台本小説
舞台の中央にテーブルが置かれている。
二人の人間がいる。テーブルに向かい合って座っている。
先生「問1はできましたか?」
生徒「できました。」
生徒紙を渡す。先生がそれを見る。
先生「ふうむ、正解です。」
生徒「やった。」
先生「では問2をしましょう」
生徒「はい」
生徒が何かに書き付けるまねをする。
生徒「できました」
先生「ふうむ、正解です、では問3をしましょう」
生徒「やった。」
生徒が何かに書き付けるまねをする。
生徒「先生問3が分かりません」
生徒が先生にプリントを手渡す
先生「ふうむ、先生も分かりません」
生徒「分かりました。」
生徒が何かに書き付けるまねをする
生徒「できました」
生徒が先生にプリントを渡す
先生「ふうむ、正解です。」
生徒「先生、問178までもうできました。見てください」
生徒が先生に数枚プリントを手渡す。
先生がそれを見る
先生「ふうむ、正解です」
舞台袖から母親役が出てくる
母親は、ドアをノックする。
母親「あきらちゃん、お夜食持ってきましたわよ、ちゃあんと勉強はなさっていて?」
生徒が振り向く
生徒「はあいちゃあんと出来ていますよ」
母親は部屋に入る。絶叫する。
母親「きゃあああああああ、あなたはだれですか、なんなんですか、なんなんですか。んんあんですか。」
先生「ああ、奥さん、お構いなく。私は紅茶が苦手なもので。」
生徒「先生問898ですけれど、わからないんです。」
生徒がプリントを手渡す。先生がそれを見る母親は小さな声で叫び続けている。
先生「ふむ、私も分かりません。」
先生は生徒にプリントを手渡す。
母親「誰なんですかあなたは誰なんですかどこから入ってきたんですか、答えてくださいねえココは人の家なんですよ、答えなさい。」
生徒「おかあさんうるさいですよ。」
先生「奥さんおかまいなく」
生徒がプリントを手渡す。先生はそれを受け取る。
先生「はい、意外と早く終わりましたね。それにしても、ウジ虫についての観察レポートは例文にしては上出来だったでしょう。」
生徒「僕はその論文はとても好きでしたけれど、英訳するにはちょっと文法がむずかしかったですね、話題が話題だから張り切って訳しましたけど。」
その間、母親は口をおさえて、立っている。
母親が携帯電話をとりだして、話をする。
母親「警察ですか?はい、あの、家の中に先生がいるんです。」
先生「奥さん、あきらさんは相当見込みがありますよ、第三中学はかっくじつでしょう、将来は博士かもしれんですなあはっはっっはっは。」
生徒「先生ったらまたご冗談を。」
母親「はい、家の中に先生が、何の先生?何の先生でしょうか?分かりません。ねえあんた何の先生なのよ答えなさい」
先生「分かりません。」
生徒「先生ったらまたまたご冗談を」
母親「何の先生か分からないんです。助けてください。助けてください。みんじふかいにゅう!?、違うんです、私は関係ないんです。家に先生が来ていたんです。」
先生「僕は紅茶が嫌いだなあ。」
生徒「僕も紅茶が嫌いになりました。」
先生「問234にそっくりだね。」
生徒「あれにはびっくりしたなあ」
先生「階段の踊り場から飛び降りたんだ」
母親は舞台の端まで歩き、そして端まで歩く。それを反復する。
生徒「階段の踊り場からとびおりたんだ」
先生「きみそっくりだね。」
生徒「きみそっくりだね。」
先生と生徒が笑いあう。
母親が退場する。
警察役の人間が3人ほど舞台袖から冗談を言い合いながら登場する。
警察1「んでさあ、つっこんでたら、ぽんってぬけちゃってさあ」
警察2「まじうける」
警察3「まじうける」
警察2「でさあ、おれすげえびっくりしてさあ」
警察1「まじうける」
警察3「まじうける」
警察3「でさあ、女に怒鳴っちゃったんんだよね、ゆるいって」
警察2「まじうける」
警察1「まじうける」
警察1「んんんんんんんんんんんぶあああああ」
三人が笑いあう。笑いながら歩き、先生の両脇を二人でつかむ。
先生「でね、問9724は分かるかい?」
先生は警官二人に両脇を固められている。残った警官一人がピストルで先生の頭を打つ。
先生が頭をうなだれる。
先生の両脇をつかんでいた警官二人は手をはなす。
警官1「でさ、まじうけたんだけど。」
警官2「まずうける」
警官3「まぞうける」
警官3人は笑いあう。笑いながら、舞台袖に歩いていく。
警官2「豚ににてたんだよ。」
警官2「まじうける。」
警官2「まじうける。」
三人は退場する。先生はいすに座っている。が死んでいるので机に突っ伏している。腕はだらりとたれている。
生徒「問1はできましたか?」
生徒「できました。」
生徒紙を渡す。。
生徒「ふうむ、正解です。」
生徒「やった。」
生徒「では問2をしましょう」
生徒「はい」
生徒が何かに書き付けるまねをする。
生徒「できました」
生徒「ふうむ、正解です、では問3をしましょう」
生徒「やった。」
生徒が何かに書き付けるまねをする。
生徒「先生問3が分かりません」
生徒「ふうむ、先生も分かりません」
生徒「分かりました。」
生徒が何かに書き付けるまねをする
生徒「できました」
母親の声だけが放送される。
母親「あきらちゃん、お夜食が出来ましたよ。」