手伝います
出張も終わり、元の生活に戻った。でも、出張をきっかけに少し変わったことがある。それは………
「河井さん! おはようございます!」
「芹沢さん、おはようございます」
そう、芹沢さんと話すようになったことだ。と言っても挨拶や質問などがほとんどだが。
最初は女性社員に「女の人が嫌いだったんじゃないの?」とか「河井さんが女の人と普通に話してる」など言われていたが、3日たつ頃にはみんなその光景に慣れたらしく何も言わなくなった。
そんなこんなで1日が過ぎていった。もう午後の8時になった。ほとんどの社員が帰ってしまい、あたりはシンとしている。そんな中で俺は黙々と仕事をしていた。出張に行った分の仕事が未だに終わらない。まぁ、すべて他の人から押し付けられたようなものだけれど。でも、ここ数日病院に行けてない。せめて1分でいいから奈緒に会いに行きたい。
「このままだとまた行けないかもな………」
そう小さな声で言った瞬間、後ろから声をかけられた。
「手伝いましょうか?」
「わぁ! びっくりした………って芹沢さんか」
もう会社に残ってるのは自分だけだと思っていた。びっくりして椅子から落ちそうになったのをなんとか腕で支える。後ろからとか心臓に悪い………。彼女はクスクス笑いながら、
「何かこの後用事があるんですよね? 私は何もないのでお手伝いします」
と言ってくれた。
「いや、でも………」
「大丈夫です。私が河井さんの手伝いをしたいんです」
半ば強引だったが、結局手伝ってもらうことにした。