占い
皆さんは、織姫と彦星の話をご存知だろうか。勿論全く知らない人などは非常に珍しいが、ちゃんと知ってる人は意外と多くないのではなかろうか。
簡単に説明すれば、天帝という神が星空を支配していた頃、天の川の西側には織女(織姫)という天帝の娘が、東側には牽牛(彦星)という牛飼いの青年が住んでいた。
織女は機織り(はたおり)の名人で、織女の織る布は雲綿と呼ばれ、機能性も見た目もとびっきり素晴らしく大人気でした。牽牛も天の川で毎日牛を洗ったり餌を与えたりで、二人とも大変働き者でした。
ある日働いてばかりの織女を心配した天帝が織女と牽牛を引き合わせ、二人は結婚することになりました。
結婚してしまうと二人は全くはたらかなくなり、雲綿は行き渡らず牽牛の牛も痩せて次々倒れてしまいました。
「いい加減働いたら?」と言っても、明日やるよーというばかりで少しも働かない二人に天帝は腹を立て二人を天の川の両岸に引き離してしまいました。そして二人には年に1度、七夕の日だけ合うことを許されたというお話。
これは、そのお話から少しもズレた、新しい織女牽牛伝説。
まだ織姫と彦星が毎日一緒に居た頃。一度だけ占い師のお婆さんが川辺で遊んでいる二人に声をかけた事がありました。
「お二人さん、まだ夫婦になったばかりじゃろう?わしが二人の行先を占ってさしあげましょう」
一瞬ポカンとした二人でしたが、すぐに喜んで占ってもらう事を決めました。
しばらく目を瞑り真剣に何かを念じている様子の占い師が彦星の目を見て口を開き放った言葉が。
『これから三百ほど陽の昇りし後の文月。仏は再び鬼へと姿を変え、鬼から放たれし龍に飲まれ汝の身を喰らうだろう』
口を閉じた占い師は俯き何かを考え込む様子の彦星から織姫へと視線を移すと、深い藍の石を織姫へ手渡し
「この石が、汝が失いし二つの内1つを守ってくれよう。使い時に注意しながら、大切にしなさい。」
そう言うと黙って去っていってしまいました。
口を閉ざして占い師の言葉の意味を考え込む彦星に、織姫は「今考えていても仕方が無いよ」と声をかけると、彦星の表情も和らぎいつも通りまた二人で遊び始めました。
ただそんな二人の姿をこそり見ながら、眉間にシワを寄せる織姫の父、天帝の姿がありました。