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第一話「三年生になる前に」

「いつの間にか、いつもつるんでる仲良しJK達のお話」のセカンドシーズン。

高校2年生3学期からお話が始まります。

 二年生最後の定期テストが終わった。

 三年生はすでに自由登校になっていて、校舎の中はいつもの放課後よりずっと静かだった。廊下を歩いていても人影は少なく、教室から聞こえてくる声もまばらだ。

 

 今日は美化委員会の会議があって育美は帰りが遅くなると言っていた。僕は彼女を待つため、時間つぶしに図書室へ向かった。

 図書室では、小森さんが貸出受付の当番をしていた。カウンターの向こうには、見慣れない一年生の男子も座っている。

「小森さん、お疲れ」

「内田君、図書室に来るなんて勉強ですか?」

「いや、今日は委員会で育美が遅くなるから待たせてもらおうと思って」

「な~るほど、いいですよ。人も少なくて暇ですから」

 小森さんはいつもの穏やかな笑顔で挨拶を返してくれた。僕は二人に軽く会釈をしてから適当に一冊の本を選び、窓際の椅子に座る。机の上に本を置いたまま、僕は窓の外を眺めた。

 こうして静かな校舎にいると、文化祭が終わってからのことを自然と思い出す。

 

 文化祭で一緒に実行委員をやって、僕と育美の付き合い方はより深くなった気がする。

 付き合い始めた頃は、お互いに少し照れくさいところもあったけれど、育美が何かにつけて僕を誘うことも普通になっていた。

 教室では女子五人組の誰かに絡まれることが多いけど、帰りは二人でというのが普通だしね。

 

 クリスマスは、女子達はカラオケに行って楽しく過ごしたと聞いた。僕らは寒い中、横浜まで出かけてコスモクロック21に乗ったり山下公園を歩いたりして、二人でクリスマスを楽しんだ。

 年が明けて、お正月には女子五人組に僕と育美、石田の八人で初詣に行った。その後、僕と育美は彼女の家にお邪魔することになっていて、かなり緊張していた。

 育美のお母さんは、とにかく明るくて陽気な人で、見た目は育美で中身は種村じゃんとか思ったし、姉妹と言われても違和感がないくらい若々しい人だった。

 お父さんは穏やかそうな人だったけれど、お母さんから「二人はどこまでいったの?」と聞かれたときには、僕と育美と同じくらい慌てていた。

 結局、お父さんもお母さんも僕たちのことを温かく受け入れてくれて、「これからも仲良くね」と言ってくれて、僕はようやく肩の力を抜くことができた。

 

 その次の思い出は二月で、バレンタインデーに本命チョコが一つ、義理チョコが五個。今までで一番たくさんチョコをもらった。

 家に帰って、姉からもらったチョコの数を聞かれて正直に答えたら「お前、何をした?」と真顔で聞かれた。

 彼女ができたこと、仲のいい友達が増えたことを説明すると、姉は呆れたように笑っていたけど、結局ホワイトデーのお返しをどうするかまで相談に乗ってくれた。

 

 そんなことを思い出しているうちに、図書室の時計が目に入った。

 そろそろ育美の委員会も終わる頃だろう。そう思っていると、図書室の扉が開いた。

「雄太、お待たせ」育美はそう言って、僕の隣まで歩いてきた。

「お疲れ。じゃあ帰ろうか」

「うん」

 二人で小森さんに声をかけて図書室から昇降口へ向かう。

 校舎を出ると、まだ冬の冷たい空気が残っていた。二人で並んで歩いていると、帰り道のコンビニの前に見覚えのある二人がいた。

 

「お、内田っち」肉まんを片手に、種村がこちらに気づいて手を上げた。その隣では石田も肉まんを食べている。

「二人とも、まだ帰ってなかったんだ」

「部活の帰り。腹減ったから買い食いしてる」

 僕と育美は二人のところへ近づく。すると、種村が何かを思い出したような顔をした。

「そういえばさ、初詣の後、二人はどっか消えたよね?」

「え?」育美が不思議そうに種村を見る。

「内田っち達は、その後どうしたの?」

「僕らは育美の家に行ったよ」

「へえ」種村がニヤニヤしながら僕を見る。

「で、何したの?」

「何って……」僕は答えに困っていると育美が突っ込んできた。

「両親に雄太を会わせたのよ。そう言う敦美ちゃんはバレンタインデーの日、二人はすぐに帰っていたよね?」

「え?」種村の表情が固まった。

「いや、だから……別に何も……一緒に帰っただけだって」種村の顔が見る見るうちに赤くなっていく。

「……種村?」

「なんでもない!」種村は慌てて顔を背けた。

 石田もなんだか落ち着かない様子で、肉まんを持ったまま視線を泳がせている。

「いやいや、ただ一緒に帰っただけ。ホントそれだけ」

「ふーん……そうなんだ」

 育美は妙に納得した表情をしていて、女子同士通じ合うものがあったりするのかと石田を見たら、あいつもなんか赤くなってた。まぁこれ以上は突っ込まない方がいいかと思い「帰ろう」とみんなに言った。

 

挿絵(By みてみん)


 そのまま四人で歩き始めて、しばらく行くと種村がふと口を開いた。

「そういえば、もうすぐ三年生なんだよね」

「そうだな」石田も少し真面目な顔になった。

「クラス、また一緒になるかな」

「どうだろうな」

 

 成績や進路を考えれば、三年生では今までと同じようにクラス分けされるとは限らない。僕たちは一年生の頃からずっと同じように集まってきた。でも、それが三年生になっても続くとは限らない。

「私たち、結構クラス別れそうじゃない?」種村がそう言うと、石田も黙って頷いた。

「まあ、仕方ないだろ。三年になったら進路とか成績順でクラス分けするし」

「でも、クラスが違っても仲良くできるよ」育美が言った。

「私たちみたいに。ね?」そう言って、育美は僕の腕にしがみついてきた。

「この二人は相変わらずだなぁ」石田が呆れたように笑う。

「ごちそうさま。でも内田っちは相変わらずだね」と種村もニヤニヤしてる。

  僕はそんな二人を見ながら、少しだけ笑った。

 

 僕に何かと絡んできた女子五人組も、勉強の成績からすると多分、早田と悠木、種村と小森、東田とクラスは別れるんじゃないのかなって予想できた。でも、クラスが変わってもたぶん僕たちは、というか女子五人組は変わらずに仲良くしているんじゃないかなって思った。

 

 あとひと月で二年生が終わる。もう少しだけ、今のままでいたいなって思いながら、僕たちは四人で夕暮れの道を歩いていった。



登場人物紹介 ※( )は東田奈央がつけた、みんなのあだ名。東田だけが使っている。


小森こころ(ココロン):

黒髪おかっぱでやや小柄な小動物系。陰キャ気質の観察者、引っ込み思案な性格で三年生になってみんなと会えなくなることを心配している。

図書委員の貸出当番で一緒になる後輩の江川拓也に「自分から動けばいいんじゃないすか?」とストレートに言われて、自分から行動することを決心する。


江川拓也:

一年下の後輩。小森と同じ図書委員の貸出当番で一緒に受付にいることが多い。ぶっきらぼうでストレートな物言いは、小森にいやな顔をされることもあるが、本人は気にしていない様子。ひねくれ屋で、実は小森のことを先輩なのにかわいらしい人と思っている。


早田沙織(サオリン):

黒髪ロングの美人でクラス男子憧れの美人優等生、背が高めでスレンダースタイル。恋愛に無頓着で、男子と二人で話した経験がほとんどない。物静かで丁寧な話し方。文理進学クラスで国立大を目指して受験勉強に一生懸命取り組んでいるが、同じ塾に通う山崎信長ととあるきっかけで話すようになり、男子免疫のない早田は悩んでいる様子。


山崎信長

早田、悠木と同じ進学塾に通う、別の高校の三年生。穏やかな話し方で優しい雰囲気の漂う眼鏡男子高校生。早田とはちょっとしたきっかけで見かけたら話をする関係になる。


東田奈央:

明るく素直で元気なキャラと巨乳で男子の人気のまと。仲良くなるとすぐあだ名で呼びたがる。石田君に片思いしていたが結局は実らず、それは自分が何も出来ないからだったと気がつき、頑張って変えていこうと思っている。


悠木やよい(やよっち):

銀髪ロングでスタイルのいい美人のメガネっ子。二年生の夏休みに自由研究として小説を読み込んでレポートを作ったことがきっかけで、何かを作ることに興味があり進路もその方向で考えている。早田とは同じクラスで進学塾も一緒。


内田雄太(ウッチー):

黒髪の平均的男子で帰宅部。二年生の時は女子五人組の相談役的なポジションだった。長谷部育美と付き合っていて、先日両親に挨拶する程、順調に交際中。同じ大学、学部を目指して頑張っている。

彼女がいるせいか、女子五人組からは、人畜無害な相談相手と思われているみたい。


長谷部育美(イクミン):

内田君の彼女。ポニーテールで明るくカワイイ子。歌がとても上手で引き付ける魅力がある。何事にも積極的で内田君をグイグイ引っ張るタイプ。母親に「二人はどこまで?」と聞かれたが、そこは二人の秘密。



種村敦美(アツミン):

ショートカットで小柄な、とても元気なハキハキさばさばした子。卓球部。人をよく観察していて気が付いたことで相手をいじるのが好き。試合に負けて泣いているところを石田君見られ、のちに告白されて付き合い始める。どうやらバレンタインデーにファーストキスしたらしい。


石田界人:

一年からの内田君の友人。バスケ部で背が高い茶髪の短髪で結構イケメン。種村と付き合っていて、割とぞっこんらしい。勉強は今一つだったが、種村と同じ大学に行くために、一念発起して猛勉強中。


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