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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界の帰還者

作者: 大介丸

暗い路地裏を2人組の男性が疾走していた

「 『ギルドマスター』 急げよ!! どうやら『大物』が『転移』してきた

みたいだぞ」

中年男性が忌々しい口調で、若い男性に告げた。

「その呼称で言うのやめてくれませんか!? あっちでは『ギルドマスター』

ですが、こっちでは俺は一般市民なんですよっ!!」

若い男性がそう反論するように答える。

2人組の男性の服装は、見たところ別々の職業に就いている様だ。

中年男性は、白いつなぎ服。

若い男性は、喫茶店の従業員らしき制服。

「奇遇だな。俺もだ。『ギルドマスター』」

中年男性が短く告げた。

「・・・・・・・・・・」

若い男性は、その返答を聞いて、ただ沈黙をする。

恐らく、どう反応したらいいのか迷っているのだろう。




「で、『ギルドマスター』 この雄叫びには気づいているか?」

中年男性は、そう尋ねながらゆっくりと立ち止まる。

二人が向かっている大通りから、空気を震わすほどの雄叫びが響いてくる。

「この雄叫びからして、『巨人』ですね。『使徒』クラスでは無いとは

思いますが」

若い男性は、苦々しい表情を浮かべながら応えた。

「さすが、『ギルドマスター』 雄叫びを聞くだけでどの種類まどのクラスまで

判断できるとは脱帽するよ」

中年男性は、凄まじい笑みを浮かべながらそう応え、携帯電話を懐から

取り出す。




「・・・本気でその呼び名を『こちらの世界』で続けるんだったら、週末に『あっちの世界』に戻った時、冒険者ランク下げますから覚悟しておいてくださいよ」

若い男性は、不機嫌な声で告げる。

「ならば、またあのランク上げの喜びと素晴らしさを体験出来るということだが、その前に他の連中にも伝令回さなきゃならんな。『ギルドマスター』」

中年男性はそう応えながら、携帯を弄る。

「・・・・誰を呼ぶんですか? 『前衛』? 『回復職』? そとれとも

『遠距離職』?」

若い男性は、苦々しい表情を浮かべながら尋ねる。

「手野に伝令回す」

中年男性が即答した。

「『回復職』誰もいないじゃないですかっ!? いるのは『前衛』と『遠距離職』ですよっ」

若い男性が、驚愕した表情を浮かべながら応える。




「 『ギルドマスター』 一つ忘れている事があるぞ? 『こちらの世界』で

『能力』を解放出来るのは、1分間だぜ? そんなタイムレースに『回復職』が何処の役に立つんだ?」

携帯を耳に当てながら、中年男性が告げた。

「その言葉をそのまま『回復職』の方に言ったら、後ろから刺されるますよ」

若い男性が半分あきれた表情を浮かべながら応えた。

しかし、その若い男性の意識は、すでに大通りから響いてきている雄叫びに

向けられていた。




世界にその名を轟かせている日本を代表する大企業グループ『手野グループ』

27階建ての高層ビル内にある会議室内では、形容しがたい空気が漂っていた。

それは、会議に出席している重役達の醸し出している空気が原因だった。

出席大多数は困惑気味。

その少数の一部重役は、極度の殺気と緊張感。

その原因も、手野当主が受け取った電話が原因だ。




皆米みなごめ慶崎けいざき家造坊けぞうぼう

『ギルドマスター』より召集だ。大至急戦闘装備を調えろ!

『あちらの世界』より『巨人』が『転移』してきたようだ」

手野当主は、携帯電話を切りながら静かに告げる。

「 全員が『前衛職』と『遠距離職』ですが・・・」

一人の眼鏡をかけた重役が椅子から立ち上がりながら尋ねた。

「 『回復職』の者も呼ぶべきではないでしょうか」

日焼けをした肌の重役が同じく立ち上がりながら尋ねた。

最後の一人は、無言で立ち上がる。

その様子を、いったい何の事を話しているのか、まったく理解できずに困惑している。

「 『ギルドマスター代行代理』殿からの伝令だ。

おそらく早めに騒動を終わらせたいのだろう。それにあの人は、あれでも

『竜殺し』だ。状況を誤る事は無い」

手野当主はそう告げながら立ち上がる。

「すまないが、緊急案件が発生したため、定例報告の続きはのちほど連絡する」

手野当主は、さらにそう告げると急いで会議室を出ていく。

その後には、3人の重役も続いていくが、残されたのは状況がわからない、

ただ困惑した出席者だけが残された。





暗い路地裏を抜けた先には、修羅場が広がっていた。

アスファルトの地面には、人の血と思われる真っ赤な液体が飛び散っている。

その修羅場を作り上げた元凶は、怒り狂った様に暴れていた。

ビル六階建てと同じぐらいの身長で、強靭な巨躯を誇る隻眼の巨人。

手には棍棒を持っている。

道路では、引っくり返された車や、民家や商店に突っ込んだ車両が二十メーター

置きぐらいに赤黒い炎を上げている。

今も、隻眼の巨人が立ち往生している一台のワゴン車に棍棒を叩きつけていた。

「 『前衛職』と『遠距離職』で本当にどうにかなると思いますか?」

若い男性は、その光景を眼の当たりにして唸る様に尋ねる。

「なるさ――――――――――現に、もう現場にきているぞ」

中年男性が肉食獣の様な笑みを浮かべながら応える。




確かに中年男性の言う通り、隻眼の巨人に向けて人らしき姿の影が斬りかかっていた。

人影は、2つ。

1人は日本刀の様な武器を手に、疾風の様な動きで隻眼の巨人を斬り付けて

いる。

もう一人は両手に短剣を手に、地面に連打される棍棒をひらりひらりとかわし

ながら、斬り付けている。




「あんなに飛ばして、『能力』を解除してやがるぜ、『ギルドマスター』」

中年男性が、その光景を見て告げる。

「・・・そうでもしないと、手野本社からここまで来るのに1時間ほどかかりますよ」

若い男性は、そう言いながら辺りを見渡す。

「 『遠距離職』はきているか、『ギルドマスター』」

中年男性が、軽い準備運動を行いながら尋ねる。

「・・・もうきてますよ。あのビルから弓攻撃するみたいです。それと・・・

いい加減にその呼び名をここで使うな」

若い男性は、最初の方は何処か穏やかに近い声だったが、最後の方は冷酷で

ドスのきいた声で告げる。

その声は、どんな猛者でも震え上がりそうな口調だ。

「別に気にする事はないだろ 『ギルドマスター』 そんじゃ、俺もちょい、

行って来るよ」

だが、中年男性は、それを聞いても何処か飄々とした様子で受け流し、巨人に

向けて疾走する。

「・・・・・・」

若い男性は憮然とした表情を浮かべながら、『遠距離』がいる近くの

ビルに視線を向けた。



七階建てビルの屋上には、日焼けをした肌の重役と眼鏡をかけた重役が立って

いた。

その2人は、古代文字のような物が刻まれている長弓を構えている。

そのビルから巨人までは、距離的にもかなり離れており、矢が当たりそうにも

無いのが、素人でもわかる事だろう。




だが、一斉に放たれた矢は直線軌道で鋭い風切り音を立てて、隻眼の巨人の脚や

腕に突き刺さる。

突き刺さった痛みなのか、隻眼の巨人は空気を震わすほどの雄叫びをまた発する。

日焼けをした肌の重役と眼鏡をかけた重役は、機械的とも言える動きで二射目

の準備をする。


「( 『回復職』は、呼ばなくていいか)」

若い男性は帯で連絡を入れようとしていたが、弓矢が突き刺さる光景を見て、

それを思い止まめた。

「( 『回復職』を呼ぶにはいいが、確かに『こちらの世界』の職業柄、厄介か)」

若い男性が、決断するのに迷う要素が一つだけあった。

『回復職』のこの世界での職業が、どういうわけか、政治家や超有名アイドル

と呼ばれる職業なのだ。

『あちらの世界』では、かなり酷使して使い倒しているのだが、『こちらの

世界』の生活では、まったくて言っていいほど接点がないのだ。

そう考えている内に、隻眼の巨人が討ち取られた様子だった。

誰が止めを刺したのかは、判断出来ない。

ただ、中年の男性が勝利の雄叫びを発しているのがわかる。

「・・・・・本気でランク下げるか」

若い男性が、それを見て静かに呟く。





―――――この世界では、ごくまれにライトノベルの様に一つの異世界へと転移させられる事がある。

それらは、年齢、性別、職業に関係なくだ。

原因はわからないが、一度その世界へと転移させられると、元の世界との行き戻りが可能になる。

また、これも具体的には解明はされていないが、どういう訳か異世界で

得た特別な力をたった一分間という時間制約で、一日三回まで使える。



その転移先の異世界で、どういう訳かこの若い男性は、同じ境遇(?)の人を

基盤に出来上がった、『冒険者ギルド』の『ギルドマスター』の役職に就いて

いる。

その様な人々を、この世界では『異世界の帰還者』と呼称する。






この作品内に登場した手野グループは、交流させて頂いている

尚文産商堂先生のご許可を頂いて使用させて頂きました。



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