助けてくれた
飲み会だか、合コンだかわからない会に来てから約1時間。来た時から全く状況が変わっていない。それどころかどんどん悪くなっている気がする。少しの間だけ我慢すれば帰れると思っていたのに、さっきから周りの酔っ払った女達が絡んできてトイレに行くことさえ許されない。
今日はもう病院には行けないなぁ。とそんなことを考えていると隣から酔っ払った女の声がしてきた。
「河井さーん、お酒全然飲んでませんね。これとかいいですよ」
「あ、いや、もう十分・・・・・・」
「そんなこと言わずに、ね?」
「いや、でも、本当に・・・・・・」
「あ、河井さん。楽しんでます? こんな女とより私と一緒に飲みましょうよー」
「あの、俺、まじで・・・・・・」
さっきからこの繰り返しだ。断ろうとしてもその隙すら与えてくれない。
いい加減してほしい。笑顔を保つのがつらくなってきた。
「ねーねー、かーわーいさーん」
あぁ、もう笑顔保てない。というか一発言ってやりたい。
本気で言おうとした瞬間、上から声がふってきた。
「あの、私、その人に用があるので少しいいですか?」
無駄に明るく元気な声。最近聞いてなかったが確かに俺はこの声を知っている。
「せ、芹沢さん?」
「はい。ちょっといいですか?」
上を見上げると笑顔の芹沢さんがいた。
「わかりました。あの、俺はこれで失礼します。」
そう言って周りの女達を振り払って無理矢理立ち上がる。
「行きましょう、芹沢さん」
しばらく二人で黙って歩く。外に出ると風が吹いていて上着がない今は少し肌寒い。出入り口の所まで来て芹沢さんは止まった。とりあえずお礼を言う。
「あの、芹沢さん、さっきはありがとうございました」
あのままずっとあそこにいたら、あの楽しい空気をぶち壊していたかもしれない。
「いいえ、気にしないで下さい。河井さんって意外と短気なんですね。あ、それともあんまりこういうのに慣れてないのかな」
「うーん」となにやら考えるように右手を顎にあてる芹沢さん。というか、なんで・・・・・・
「・・・・・・なんでそこで女嫌いじゃないんですかってならないんですか」
普通は女嫌いだと思うだろう。
芹沢さんは首を少し傾けて不思議そうな顔をしながら聞いてきた。
「え、女嫌いなんですか? じゃあ、なんで私と話せているんでしょう? 話せているってことはつまり女嫌いじゃないってことですよね?」
「ま、まぁ別に女性自体はそこまで嫌いではないというか。その、好きか嫌いかって言われたら嫌いなのかな。そうすると、え、あれ? じゃあやっぱり女嫌いになるの?」
そうするとなんで芹沢さんとは話せてるのかってことになるよな。
だんだんと訳がわからなくなってきてしまい、頭の中をフル回転にしていた時。
「ふ、ふふ、ふあははは」
芹沢さんが笑い出した。