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自サイトにてキリリクとして書いたものです。


お題は「野球部の先輩と後輩で後輩は片思い中」でした。

「じゃ、じゃんけんで決めよう。」

狭い部室から逃れ、温暖室にやってきた私たち5人は真剣に右手を差し出していた。

「じゃーんけんポン」

うぅ~ちょきを出した私が憎い・・・

世間はゴールデンウィーク真っ只中

なのに、私はなぜか学校へ・・・

目の前の花たちに水やりを励んでいた。

なぜこうなったというと、数ある部活の中で園芸部に所属している私。

園芸部の活動のおかげで校内には花たちがたくさん咲いていた。

ここまでするのに、並外れた努力が必要だったと聞いている。

そんなわけで、花たちが咲いたから終わりということもなく毎日のように草抜きはもちろん水やりをしなければいけない。

むろん長期休暇も例外ではない。


高校はじめてのゴールデンウィーク・・・

じゃんけんに負け、水やり担当となってしまった私。

せっかくの休みに制服に袖を通してぶつぶつ文句をいいながらも、やっとゴールデンウィーク最終日。

あーぁ、明日から学校が始まっちゃうよ。

「ふぅ~」

一通り、水やりも終わり額の汗を手で拭い空を見上げた。

「いぃー天気」

この空をみることができたのなら水やりも苦にはならないかも・・・

「「きゃぁ~」」

どこからともなくいきなりの黄い声・・

なに?人がせっかく浸っている時に・・・

私は、手に持っていたホースを地面に置き声が聞こえるほうに向かった。

カキーンッ

「いけぇ~ちゃんと周りを見ろっ!!」

花壇から少し離れたところにあるグランド。

声はここから聞こえているようで主である数名の女生徒がフェンスにかぶりついていた。

その横のベンチでは監督らしい人物が叫んでいた。

・・・野球部?

「あと、一点だ。絶対にこれ以上踏ませない。」

攻撃が終わったらしくキャッチャーが叫んでいた。

周りに集まる選手も口々に絶対に負けないなど言っていた。

ぱぁ~と目の前が明るくなった。

いままで感じたことのない感情だった。

気が付くと私はずっとキャッチャーに見入っていた。

あの日から1ヶ月・・・

私は、日曜など自分から進んで水やり当番になっていた。

あの人に会うために・・・

そしてわかったこと。

一学年上で特進科の大前先輩

あの時感じていた感情が恋だとしるのには時間がかからなかった。

「それってその人のこと好きなんじゃないの?」

なんとなく自分が自分じゃなく感じて私は友達に相談した。

そこで一言言われた。

そっか・・・これが好きって感情なんだ。

そう思うとどんどん意識してしまいもっと先輩のことを好きになっていた。

「付き合ってください。」

いつものように放課後は教室から花壇まで一直線

その途中、校舎の陰にある水飲み場から女の人の声が聞こえた。

いつもなら、気にせず通り過ぎる。

でも今日は出来なかった。

私から見えたのは告白している女生徒の背中。

そして告白されている男生徒の正面。

おかげでばっちり目が合ってしまい私は逃げれなかった。

「ごめんな、好きな奴いるから付き合えない。」

女生徒の方は下を向いたままだから気が付いていないがその男生徒は私を見据えたまま答えていた。

「そっか、ありがとう。」

女生徒はそう言うと、そのまま真っすぐ校舎に消えていった。

私に気付くことなく・・・

「ばっちり聞こえたよね?」

女生徒が去っていた入り口を見つめていると声をかけられた。

・・・忘れてた。

一瞬のことなのに、先輩のこと忘れていた自分がなんだか恥ずかしくなった。

「1年の何ちゃん?」

先輩は、私の持っているバッグを見て学年を確認したようだ。

「佐伯亜希・・・デス」

いままで遠くから見ていただけの先輩が目の前で私に話し掛けている。

そう思うと心臓が爆発するんじゃないかというくらいドキドキしている。

「はい、これ口止め料ね。」

先輩は右手を差出し、左手で内緒だよといいたげに、口元に指を一本立てた。

先輩の右手から受け取ったのはあめ玉だった。


「亜希ちゃん、今日の分ね。」

あの日から、先輩は口止め料といって毎日放課後グランドにいく前にあめ玉をくれる。

私は毎日のように放課後が楽しみになっていた。

密かに想いを寄せている先輩から話し掛けられるだけでなくあめ玉がもらえるのだ。

別にあめ玉がほしいわけではなくそんな先輩から何かをもらうということがうれしいのだ。

毎日のように貰っているあめ玉は自分の部屋の小物入れに入れている。

せっかく先輩から貰ったものを食べちゃうのはもったいないから。


「孝明?監督が捜してたよ。」

いつものように放課後、先輩がグランドにいく途中あめ玉をもらい少しだけ話をしているとグランドの方からジャージを着た女生徒が走ってやってきた。

先輩はすぐにまたね。と言ってその人と一緒にグランドに向かっていった。

あの人、先輩を呼び捨てにしてた・・・

もやもやした気持ちのままとても仲のよさそうな二人の背中をずっと見つめていた。


「遅くなったな。佐伯送るよ」

校舎から外に出るといつも元気がある学校が暗く元気なく見えちょっと淋しく感じた。

「大丈夫ですよ、ここから近いし」

昇降口でぼぉーと外を眺めていると部長が声をかけてきた。

「ダメだよ。僕のせいで帰るの遅くなったんだから」

生徒会役員もしている園芸部長

帰りに偶然居合わせた私に声をかけた部長の一言で周りにいた生徒会役員たちが私を巻き込んだ。

結局仕事を手伝い、気が付くと時計の針が19時を指していたのだ。

「それじゃ、また明日な。」

駅の前まで送ってくれた部長と改札前で別れホームへ向かった。

誰かが一緒にいれば、考えなくてすんでいたが一人になった途端に今日先輩を呼び捨てにしていた人のことを思い出した。

・・・呼び捨てってことは仲良いんだよね。

もしかしたら彼女かな。


「お疲れさまでした。」

ホームに電車が入ってくるのと同時に体育会系の挨拶が耳に入った。

特に気にするワケもなく、私は電車に乗り込み入ってすぐのドアの近くに寄り掛かった。

「先輩たち、相変わらず仲いいよな。」

一緒に電車に乗り込んできた一緒の高校らしい学生が呟いていた。

この時、なんでホームの方を見てしまったんだろう・・・

「あれで、付き合ってないなんて言っても誰も信じないよな。」

楽しそうに話している男生徒たちを尻目に私は視線を外に向けた。

そこで私が目にしたものは、閉まったドアの向こう側に仲良さそうに肩を並べているカップルだった。

・・・ぅそ

電車が動きだす前に、目を凝らしてもう一度みてもやっぱり先輩だった。

そして隣には、彼女がいた。

先輩を呼び捨てにしていた人が・・・


「亜希ちゃん、ハイ今日のあめ玉」

にっこり微笑み手を差し出してくれる先輩

しかし、私はいつものように喜んでその手をとろうとはしなかった。

「亜希ちゃん?」

なかなかあめ玉を受け取らない私に首を傾げながら下を向いていた顔を覗き込んできた。

「も・・・です。」

私は先輩から逃れるように一歩足を下げ小さな声で言った。

「どうしたの?」

声が小さ過ぎて先輩の耳には届かなかったようだ。

「・・・もう、あめ玉はいらないです。

コレがなくても言いふらしたりしませんから」

目の前にあった先輩の気配がなくなったのがわかった。

「わかった、ゴメンな・・」

いつもより少し低い声に私は驚き顔をあげた。

ソコには、いつもニコニコしている先輩でも、プレー中の真面目な顔をしている先輩でもなかった・・・

なんで、そんなに悲しそうな・・苦しそうな顔しているの?

なんだかいたたまれなくなり、私は逃げ出した。

夢中であの場から離れた先輩といっぱい話をしてきた花壇から・・・

気が付いたら、先輩と初めて話をした水飲み場にいた。

ここで先輩と話すようになってまだ、そんなに1ヶ月も経っていないのに遠い昔のような気がする・・・

脳裏にはさっきの先輩の表情が離れなかった。

これでよかったんだ・・

先輩にはかわいい彼女がいるんだし。

きっと、彼女に知られたくなくて私に口止めしていたんだろうな。

それほど、彼女のこと大切なんだ。

先輩のことは諦めよう。

先輩には好きな人がいるってことは知っていたがまさか彼女がいたなんて・・・

もう、苦しいのはたくさんだ・・・


「どうしたの?」

じぃと、先輩が立っていた場所を見つめていたら後ろから声を掛けられた。

ぱっと振り向くと不思議そうに首をかしげているジャージを着ている女生徒・・もとい先輩の彼女

「ちょっ・・大丈夫!?」

ぽっと・・地面に水滴が一粒・・また一粒・・・と、染めていった。

雨?と思ったが、すぐに違うことがわかった。

下に落ちた水滴は私の頬を伝っていた。

「沙也加、キャプテンが・・何やってんだ?」

何で泣いているのか自分でもわからずとりあえず両手で顔を覆った。

偶然は必然というが、これはどうなんだろうか・・

私は、声を聞いてビクッとしてしまった。

そして、顔から両手を外せなくなっていた。

「何もしていないわよ。孝明パス」

そういうと沙也加と呼ばれた女生徒は走ってその場を離れた。

うそ・・ちょっと彼女のくせに他の女と二人っきりにさせたり普通しないでしょう!!

そう叫びたいのを我慢し、ゆっくりその場から離れようとした。

「おい、大丈夫か?・・・亜希ちゃん?」

顔を覆っていたので私だとわからなかったみたいだが、私だとわかると冷静だった先輩は慌てだした。

「一体、どうしたの!!コレ使ってまだ使ってないタオルだから・・沙也加と何かあった?」

そっと、差し出された先輩が持っていたタオル

私は、首を横に振った。


「大丈夫です。ほっといてください。」

先輩に聞こえるように、どれでも最小限に小さな声で言った。

こんな姿を先輩に見られたくない。

「ほっとけるわけないだろう?」

先輩は無理やり私の手にタオルを押し付けた。

「別に、話せとはいわないけど、傍にいるつもりだよ。」

私の視線にあわせるように中腰になった先輩。

いつも見上げていた先輩の顔が、今は私の視線の下にある。

好きでいるのを辞めよう・・さっきそう思ったのに、先輩の顔を見たらそんな思いは吹っ飛んだ。

「私・・先輩のこと好きです。好き過ぎて泣いているんです。」

気が付いたら言っていた。

でも、これで先輩はもう私に話しかけなくなる。

そう思うと、ほっとした気持ちと悲しい気持ちが葛藤していた。

いつまでたってもさっきみたいに先輩の気配が消えることはなかった。

勇気を振り絞って、瞑っていた目をゆっくり開けた。


「えっ・・」

目の前に目を大きくさせびっくりしている先輩がいた。

そりゃーいきなり驚くよね。

こんな時だが、意外と冷静でいる自分に驚いてしまう。

それでも、先輩からの答えはなく私はその場からさっきと同じように逃げ出そうと踵を返した。

が、逃げることは出来なかった。

「待った。俺、嫌われてんじゃないの?」

しっかりと私の腕を捕まえてきた先輩

やっと発せられた先輩の言葉。

私は、言葉が出ずに首を横に振った。

「・・・俺は、ずっと気になっていたんだ。毎日のように水やりをしている君の後姿を見て・・・きっと話すことなんてないと思っていたんだ。そしたら、偶然あの時に居合わせて・・・チャンスだと思った。亜希ちゃんと話が出来ると思っただから口止めって言う口実を作って毎日話しかけていたんだ。俺も亜希ちゃんのこと好きだよ。俺と付き合ってくれますか?」


2007.7.3に掲載していたものです。

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