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チックホック村の悲劇

少し説明回。

主人は一回休み。

マリアは腰まで伸ばしたストレートの薄い紅茶色の髪に、青の瞳の17歳の少女である。

寂しい胸が悩みだが、すらりと伸びた手足が美しく、細い腰が自慢のなかなかの美少女だ。


辺境都市ミズアーノの近くの農村であるチックホック村の薬師の娘で、本人も10歳の職業選択の儀式で下級職『薬師見習い』の職が出たため、薬師を目指して村で父親に師事している。


彼女には同じ髪と目の色をしたそっくりな双子の妹がいたが、妹であるレティは職業選択の儀式で下級職『シーフ見習い』が出たため、12歳の時に冒険者を目指してミズアーノに行ってしまった。


この世界では10歳の時に職業選択の儀式と呼ばれる儀式が行われる。儀式では通常1~3程度の職業が表示され、そのうちの1つを選択する。

職業に就くと様々なメリットと少しのデメリットがあり、スキルや魔法を覚えることができるようになる。


例えば村人に一番多い初級職『見習い農民』の職に就くと、農作業に耐えられるように丈夫になり、耕すスキルや収穫のスキルなどで様々な農作業の効率が格段にあがる。

デメリットとしてほとんど魔力がなくなり、最低限の生活魔法以外の魔法が一切使えなくなる。


職業を極めるとさらに上の職業が現れて、さらに強いスキルや魔法のある職業に就くことができる。

初級職→下級職→中級職→上級職→最上級職の5段階があり、上級職と最上級職は前職を極めた上で、それぞれの試練をクリアしないとなれない。


大抵の村人は初級職「見習い農民」か「村人」の職がでる。希に下級職である「見習い剣士」や「見習い狩人」などが出ることもあるが、数十人に1人であり、マリアとレティのように姉妹両方が最初から下級職になるのは非常に希である。


職業を極めるとひとつ上の職業に就くことができるが、その道は険しい。

初級職から下級職にランクアップするのに通常で10年から15年で、真面目に日々の仕事をしていれば大抵はなれる。

しかし、下級職から中級職になれるのは10人中1人くらいで、20年から40年程度かかるといわれている。

中級職から上級職は一気に難易度が上がり、試練も含めてクリアできるのは一万人に1人程度である。

最上級職については、試練をクリアするための場所が2000年前の大厄災で崩壊してたどり着けなくなってしまったため現在は名前だけのものである。


また、職業を極めた後でなら、ひとつ上の職ではなく、選択肢にあった別の転職することも可能である。その場合は極めた職業のスキル等はそのまま使える。

しかし、職業を極める前に別の職業に転職してしまった場合は、前の職業のスキル等は一切使えなくなってしまう。


マリアは幼い頃から父親の仕事を手伝っていたこともあり、16歳で中級職『薬師』にランクアップできた。これはかなり早く、才能があった証拠だ。


その頃に彼女は同じ村の幼馴染で3つ年上のアランと婚約する。アランはこの世界に一番多い茶色の髪に茶色の目をしていて、ひょろりと背が高い。

顔立ちは平凡だが、笑うとエクボができてなんだかかわいらしい、とても穏やかで優しい『狩人見習い』の青年である。


彼は小さい頃からマリア一筋で、5歳の頃には

「大きくなったらマリアをお嫁さんにする!!」

と宣言して、マリアの周りをうろうろしていた。


思春期の頃には周りからからかわれるのが嫌で少し逃げていたマリアも、いつも近くにいて自分を一番大切にしてくれるアランにだんだんと惹かれていき、

「アランが私と結婚するって言って回りすぎて、村に他に結婚してくれそうな人もいないから結婚してあげるわ。」

などと、素直じゃないことを言いつつも、嬉しそうにプロポーズを受けた。





そんな二人の結婚式を三日後に控えたある日、チックホックの村を災難が襲う。




もともと辺境にある村なので、森狼やゴブリンなどの魔物は頻繁に出現したが、ここ1週間程はその出現頻度が明らかに多くなっていた。

‥‥まるで何かに追われるように‥‥。





村の自警団が警戒を強めている中、それはやって来た。


‥‥バシリスク


‥‥大きいものは全長で百メートルにもおよぶ、巨大な暗褐色の蛇の魔物である。

SSランクの魔物であり、強力な石化ブレスを吐く。

さらには全身が毒であり、通った場所に触れただけでも毒になる。

特に唾液に含まれる毒は強力で、1滴触れただけで普通の人間を殺すことができる。

積極的に人間を襲うことはなく、滅多に森の奥深くから出でくる魔物ではないが、出現するといくつもの村や街を滅ぼす事態になる非常に厄介な魔物である。



不幸中の幸いにも、バシリスクの移動中の通過場所にたまたま村があっただけのようで、すぐに通り過ぎていなくなった。


しかし、被害は甚大だ。村の防護柵は破壊され、通り道になった西側付近の建物はほとんどが全壊。多くの村人は毒に侵され、井戸などの水や畑などの土も一部を除いて毒で使用できなくなってしまった。



「村の西側の被害がひどい。村全体だと、完全に石化してしまった村人が30人、怪我人も100人近いし、8割の村人が毒の状態だ。踏まれたりして死亡してしまった人も8人いるらしい。」

村の偵察に行ったアランがひどい状況を告げる。


薬の匂いがキツイため、マリアの家は村の東の外れにポツンとあり、そのためマリア達には全く被害がなかった。

しかし、村はひどい状態になってしまった。



「私がミズアーノの冒険者ギルドに向かうよ。増えた魔物の対応と、石化解除ができる解呪師と解毒ができる高位の聖職者を派遣してもらえないか掛け合ってもらってくる!!」

「レティ、バシリスクに追われた魔物がこの辺りにまだ散らばっていて危ないわ。1人で街道を行くなんて‥。」

「大丈夫だよマリア。私も一応は冒険者だし。気配察知が得意な斥候なんだから、うまく避けていくよ!

それよりも一刻も早く解呪師を派遣してもらわないと、石化が解けなくなっちゃうよ。

マリアにはマリアに仕事があるでしょ。お互いに得意なことを頑張って、村を助けようよ!」

「レティ‥。」

結婚式のために一時帰宅していた妹のレティはミズアーノの冒険者ギルドに助けを求めに馬を走らせた。




マリアと父は必死で毒消しの薬を作ったが、二人が作れる薬では症状の悪化を防ぐことしかできない。

しかし、レティが応援を連れてくるまでの間を何とかしのごうと、二人は必死で薬を作り続けた。


しかし、小さな村の薬師であるマリアの家に大量の毒消の薬草が常備してあるはずもなく‥‥


「マリア、今の状態の森に行くのは無理だ。通常よりも何倍も魔物がいるんだよ。」

「でも、もう毒消しの材料になる薬草がないのよ。

ここで薬を切らしたら応援を待てずにほとんどの村人が死んでしまうわ!!」


「じゃあ、俺が森に行くからマリアは待っているんだ。

俺なら狩でいつも森にいってるから、魔物が出ても気配を読んで逃げられるから。」

「アランはどれが必要な薬草か全然わかってないじゃない。

お父さんは足が不自由で森には行けないし、私が行くしかないのよ!いつも薬草取りに行っている場所だから大丈夫よ!」


「今の魔物の多さだと森の浅い部分でも本当に危険なんだ。」

「だからって村のみんなを見捨てられないわっ!」

「‥わかったよ‥。じゃあ、俺も一緒に行くから!

いざとなったら俺が囮になるから、君だけでも逃げるんだ。

それが約束できないなら、縛り付けてでも行かせない!」

「アラン‥。ごめんなさいね‥。」


「いいよ‥。普段は素直じゃないし暴れん坊だけど、いざって時に自分より周りを大切にする君の優しさに俺は昔から惚れてるんだから。」

「アラン‥最後の言葉に免じて前半は聞き流してあげるわ。本当にありがとう。大好きよ。」




‥‥この後二人は森で変態‥‥改め、村の救世主を拾うことになるのだった。

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