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『 国はそれを人違いと疑わない 』
高校3年の冬。
庵は何の変哲もない高校の屋上であぐらをかきながら空を見上げていた。
既に太陽は沈み、携帯をタップすると画面上に映る時は深夜を告げている。
そんな時間になぜ彼が学校、そして屋上に居るのかと言うと、庵の通う高校は3年になると最後の思い出として星を見ると言う行事がある。
しかしそれはあくまで自由参加。思い出と言っても寒空の中星を見るような生徒は十数人しか居ない。
彼自身も星には何ら興味が無いし、本音を言えば今すぐにでも帰りたい。そんな彼が態々星を見上げている理由は、隣に同じように腰掛ける友人のせい。
勿論、男である。彼とは幼稚園の頃からの友人で、幼馴染であり腐れ縁でもある。面倒くさがりな庵と違いやる気に満ちている友人とは性格の違いからかそこそこ仲が良いらしい。
そんな友人に何の理由があってか強制的に参加させられ、それだけでも不機嫌極まりないと言うのに今日はいつにも増して気温が低い。
申し訳程度に配られた薄い毛布を肩から羽織るも、通気性が良いのか何なのか風が吹き込んでくる。
───本気で帰りたい。