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滅びた帝都

最寄りの街、ソルトエンドがすっかり古代遺跡になってしまっていたため、1人と1匹はさらに北に向かって進む。


記憶にあるかぎりの街に寄るが、全てただの森か、森に埋まった古代遺跡になってしまっていた。仕方がないので途中で一泊野営をして、さらに北に進む。




辺境オブ辺境である我が家を出て1日半たった頃には、出てくる魔物も弱くなってきたので、襲いかかってくる分だけビッキーの上から聖光弾でぶっとばす。

弱いとはいえ辺境の魔物なので、素材を売ればそこそこになるのだが、特に金に困っている訳ではないので無視して先を急ぐ。


「街道も埋まっているし、一体なにがあったんだ‥。この辺りは森じゃなくて一面の小麦畑だったのに‥。」





さらに2時間後、1人と1匹は南部最大の都市ツモマートまでたどり着くが、そこも土と大きな岩に埋まった古代遺跡になってしまっていた。


「ツモマートの街もだめか。これは本格的に帝都までいくしかないな。帝都までいけばリリアーナがいるだろうから事情が聞けるだろ。ビッキー、悪いがこのまま帝都までひとっ走り頼む。」

「ご主人さま、そろそろ走り疲れましたわん。」


「‥帝都についたら好きな店のプリン食べれるだけ買ってやるから。」

「おまかせください、ご主人さま!!待ってろ帝都ぉぉ!!」

「っておい、急に走り出すな!おちる!!」


「待ってろプリンーー!わぉーーーん!!」

「いや、鳴き声おかしいだろ、お前は狐‥ぎゃあ‥‥」

「わをーーーん!!」

「なおってねぇよ!!」








シン・ガウナノシュ帝国の帝都、ガウナノシュ。

大陸南部最大の国家である帝国は、魔術大国である。中央には城があり、少し南に世界中の魔術師達が集まる世界最大の研究施設である『塔』がそびえ立つ。西の通りには魔道具屋が建ち並び、東の通りには日用雑貨や食料品などの市が賑わう。北には魔術学園などの教育機関もあり、世界中から留学生がきていた。その人口130万、世界有数の大都会である。




‥であった。








「ビッキーさんや、知らない湖があるぞよ‥。」

「お魚さんは居なそうですね。ワタシ、お腹がすきましたわん。」

「湖の水でも飲んどけ‥‥。」




帝都のあった位置には、大きな大きな湖があった。

大都会の面影はどこにもない。



「本当に一体なにがあったんだ‥。寝ている間に数年や数十年じゃあり得ないほど時間がたっているぞ‥。帝都がこんなんじゃリリアーナがどこにいるかもわからないし‥。とりあえず、誰か人を探さないと‥。」


「リリアーナさまはご主人さまと同じく不老長寿ですから、どれ程時間が経っていてもお元気だとは思いますわん。リリアーナさまですし‥。

でも、何十年も経っているとなるとワタシのお気に入りのプリン屋さんは‥パティシエ達が生きている確率は‥。

あの傑作が二度と食べられないなんてっ‥‥。

わぉーーーん!!」


「騒ぐな。ワンワンほざいてると、駄狐から駄犬にクラスチェンジするぞ。」

「ひどぃですわん‥。甘味を愛する心を理解しない変態はこれだから‥。」

「‥‥とりあえずこのまま北に行こう。一山越えれば、ベルンハルト聖王国があるから、そこまでいけばさすがに人がいるはずだ。

帝都にとりあえず着いたからアイテムボックスから出してやろうと思っていたプリンは山を越えてからだな。どうせ俺は甘味を愛する心を理解しない変態だしな。」

「わぉーーーん!!ひどぃぃ‥悪魔ぁぁ‥!!」










さらに進むこと2日。魔物は弱いながらも頻繁に出るし、森が途切れる気配はない。




「ビッキーさんや、道はまだかい。」

「おじぃさん、さっき食べたばっかりでしょ!って、冗談言ってる場合じゃないです。本当に道がないですわん。」


国境であったあたりはとっくに越えたのだが、森はひたすら深く、終わりが見えない。


「もう少しで聖王国の首都だな‥。まさか聖王国まで滅びてたりしないよな‥?」

「ご主人さま、そのセリフ、すっごくフラグっぽいわん。」

「もし人類が滅んでたりしたらどうしよっか‥。」









とりあえず聖王国の首都を目指してまた北に進む。森ではあるが、魔物はかなり弱くなってきた。



「昔はこの辺りは聖王国の聖なる加護があって魔物はいなかったんだけどなぁ‥。やっぱり滅びてたりするのか‥?」



能天気なウィリアムも、さすがにここまで森が広がっていると不安になってくる。

今はアイテムボックスに入っている料理を食べながら進んでいるが、アイテムボックスの食料は無限ではない。

ウィリアムにはこれが尽きた時に料理を含めた生活能力が皆無な自覚がある。

ビッキーの手は肉球なのでもちろん戦力外だ。


「そのまま食べられる食料はあと1ヶ月分くらいだ。調味料や素材そのものならまだまだあるが‥。魔物の解体とか400年くらいやってないけど肉にして食べれるかな‥?」


「ご主人さま、ご主人さまの料理の腕は壊滅だわん。ただ肉を焼くだけでも残飯のできる予感しかしないわん。」


「‥‥ビッキーの餌に丁度いいな。」


「拒否権を行使するわん!!」


「じゃあ生肉食ってろバカ狐!!」







「‥‥ぅぁぁ‥‥‥!!」


じゃれ合いながらも、野営に向けて焚き火の準備をし始めたその時、遥か遠くから野太い男の悲鳴が聞こえた。




「人いたぞ!!確保に向かう!!」


「ガッテンでございますわん!!残飯よりましなご飯作れる人確保ぉぉおお!!!」



ウィリアムはビッキーの背中に飛び乗ると、悲鳴のした方に向かって全力で走り出した。

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