レイヴンとレイカ 2
「本当にこいつがあの博士の娘なんだろうな。」
「んーんーっ!!」
「ああ、間違いないっす。校門前で、『レイカばいばーい!』って、皆に言われていたっすから。」
「それにしちゃ、髪の色が違うが。博士も銀髪だったっけか?」
「そんな細かいこと気にしてちゃ兄貴、人さらいなんてやってけないっすよ。間違ってたらまたさらえばいいじゃないすか。」
「ま、まぁ。それもそうだな。」
「んーんーんーっ!!」
後部座席には、銀髪ツインテールの少女が目隠しされた状態で、手足をロープでぐるぐると縛り付けられていた。
口にはタオルが猿ぐつわとしてはめられていて、声が思うように出せないのか、くぐもった音がかすれでるばかりだ。
「お、おい。あと15分しかねぇぞ!もっと急げ!」
「分かってますって!!さっさとこのクソガキ引き渡して、金もらってずらかりましょう兄貴!!」
「んーんーんーっ!!」
「うるせぇ!ガキ!!少しは黙ってろ!」
「んーんーんーっ!!」
「蹴んじゃねぇ!大人しくしてろ!!いいかチビガキ。恨みなんて何もねぇが、これはビジネスだ。悪く思うなよ。」
スカートがずりあがり、艶やかで細い太ももが露わになる。
目隠しに、猿ぐつわ、銀髪ツインテールに乱れた制服。男の中に小さな欲情が膨れ上がり、生唾をごくりと飲み込んだ。
「末端の俺らには全くもって知らされていないが、お前さんは高く売れるんだとよ!」
「んーッ!!」
「もしくは、あんなにたくさんいるガキの中からお前だけを指定してきたから、依頼者はよっぽどのロリ好きな酔狂か、何かに違いねぇ。」
「・・・あ、兄貴?」
「まぁ、色気のねぇこんなガキでも10年かけて調教すれば、いい女になるってもんかねぇ。」
男は助手席から振り返ったまま、銃口でスカートをめくり上げた。
覗き込むまでもなく、真っ白い雪原のような三角形の布きれが無防備に露わになる。
少女は身をよじるようにして抵抗するも、縛られた手足のままでは出来ることも限られてくる。
「んーんーんー!!」
頬に触れると、ビクンと体を震わせ呼吸が荒くなる
それに合わせるように、男の体も生理現象の如く背筋に電気が走った。
「・・・ここ何日も久しぶりだからなぁ。ちょっとぐらい手付けたって、価値が下がるもんでもないだろう。むしろ今のうちによくほぐしておいた方が、お嬢ちゃんにとっちゃ好都合じゃねぇか・・・。」
鼻息荒く、男の目の色がすっかり変わった。そのまま、スイッチが入った状態で、シートベルトをしゅるりと外し、後部座席へ移動を始めた。
「あ、兄貴!!兄貴!!」
――と、その時、仲間の狼狽した絶叫があがった。
「なんだよ!てめぇは黙って運転出来ねぇのか!後でしっかり交代してやっから静かにして――」
運転席の男に激を飛ばし、そして正面を見たその時、先ほどの色欲が一気に引いていった。
道路の真ん中に、ぽつんと立ちすくんでいる男がいた。
小脇に抱えているのは、カバンか何かに見える。
もう片方は――はっきりと見えないが小型銃の類だった。
「な、なんだぁてめぇ!」
聞こえるはずもない罵声が車中に反響する。
そして、それに呼応するかのように、道路上に佇む男が発砲した。