているらしい。人によって頭痛だの吐き気だのと症状は異なるらしいが、それにしても異常な事態だ。

 専門家は気象の影響による酔いだのなんだのと言っているが、実際のところはどうなのだろうか。


「夕凪、白那岐の学校とか会社で300名を超える欠勤・欠席だってさ。体調管理はしっかりね」


「兄さんも気を付けてくださいね。わたしは体調が悪くても春見さんが来てくれますけど、兄さんはそういうわけにもいきませんから」


「仰る通りで。ぼくまで春見さんに甘える訳にもいかないもんな……」


 そういって再び食事を始めた和巳は、ぼうっとテレビを見る。

 キャスターが町中で苦しそうに歩く人々に声をかけ、体調の状況を聞いている。

 好奇心でニュースを放送しているだけで、実際は体調不良に苦しむ人々の心配などしていないのだろう。なのに「大丈夫ですか」「大変ですね」といった言葉を容易く使う。

 この画面に映る人々の中で本当に本人を心配しているのは、きっと本人だけなのだ。

 まるで、人はそれぞれ己を四角く囲う箱にでも入っているかのようだ。

 その箱は人と人との間に心の壁を作る。

 そしてそんな人々が敷き詰められたこの世界は――きっと、曼荼羅のようなものなのだ。


       ◇ ◇ ◇


 食事を終えて、学校へ行く支度も整えた和巳が「行ってくる」と玄関に立つと、夕凪は玄関に顔を出した。

 靴の紐をしっかりと結び、行ってくると意思表示をすると、夕凪は心配そうな顔で和巳の顔を見回す。


「どうしたの、ぼくの顔に何かついてる?」


「いえ。そういえば事故にあったあの日も、今日みたいな顔をしていたような気がして」


 今にして思えば――事故にあった日も、あの夢を見ていたような気がした。

 嫌なことを思い出したと、和巳は眉間に皺を寄せる。


 つい先週まで、和巳は近くの総合病院に入院していた。

 その原因は、一般車両との接触事故である。

 当事者の和巳からしてみれば、無事に目覚めることができたので大した事故であったとは思っていないのだが、当初は生存が絶望視されるほどの状態であったそうだ。

 およそ一週間の昏睡から目覚めて最初に目にしたものが、ゾンビを見たような顔をした医師たちという異様な光景は、おそらく墓に眠るまで忘れまい。担当の看護婦から聞けばなるほど、その医師たちは和巳の死を最終確認するところであったらしい。死者かと思った患者が起き上がれば、ゾンビを見たような顔にもなるのも道理だろう。

 死者同然の状態から僅か一週間で退院できたものだから、人の生命力というのも案外馬鹿にならないものだ。もっとも、和巳の場合は頭の打ちどころが悪かっただけらしく、身体の方には大きな問題がなかったことも幸いしているのだろうが。

 なんにしても、だ。


「今その話を蒸し返すのは、頼むからやめてくれ……」


 いくらなんでも、朝から縁起が悪すぎる。

 げんなりした和巳を見て、夕凪は慌てて頭を下げる。


「ごめんなさい、朝から不吉ですよね! 忘れて下さい!」


「うん。今のことを根に持ちつつ、これでもかと気を付けて行くことにするよ」


 本当にごめんなさい! と両手を合わせて謝る夕凪の頭を撫でて、和巳は玄関に飾ってある一枚の写真に目を向ける。

 和巳と、夕凪と、そして二人の両親である和希(かずき)(ゆう)が映っている写真だ。その写真の中では誰もが笑顔で、誰もが輝いて見えた。


「父さん母さん、行ってきます」


 最後にそう言って、和巳は一歩を踏み出した。


       ◇ ◇ ◇


 計都(けいと)市。

 それが和巳の住んでいる土地の名前だ。

 面積はおおよそ五〇平方キロメートルの土地で、人工は一五万人ほど。日本の首都である東京に比べてしまえば田舎なのだろうが、車に関する工業が盛んのためか、市としては裕福で、街路樹が多いことが特徴か。工業地帯には工場とビル群が立ち並び、そこから少し離れると多くの民家が並んでいる。計都自体は都会とは言えないが、電車で幾つか駅を跨げば白那岐(しらなぎ)市という大きな都市に出ることができるので、別段不便はない。

 和巳の家は計都の民家の密集地にあり、そこから数十分歩けば学校がある。

 計都高等学校。それが和巳の通う学校の名前だった。

 計都高校は、成績は普通よりは少し上程度だが、他にはこれといって目立つものが何もない平凡な高校だ。少しでも家に近いという理由で、計都高校に進学を決めた。

 楽だというのもあったが、何かあったとき、すぐ夕凪の元へ駆けつけられるようにするためだ。


 十分ほど通学路を歩くと、ちらほらと計都高校の生徒の顔が見えてくる。事故に遭ってしばらく登校していなかった和巳に声を掛けてくれたり、心配してくれた生徒たちは少なからずいた。ありがたいことだ。

 和巳も彼らに負けじと笑顔で挨拶を返すうちに、二年三組と表札が掲げられた教室へ辿り着く。


「おー、ようやく来たのか和巳!」


 和巳が教室のドアを開くと、ドアのすぐ傍の座席に立っていた男子生徒が手を挙げた。

 尾崎翔也(おざきしょうや)。長身でルックスもよく、剣道部部長を務め、また勉学面も優秀という文武両道の爽やか青年だ。その上、クラスの多くの人間とも打ち解けるという才能まで持っているのだから、天は人に二つ以上の才能を与えるらしい。

 和巳にとって、数少ない幼稚園来の友人でもある。


「なんだよ元気ねえなーお前。もっと元気だせよ。ホラ、こいつの匂いでも嗅ぐか?」


 そう言って、翔也は右手を差し出した。

 翔也自身の髪からはシャンプーの仄かな香りが漂っているのだが、彼の右手からは、シャンプーなどとは程遠い、夏の蒸れた靴下のような匂いがしていた。


「遠慮する……」


 少しだけ寂しそうな顔をした翔也は自分の右手の匂いを嗅ぐと、「くっさ!」と、不快そうな顔をして笑った。


「やっぱこれ、剣道のどうしようもない闇だよなー」


 右手をひらひらと振った翔也は、背後にある和巳の席を指す。どうやら「鞄を席に置けよ」ということらしい。

 和巳が席に鞄を置こうと席に向かうと、翔也もその後をついて来た。


「しっかし、お前がいない間は寂しかったぜー。他に飯食うやつもいないからな」


 和巳が居なかった間というのは、もちろん入院していた時期のことだ。まさか朝のうちに二度も事故当時の話を蒸し返されるとは思わず、和巳は少しだけ唇をゆがめた。


「そんなことないだろ。翔也にはぼくより、よっぽどたくさんの友達がいるじゃないか」


「俺のじいちゃんが言ってた。本当の友達ってやつは、百万貸してくれって突然言われたとき、ポンっと百万貸せるくらい信用してる奴だってな。俺にはそんなん、お前ぐらいだ」


 自分には、そんな人間は翔也くらいかな――と思いつつ、和巳は小さく微笑んだ。


「ぼくなら、その百万奪って外国に逃げるかも」


 鞄を置いて席に着くと、「かもな」と翔也は笑った。


「だが後で必ず倍にして返してくる。お前はそういう男だよ」


 どうだか。その意を込めて、和巳は肩を竦めた。


「ところで和巳。お前が入院してる間、学校では妙な噂が立ってたんだが知ってるか?」


 そう言って、翔也はどっかりと和巳の机に座り込んだ。

 見栄えが悪いからやめてくれ、と何度も注意しても、翔也は一向にやめる様子がない。こういった遠慮の欠けた行為は、翔也なりのコミュニケーションの一環らしい。

 注意するのは、小学の頃にはもう諦めていた。


「奇妙な噂って言うと――あれかな。天城ゾンビとか?」


 数週間前に医師たちからゾンビ扱いされる程度に死の淵から蘇った和巳が、白那岐総合病院で務めている翔也の姉・尾崎瑠々(るる)から付けられた実に不名誉なあだ名である。

 冗談交じりで言った和巳だったが、翔也は「それだ」と真面目な顔で返した。

 普段は冗談でも「その手の話題は止めろ」と身体を震わせるほど心霊関連が苦手な翔也が会話に乗ることに違和感を覚え、和巳の顔から笑いが消えた。


「お前が入院してる間な、一人の生徒が死んだらしい。ほら、隣のクラスに(おか)ってヤツがいたろ。地味で、なんつーか……死者を指してこういうこと言うのはアレなんだが、オタクっぽいヤツだ。知ってんだろ?」


 和巳は頭にハテナを浮かべて、首を横に振る。


「不登校で引き籠ってたやつだよ」


「ああ、彼」それでようやく、和巳は岡という生徒がいたことを思い出す。

 身長は和巳と同じ一六〇程度だが、体重は百キロ近くはありそうな男子生徒だ。よく知り合いの女の子と一緒にいたことを覚えている。


「なんでもあいつ、ウチの女子生徒を盗撮してたらしいんだ。大量の写真が家から見つかってな、警察沙汰になって――コレ」


 翔也は、右手首を左手首に持ったナニカで傷つけるようなジェスチャーをした。

 リストカット自殺をした、ということらしい。


「そっか。そんなことが……」


 和巳は同年代の人間が死んだことに対しては、何も思わなかった。冷たいようだが、ニュースで流れる死亡者の名前を見るような気分だ。死んだ相手と和巳は、たまたま所属する学校・学年が同じであった、というだけの事実に過ぎないのだから。


「けど、それと噂の何の関係があるの?」


 態度を変えることなく、和巳は問う。しかし和巳の疑問に、翔也は呆れたような表情を見せた。

 自殺は自殺だし、噂は噂だ。関係があるようには思えないのだから仕方ないだろうと、和巳は少しむっとする。


「ゾンビになって蘇ったって言われてんだよ、岡が。見たってやつも何人かいる」


「……えっと、うん。……翔也、それマジで言ってる?」


 寒気がするのか背筋を震わせ、神妙な面持ちで「そうだ」と翔也は頷いた。

 どこかの御伽噺でもあるまいし、と和巳は思う。そういう死者が蘇るだのなんだのといった話は、だいたい人の見間違いや幻聴幻覚の類であると相場が決まっている。大方、その岡という生徒から盗撮された女子生徒が、「見られているかもしれない」という疑心感から被害妄想でも生み出してしまったのではないだろうか。


「あくまでも噂だから真偽の方は定かじゃないけどな。自殺は失敗に終わって、精神病院に入院したって話もある。……どちらにせよ、お前も気を付けた方がいいぜ」


「うん、……うん?」


 頷きかけた和巳は、疑問で返した。

 岡という生徒が自殺した。死者が蘇るという噂がある。そして、岡の死体が消えたことから、彼が蘇ったかもしれない――という所まではなんとか理解できる。しかし、話が飛躍しすぎて、なぜ自分が気を付けなければならないのかが理解できない。


「なんでぼくが気を付けるの?」


「あァ? ……いや、そりゃアレだよ。まあー、うん、お前は一応、気を付けた方がいいと思う。俺の勘なんだけど、気を付けろ。絶対だ」


 普段はハキハキとものを言う翔也にしては珍しく、歯切れが悪い。何かあるのだろうということはわかっても、その何かに思い当たる節がまるでない和巳は、首を傾げたままだ。

 このままでは折角の忠告も意味がないと思ったのか、翔也はうんうんと散々唸った挙句に、恐ろしい一言を言い放った。


「ホラ、お前って身長もそんな高い方じゃないし、顔立ちも妹に似て女の子っぽいだろ。……すっげえ言いにくいけどさ、岡って、そっちの気もあった――んじゃねえかなあ」


       ◇ ◇ ◇


「失礼しました」


 そう言って職員室から出た和巳は、ダンボールに詰められた大量の不要書類を抱えていた。「病み上がりの所をごめんね、天城くん。こんなことを頼めるのはキミぐらいしかいないんだ」と、へこへこ頭を下げるクラスの担任から渡されたものだ。不要書類を裏のゴミ捨て場に置いてきてくれと頼まれている。

 和巳は嫌がることなく、「構いませんよ」の一言で書類の束を受け取った。

 

 本当は、この仕事がクラスの雑用係の仕事だと和巳は知っている。この雑用係は生徒の誰もがやろうともせず、結果、係決めの当日に授業をサレンダーした水戸裕也(みとゆうや)という生徒に決まってしまった。その水戸という生徒は一般に言われる不良生徒で、教師のいう事など小耳にも入れはしない。そのため、普段から人の頼みを断らない和巳に雑用仕事が回ってきているという次第である。

 

 こういった雑用をすることは、家のため放課後に時間を割けない和巳からしてみれば、珍しいことではない。無遠慮を翔也がコミュニケーションの一環とするならば、和巳は人の頼みを聞くことをコミュニケーションの一環としているだけだ。


 和巳が書類を抱えて校舎を出ると、ゴミ捨て場に見知った女子生徒が立っているのが目に入った。職員室と教室は校舎が異なるため他に生徒はおらず、かなり目立つ。

 見れば彼女は、何かをゴミ捨て場に捨てているようである。

 人に見られて困るものでもあったのだろうか――と気になったが、わざわざこんな所で捨てているものだ。何を捨てているかを聞くのは失礼だと思い、普通に声をかけることにする。


「こんにちは、白河さん」


 背後から挨拶をすると、彼女は「ひぅ」と過剰なまでに驚いてしまう。

 白河琴葉(しらかわことは)。たれ目に、右眼の下に泣きぼくろが特徴の少女だ。セミロングの髪で、左耳を隠すように小さな三つ編みを垂らしている。身長は一六〇に届かないくらいなので、和巳より少し低い。

 和巳は彼女とはクラスが重なることはなかったが、去年の図書委員の仕事で一緒になることが多く、それをきっかけに話すようになっていた。


「……えっと、大丈夫? もしかして声かけたらマズかった?」


「あっ、天城くん……ええっと、大丈夫! ……こんにちは」


 ぺこりと会釈をして、琴葉は控えめに笑顔を作った。


 何かゴミ捨て場に用でもあるのかと思ったのだが、どうやら違うらしい。

 今の挙動といい、周りを見渡す仕草といい、誰か、或いは何かを気にしているようだったが、聞くのは無粋だと思ってやめておいた。


 琴葉のクラスには、小牧弦(こまきげん)という厄介な男子生徒がいる。長く伸ばした金髪と、口に付けたピアス、開いた学生服から覗く黒のタンクトップが目立つ。いつも不機嫌な鋭い目つきをしている。先に挙げた雑用係の水戸と共につるんでいる不良の一人だ。

 琴葉は少し前には件の自殺少年である岡に気に入られていたと聞いていたし、現在では小牧に大層気に入られ、クラス内にいるとやたら話しかけられているという。

 それだけで、琴葉が教室を抜けて放浪するにも十分な理由だと思う。特に琴葉のように人一倍気弱な少女では、小牧のことが見かけ以上に怖く見えるものだろう。

 本当に運のない少女だと思う。そういうところが、和巳からしたら放っておけないところでもあるのだが。


       ◇ ◇ ◇


「なんだあ、天城。お前またパシリやってんのか」


 和巳が琴葉と二人で教室に戻ろうとしていたところ、たまたまT字の廊下で一人の生徒と鉢合わせた。

 ワックスで後ろに回した黒髪と、はだけた制服がまず目についた。耳にジャラジャラと付けられたピアスがうるさいくらいに音を立てて、和巳の行く手を阻む。

 彼こそまさしく、現在和巳が行っている仕事を本来行うべき相手、水戸裕也である。


 どうやら今日もどこかでタバコを吸ってきた帰りらしい。タバコのにおいがする。

 いつもは授業が始まっても学校のどこかでたむろっているものだが、今日は校舎に戻っていたらしい。和巳は自分の不運を嘆いた。

 水戸の後ろには多くの不良仲間が立っている。その中央には、リーダー格といった雰囲気を醸し出す小牧弦の姿もある。

 隣を歩いていた琴葉が、こわばるのがわかった。


「水戸くん。次は永田先生の授業だから急いだほうがいいよ」


 それだけ言うと和巳は琴葉の手を取って、不良の間に道を開くように歩き出した。続いて琴葉も早足で進む。

 ああいった手合いの者は、絡まないことに限る。


 そんな和巳の思いとは裏腹に、「待てよ天城」と水戸は和巳の腕を掴んだ。

 和巳の足が止まると同時、後ろを歩いていた琴葉の足も止まってしまう。


「お前、なんで琴葉ちゃんと一緒にいんの?」


 そう言って水戸は和巳の腕を引き、もう片方の腕で胸倉を掴んだ。

 水戸が和巳を睨む。顔が近い。くちゃくちゃと噛んでいるガムの匂いがした。


「なんでと言われても。そこで会ったんだ」


 昇降口を指しながら、何を言っても納得しないんだろうなと和巳は思う。


「お前、あんま琴葉ちゃんに近づくなよ。ゲンさんのお気に入りなんだ」


 不良たちの中心に立っている小牧が、和巳を威嚇するように睨み付けている。

 琴葉は自分のものだ――嫌がっている琴葉を気にすることもなく、我が物顔でそんなことを語る小牧の姿が想像できて、やけに気に障った。


「白河さんはキミらの所有物じゃないだろ。彼女が誰と話そうと、誰と親しくしようと、それはキミたちがどうこう言う問題じゃな……あ」


 言ってから、しまったと思う。空気があからさまに悪くなった。

 さてこの状況、どうしたものか。水戸か小牧に一発殴らせれば、この場は収まるだろうか――なんてことを考えていると、「やあやあ」という声と共に、ショートヘアの女子生徒が不良の間をすり抜けて、和巳と琴葉の前に現れた。


「天城と琴葉じゃないの、きぐーきぐー! あんたら廊下でうだうだしてたら次の授業に遅れちゃうぞ、はい、急ぐ急ぐ!」


 そう言って女子生徒は和巳と琴葉の手を取って走り去ろうとする。しかし和巳が水戸に胸倉を掴まれているので動けない。

 立ち止まった女子生徒は、大きく嘆息してから水戸に向き直った。


「アンタらさあ、喧嘩するのはいいけど時と場所と人を選びなよ。そうやって他人に迷惑かけて、楽しい?」


 あんまりにも正論を正々堂々とぶつけるものだから、水戸はあからさまに顔をしかめた。その隙に女子生徒が和巳を引っ張ると、唖然とした水戸の腕がすんなりと外れる。

 水戸の代わりに、小牧が前に出た。


「邪魔すんなよ、笹田(ささだ)。俺らは天城や白河と話してんだ」


「だったらちゃんと天城と琴葉を見てよ、どう見ても嫌がってんじゃん」


 小さく縮こまって何も言えない琴葉に代わり、和巳は「ぼくも彼女も嫌がってるよ」と心の声を代弁しておいた。


「笹田。お前あんま調子に乗んなよ」


 小牧を睨み付ける少女の肩に、水戸が手を置いた。その手に力を込めて威嚇しようとしたのだろうが、その前に少女が腕を回して水戸に関節をきめた。


「調子に乗ってるのはアンタらでしょ! はいバイバイ!」


 痛がる水戸をつき離して、今度こそ少女は和巳と琴葉の手をとってこの場を去ろうと歩き出す。今度は水戸も小牧も止めなかった。

 その代わり、小牧が品定めをするような視線で少女と和巳を見た。


「いつまでも気丈に振る舞えるといいな」


 小さく笑って小牧は不良を連れて去ろうとすると、眉間に大きく皺を寄せた少女は振り返り、中指を立てて叫んだ。


「うるせーぞ顔面ピアス! 一人で歩けるようになってから出直しな!」


 教師も恐れる小牧を前に啖呵を切るとは、物凄い度胸だと思う。「ちょっと、(みどり)ちゃん!」と、普段は小声の琴葉が大声で狼狽するほどに予想外の事態だった。

 笹田の声が聞こえたのか、水戸を含めた何人かの不良は驚愕や怒りを露わにして振り向いたが、小牧は振り返ることがないまま廊下を去っていった。


 不良たちの後ろ姿を見ながら、和巳は少しばかり後悔していた。琴葉を庇ったことに関しては男として後悔はなかったのだが、それにしてももう少し言い方があったのではないだろうか。普段調子に乗っている彼らに「してやった」という気持ちが多少はあるものの、これから嫌がらせを受けるかもしれない、という不安の方が大きい。

 そんな和巳の背中を、少女は元気づけるようにバンと叩いた。


「いやー、天城! あたしはお前を甘く見ていた! てっきりビビッて何もしないかと思いきや、あいつらに言い返すとはね。流石は翔也が見込んだ男、度胸があるねえ!」


「彼らを相手に啖呵を切るきみほどじゃないよ……」


 あの啖呵のおかげで、和巳まで大きな恨みを買ったように思う。

 本来ならば「無茶」だの「無謀」だのと言いたいが、大きな口で満面の笑顔を見せる彼女の場合は実力が伴っているので、和巳には文句の言いようがない。

 笹田翠(みどり)。いつも元気で、ひまわりのような笑顔の少女だった。

 うんうん、と何かを納得した翠は、綺麗な回れ右で琴葉に向き直る。


「なんにしても、よかったよ琴葉。でもさ、前のストーカーのときといい、変な男に絡まれたときの対処法くらいはしっかり考えた方がいいよ、いい加減にさ。いつもあたしが助けられるとは限らないんだから」


「ん、ストーカー?」


 ごめん、と小さくなる琴葉よりも、和巳は翠の言葉が気にかかった。

 首だけ和巳に向けた翠は、目を開いてキョトンとする。それからしばらく「うーん」と声に出したあと、


「ほら、琴葉ってノーと言えない日本人だからさ」


 と困ったように言った。

 話はこれまで、と各々が教室へ戻ろうとすると、和巳のクラスから一人の男子生徒が歩いてくる。その表情は普段の爽やかなものとは異なり、怒気が少なからず見え隠れした。


「翠、お前なあ……」


 翠の目の前まで歩いて大きく嘆息したあと、彼――尾崎翔也は、げんこつを翠の頭の上に容赦の欠片もなく振り下ろす。


「痛っ、何すんの翔也!」


 翠は翔也の恋人だ。二人とも義理と人情に溢れている好人物で、方や剣道部主将、方や弓道部主将。

 互いに文武両道であることから、自他共にお似合いと認めるカップルでもある。


「何すんの、じゃねーよ! あの手の手合いは危ねーから俺を呼べつってんだろーが! 何度言われりゃわかるんだ、頭悪ィだろバカ翠!」


 どうやら翔也は、翠が水戸や小牧たちに突っかかっていったことに怒っているらしい。翠は「悪いことはしてないでしょ」と怒り返すが、和巳がもし翔也の立場であれば、おそらく翔也と同じことをするだろう。

 恋人が不良たちに喧嘩を売って、その結果に酷い目に遭わされるかもしれない。そんな最悪の未来はおそらく、どんな男でも一度は想像してしまうものだろう。恋人はいなくとも、夕凪という大事な妹がいる和巳には、翔也の心配する気持ちがよくわかる。


「何もなかったからいいでしょ、うるさいな。そもそも翔也がすぐに来なかったのが悪い」


「そういう問題じゃないだろ。お前だって女の子なんだから、その自覚をしろ」


 などと口論を始める翠と翔也を横目に、琴葉が和巳の制服の裾を掴む。


「あの、天城くん……」


 和巳は琴葉の言わんとすることを表情から察した。おそらく、小牧のことに巻き込んでしまった謝罪だろう。しかし、彼女を責めても仕方がないし、責めるべきではないと思った和巳は、「正直ちょっと怖かった」と言って笑った。

 琴葉は驚いたような顔をした後に、「わたしも」と言って、少しだけ笑ってくれた。


「そろそろ授業始まるから、教室戻ろうよ」


 翔也と翠が散々お互いを罵倒し合っている状況で、しっかりと間を見定めた和巳の声が通る。少しの沈黙の後、和巳の言葉を飲み込んで、二人もしぶしぶ教室へ戻ることにしたようだ。口論をやめて互いに目を逸らした。

 しかし翠は再び翔也を睨み付け、強く指を突きつける。


「あたしは止めないから。誰かを助けることが間違っていることだなんて思わない」


 その言葉に、翔也はムッとして言い返した。


「ああそうかい。だったらもう勝手にしろ、どうなっても俺は知らねえからな」


       ◇ ◇ ◇


 曼荼羅(まんだら)、というものがある。

 仏教における世界観を視覚的・象徴的に表したものである。

 この曼荼羅は、重要な神的存在であればあるほど大きく描かれる。どれほど曼荼羅という世界にとって重要な神なのか、それが一目でわかるようになっているのだ。そして重要な神を囲むように、無数の神たちが互いの持つ自分の世界を守りながら共存している。

 天城和巳が初めて曼荼羅を目にしたのは、小学校の頃だった。社会の教科書に載せられた大きな曼荼羅のイラストを見て、強く感慨を受けたことをよく覚えている。

 まるで、人の世のようだと和巳は思った。

 世界を回す重要人物が中央に座り、無数の小さな人たちが中央人物を囲むようにして、己の場所を守って生活しているのだ。その様はまるで、学校長を中心に集まる教師たちのように思えた。その様はまるで、教師たちを中心に集まる生徒たちのように思えた。そしてその様は、まるで。


 ――ああ、そうだ。これは曼荼羅だ。


 この世界は、まるで曼荼羅だ。個人の価値感、個人の感情、個人の命、それら個々の四角い世界が幾つもまとまるようにして、巨大な世界として構築されている。

 ぼんやりと、和巳はそんなことを思った。

 

 怒声、罵声、よく聞き取れない暴言が、鼓膜を叩いている。

 誰かが腕を踏みつけた。誰かが腹部を蹴った。誰かが顔を殴った。

 無数の男たちに囲まれ、嬲られながら、和巳はただ空を見ていた。


 どうも、実感がない。

 痛みはある。苦しみもある。今だって、殴られた拍子に口から呻きが飛び出した。なのにどうしてか、ここで自分が死ぬことがないと知っているかのように、多人数の男たちに嬲られることに対する危機感を微塵も感じない。

 ――身体が軽い。此処にいるような気がしない。


 血が目に入ったのか、視界が少しずつ赤く染まる。青い空が、赤くなる。

 沈もうとしている太陽が、赤い月に見えた。

 周囲の男たちを見た。男たちは笑いながら、殴る蹴るなどの暴行を繰り返す。その様が、二年前の――あの夢の地獄絵図と重なった。


 ――どうして、こうなったんだっけ。


 和巳はほんの少し前の自分の行動を思い返した。

 授業が終わり、皆は部活へ向かった。翔也は剣道部、琴葉は文芸部、翠は弓道部に属している。一人部活に所属していない和巳は特に用事もないので、鞄を手に取って帰宅することにしたのだ。

 しかし、和巳が校門を抜けて帰宅しようとしたところを拒む影があった。

 水戸裕也、小牧弦を中心とした、学校の不良グループだ。

 人通りのほとんどない河川敷に連れて行かれて、複数人によって蹴られ、殴られた。そうして時間が過ぎていき、今がある。


 男の怒声と同時に、顔を殴られた。あまり痛いとは、感じなかった。

 ただ、顔の傷は夕凪に気付かれてしまうかもしれないからやめてくれ、程度にしか思えなかった。

 どこか遠くから声がする。和巳を殴る男たちの声だ。

 会話の流れからすると、どうやら小牧がヤバそうな武器を担いできたらしい。「ゲンさん、頼むから殺しは止めてくれよ」と誰かの笑いが聞えた。


「それは天城の身体次第だ」


 和巳の前に立った男が、何かを振りかぶる。誰かが河川敷に捨てていたのか、それはボロボロにさびれた学生用の自転車だ。あんなもので殴られれば、多くの人間は死んでしまうだろう、と和巳は冷静に考える。

 しかし、死の恐怖はなかった。


 思えば和巳は、先日の交通事故で自分の知らぬ間に生死を彷徨ってから、死という概念への危機感が大きく欠如してしまったように思う。これまで怖いと思っていた危険なことが、まるで怖くなくなった。

 自分のことなのに「死ぬのだろうな」と、和巳は客観的に考えていた。


 自転車が振り下ろされる。

 その瞬間、小牧は口端を醜く釣り上げた。


「――次は、笹田だ」


 笹田。――ああ、笹田。笹田翠のことか。

 和巳は彼女とそれほど仲が良いわけではない。ただ友達の彼女、或いは彼氏の友達というだけの関係だ。しかし彼女は親友の恋人だ。「どうなっても知らない」と言っていたが、彼女に何かあれば翔也は悲しむだろう。彼に悲しむ顔は似合わない。


 なにより。――なによりも、和巳は翠から恩を受けた。


 小牧や水戸に絡まれて困っていたとき、翠は自分の危険を顧みずに和巳と琴葉を助けてくれたのだ。

 恩は返さなければいけない。その思いが、過去の記憶を掘り起こす。

 二年前。炎の中で、和巳を助けてくれた少女は言った。


 ――オン? ……ああ、恩ね。わたしにそんなものは返さなくていい。

 ――もし恩を返したいと思うなら、わたしではなく、他の人に返してあげて頂戴。


 だから、返さないと。命を救ってもらったあの日に決めた。恩を受けたのなら、総ての人にその恩を返すと、そう決めた。


「だから笹田に、恩を返さなきゃ――」


 だから、ここで小牧たちの凶行を止めないと。

 和巳は、立ち上がった。


       ◇ ◇ ◇


 それからどうなったのかは、自分でもよくわからない。ただ、目の前にある光景だけが総てだと思った。だから、確認の意を込めて和巳は自分の拳を見た。

 拳は別段傷ついてもいない。しかし、人を殴った痕跡だけはある。

 和巳の周りには、殴り倒された不良たちの姿があった。

 ここいらの不良の中では負けなし、と噂されていた小牧ですら、和巳の足元に自転車を転がして河川敷に伏せている。


 何が起きたのだろうか。これまで経験したこともない状況に困惑した和巳は周囲を見渡し、誰かに助けを乞おうとする。しかしここは人気のない河川敷だ、倒れた不良たちを除けば人などいない。また人を呼んだところで、どのようにこの状況を説明するというのか。


 ごめん、一言謝って和巳がこの場を去ろうとすると、奇妙な匂いに気が付いた。

 人のものとも、動物のものとも違う。ましてや、薬物や消毒液の類でもない。これまで嗅いだどんな匂いとも異なる上に、とても和巳の語彙では表現できないものだ。しかし、敢えて言い表すのなら、『蛇の匂い』だろうか。

 誰もいなかったはずの背後から、声が掛かった。


「貴方、なかなかどうして強いのね。まるで人ではないみたい」


 振り向いた先には、一人の少女が立っていた。

 少女の黒い瞳が、和巳の瞳を覗き込んでいる。

 優しくほほ笑んだ少女の笑みは――まるで悪魔の笑みだった。

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