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聞いてほしくないこと

 「うわぁ! すごい! めちゃくちゃ広いじゃないですか!」

と目をキラキラ輝かせて言っている芹沢さん。こういう所に来たことないのか。

 今俺たちがいるのはハンバーガーショップ。別に変わったところはない。よく見かけるごく普通のハンバーガーショップだ。丁度昼食の時間というのもあってか、店内は人であふれている。当然、座って食べられる所なんてない。

「・・・・・・・・・芹沢さん、会社に戻って食べましょう」

「へっ? あ、は、はい! そうですね、帰りましょう」

キラキラしていた目が少しゅんとする。

「また来られますよ」

そう言って店を出た。


 昼食の時間なのに俺と芹沢さん以外誰もいないオフィス。おそらくみんな近くのファミレスにでも行っているのだろう。

 あの衝撃的なお昼から1週間。あの後、時間になったので急いで会社に帰った。結局俺はほとんど食べられなかった。芹沢さんはというと満足したらしく、帰りに笑顔で「すごくおいしかったです! また食べたいです!」なんて図々しいことを言ってきた。まぁ、おいしくなかったと言われるよりましだけど。

 あれから俺と芹沢さんは毎日一緒にお昼を取るようになった。というより、一方的に押しかけられてるだけだが。最初はほとんど黙って食べていたが、最近は少し話すようになった。だから今いるオフィスはそこまでシーンとしていない。

 「河井さんは一人暮らしなんですか?」

「まぁ、そうですね。そうだと思います」

「そう思うとはどういうことなんですか?」

いつもなら、芹沢さんが質問してそれに俺が答えるだけで終わるのに今日はなぜか食いついてきた。

「もしかして、この前のことに関係があるんですか?」

勘が鋭い。この前のこととはつまり芹沢さんが俺の仕事を手伝ってくれた時のことで。このまま言わないっていうのはやっぱり相手に失礼なのか。いや、失礼なのは芹沢さんだろう。人の秘密を探ろうとしているのだから。

「・・・・・・それは、言わないとだめなんですか」

うつむき加減で、いつもより声のトーンを下げて言う。これは別にに聞いていない。聞かないでくれと圧力をかけているのだ。本当は聞かないでほしい。それを遠回しに言うなんて性格が悪い。うつむいてしまっている俺に対し芹沢さんは、

「・・・・・・すみません」

とだけ言った。顔を上げて芹沢さんの表情が見たくなったが、そこまで勇気が出なかった。

 それから食べ終わるまで俺たちは一言も話すことはなかった。食べ終わった後も「では、」という寂しい会話だけで終わった。

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