アトガキ収集家
はじめに
なんともおかしいことだ。
アトガキを集めたこの作品に於いて、そのはじまりが『はじめに』なのだ。
しかし始まらなければ、アトガキは生れないのだ。
まずこの作品は私がこれまでの人生で集めてきたアトガキ集だ。
アトガキはあなた方もご存知のはずだ。
小説などの書籍で最後に記されている文章のことだ。けれどアトガキと言えどその種類は様々だ。
だってそうだろう?
今この作品を目にしているあなたもまた、人生という物語を紡いでいるのだ。
そんなあなたのその物語に於いて最後に記された文章は、それが例えば年賀状の謹賀新年という文字であろうと、SNSのくだらないお気持ち表明であろうと、それはあなたのアトガキになるのだ。
では早速、アトガキを読んでいこう。
①
平成家電からみる美少女アニメ史
著者 百葉みらい産業大学経済学部視覚情報学科 講師 矢沼 イサミ
おわりに
今回は『平成家電からみる美少女アニメ史』というかなり狭い層に向けた作品を手に取っていただきありがとうございます。
この本を書くきっかけは長女のひとことでした。
令和元年生れで、現在は小学校に通いはじめているのですがオタクな両親の英才教育の結果、日々様々なアニメ作品に触れています。
「スマホで連絡すればいいのにね」
同棲ラブコメアニメで、家出したヒロインを探すために雨の中を主人公がずぶ濡れになりながら街を疾走するシーンでの言葉でした。
平成初期も初期の作品。当たり前がらスマートフォンはおろかガラケーも出てきません。さらには留守番電話というサービスも一般家庭に普及し始めた頃ですので、登場はしません。
なんと面倒な時代でしょうか。
しかしだからこそ、主人公が街中を駆けまわるシーンを通して愛情と必死さが伝わるわけです。
もちろん現代が劣るわけではありません。連絡がとれないことへの焦りは過去よりも令和の現代の方が強いまであります。連絡がとれて当たり前だからこそ、取れないことへの不安が強調されるのです。
平成が良かった、というわけではありません。ですが、あの平成初期の淀んだ靄のような空気と目を差すようなネオンの光はすっかり失われてしまいました。
私や、私と同世代のオタクたちが社会の隅っこで生きていたあの頃。
近くて遠いあの頃を形にして残したい、という考えでこの本を書き上げました。
最後になりましたが、この本の出版を楽しみにしてくださり、資料提供や時代検証を手伝ってくださった〇〇〇〇の椚さんにこの本を捧げます。
アトガキ収集家 01
この本の作者である矢沼氏を検索したところ、これ以降書籍の出版は行われていなかった。
百葉みらい産業大学を調べてみたが、矢沼氏はこの本を出版した翌年に講師の職を辞していたことがわかったのみだった。SNSなどで検索してみたが見つけることはできなかった。
ちなみに、椚氏に関しては昭和から平成にかけて活躍なされたアニメーターらしく、いくつかの作品のエンドクレジットで確認できた。この作品発行時、すでに、故人だ。
②
雨降る夜、きみは線路をなぞる
著者 井岡 サチ
文庫版あとかき
こんにちは。
いえ、こんばんは、でしょうか? この本を手にしたあなたはどこにいるのでしょうか。
十五年前に〇〇社より単行本として出版された拙作が、どんな因果かこの度文庫化されました。
当時の私にそのことを伝えても到底信じてもらえないでしょうね。新人賞を受賞して念願だった小説家になれる、と喜んだのも束の間〇〇社は倒産。
えぇ、そうなんです。この『雨降る夜』は私のデビュー作なのです。Wikipediaにはどうやら書かれていないようですね。当時の名義は違いましたしね。
こうして再びあなたの手にこの本を届けることができました。
アトガキ収集家 02
井岡氏については知る人も多いはずだ。
映画化作品を多数抱える売れっ子作家だ。この『雨降る夜、きみは線路をなぞる』は町岡チサト名義で当初は出版されていたが、あとがきに記されている通り出版社が倒産。そのため流通されたのも少数部数であった。
井岡氏はそれで一時作家活動を断念。それから五年後、彼女は井岡サチ名義で再デビューを果たした。
井岡氏自身は現在も作家活動を続け、話題作を多数生み出し続けている。しかしこの町岡チサト名義で書かれたこの作品には、私の望むアトガキの匂いが漂っている。
この再販分ではオリジナルに収録されていた、町岡チサトとしてのあとがきは削除されてしまっていた。
もしもこのオリジナル版を持っている方がいればぜひ私に一報してほしい。
③
そこの災厄の魔王は、俺の前世の元カノで義理の妹であることを、どうやら俺だけが知らない!? 3
著者 目覚めた狸
あとがき
「ちょっとレイラ」
「どうしたのアンナちゃん」
「ここってあとがきでしょ? なんであたしとレイラがいるのよ」
「あらあら、それはね作者さんがあとがきで書くことを思いつかないまま締め切りになったからよ」
「はぁ? バカなの作者は」
「でもそのおかげで私たちは出番貰えたわけだし、ね」
「たしかに、そうよね。レイラはともかく私なんてこの巻ではたったの三十文字しか出てないのよ。どうなってるのよ、まったく」
「ふふふっ(これでタスクくんは私の)」
「な、なんか悪いこと考えてるでしょっ!」
「ふふっ、そんなことはありませんよ、アンナちゃん」
「嘘、嘘よっ! 今絶対タスクのこと考えてたでしょっ! ってかあたしがいない間、タスクと何していたのよ」
「それは私の口からは言えませんよ。あーんなことや、こーんなことでキャッキャウフフだったなんて言えません」
「な、なっ、そんなの許さないんだからね。こんなあとがきで騒いでいる場合じゃないわ! 本編読んでやるんだからね」
というわけで、あとがきから立ち読みしている君っ! このまま本を手にレジへgoだぜ!
アトガキ収集家 03
ネット小説で一時期話題になった作品の書籍化。令和初期ごろにはよく見られた展開なので、当時を知る人も多いだろう。
この作品もそんなムーブメントの一冊であった。アニメ化という話も出ていたらしいのだが、これ以降続刊は出ていない。書籍化前に連載していたネットサイトでも更新はされておらず、作者は完全に筆をおいてしまったらしい。
SNSも最後のコメントは『最新第三巻が発売されましたっ!』という宣伝で終わっている。
表紙の美少女たちが私に微笑んでいる。
しかし哀しいものだ。彼女たちの物語は終わることもなく、ただ作者からも忘れ去られアトガキの山に消えていくのみだ。
④
バズーカ・ばずるか 2
原作 aNri 作画 マノヤシンゴ
作画コメント
どうも作画のマノヤです。
毎週aNri先生から届くネームが届くたびに、さぁマヤはどんないやらしい、ゲフンゲフン、可愛い姿になっているのか楽しみにしています。今回の巻では新しいヒロインもでてきます。可愛い女の子にエッチなコスプレ姿も描けて幸せな毎日ですよ。
ではまた次巻で!
アトガキ収集家 04
原作のaNriに関してはご存じの方も多いだろう。現在も週刊少年ビッグバンで連載中の『ウサギくん、スカイフォール』など有名作品を多数持つ漫画原作者だ。
そんな彼の初期作品がこのマノヤシンゴと組んだ『バズーカ・ばずるか』だ。
全十三話で、この二巻は十話までが収録されている。では残りは? となるだろう。
そもそも連載していた雑誌が二巻発売の半年後に廃刊となってしまったのだ。なので残りの三話に関しては掲載誌を購読していた人しか読めていない。
作画のマノヤシンゴは、この作品後、三笠ジャンゴと名義を変えて成人漫画家として活躍している。
⑤
街角の聖人
著者 クリス・マッケンジー 訳者 町田ユウコ
訳者あとがき
クリス・マッケンジーがあの陰惨な事故に巻き込まれて亡くなり、今年で十年が経った。世界は果たして彼が、物語を通して見つめたような姿になったかと言えばきっと程遠いことだろう。
それでもこうして作品は残る。彼の言葉を借りれば『楔のように、彼はこの街に残り続ける』、彼の記した本は彼の死後もこうして世に残り続けるのだ。
彼の灯した小さな火を絶やさないように、私たちはこの物語を紡いでいくべきではないのだろうか。
アトガキ収集家 05
アメリカの小説家クリス・マッケンジーが20世紀最後の年に発表した小説。その翻訳が彼の死後十年が経って小さな出版社から世に出された。この訳者である町田ユウコはその出版社の社員で出版権の交渉から翻訳までも一人でこなしたそうだ。
この出版社からは、他にもいくつかの日本で未翻訳だった作品が何作か出版されていた。
現在、この『街角の聖人』は絶版状態になっている。
その理由はいくつかあるのだが、誤翻訳が多かったことがその原因として有力だ。
町田ユウコはこの『街角の聖人』回収の責任をとって会社を辞していた。以後の彼女の消息については判明しなかった。
⑥
鍵を閉めて約五分~凶器は蓋に乗せて温め後からいれてください~
著者 潘アキラ
あとがき
先日、コンビニで初めて唐揚げを買いました。
えぇ、あの親しみあるネーミングの唐揚げです。生まれ育った街、というにはあまりにも村のような場所ですが、そこにはコンビニがなかったのです。近場のコンビニまではバイクで十分走らせねばなりませんし、二十四時間営業のはずなのに、午後八時には閉店しているのです。
そんな僕ですが、担当さんとの顔合わせで〇〇社編集部を訪れるため上京し、都会で人酔い、逃げ込んだのがコンビニのイートインだったのです。
唐揚げ、と言えば僕は衣がサクサクしているのが当たり前と思っていたのですが、あのしっとりとした衣を前に言葉を失ってしまいました。
変な話になってしまいましたが、『驚き』とは特別でもなんでもない日常の中に隠れているものです。僕の作品もまたあなたの街の書店に並ぶ只の本ではありますが、あなたの毎日に新鮮な驚きを届けられれば幸いです。
アトガキ収集家 06
この作者、潘アキラについては有名なのでご存知の方も多いはず。彼はこの作品の出版後に逮捕されたのだ。
罪状は当時付き合っていた女性への暴行と、その住居への不法侵入。
もちろんこれは当初の報道で言われていたことであったが、その後の裁判でこの女性と作者の間に交際関係はなかったことが判明したのだ。作者が一方的に女性へ好意を募り言い寄っていたのだそうだ。
結局、実刑判決を受け本書は回収となった。
⑦
催眠NTR学園 2(準備号)
著者 みどぼん(サークル 鳩屋)
あとがき、という名の言い訳
はい、そうです。間に合いませんでした。だってしょうがないじゃんか。全部『神龍クエストⅫ』がいけないんだっ‼
このあとがきも印刷所の締め切り五分前に書いてます。
とりあえず完成版は来月のコミティアで出す予定、とまで。
時間もありませんので、この辺りで。
どっかーーーん!(爆発)
アトガキ収集家 07
結局、この同人誌の完全版が発行されることはなかった。
作者のみどぼん氏はこの後、成人向け商業誌で三本の短編を掲載。以後の創作活動は不明。
そもそも、AIソフトを利用した疑いを持たれており、この同人誌が発行したころから囁かれていたが、後の商業誌発行作品で決定的な『何か』が見つかり、批判が殺到。SNSアカウントの封鎖、そして筆を置いてしまったようだ。
⑧
月刊テラビジョン 5月号
著者 テラビジョン編集部
編集後記
数年ぶりにレンタルビデオ店を訪れたところ、レンタルビデオ屋というよりも家電量販店のようになっていた。確かにDVDをレンタルする習慣はなくなってサブスクで視るようになってしまった。きっと近いうちにこれらは他人事ではなくなってしまうのだろう。(たろすけ)
くそっ。シーズン序盤とはいえ我が猛虎軍は連敗続き。なんであんな見るからにハズレ助っ人に何億も使って、小里の残留をケチったんだよ。(RRR2)
紅茶にハマって、休日は茶葉を探しに都内をめぐっています。みんなのおすすめあれば教えてください。(ナン)
古のOSがインストールされているPCがそろそろ挙動が怪しくなってきました。『のべのべ』や『リョバネ』を年一でプレイしている身としては恐ろしいこの頃。(かんこ)
アトガキ収集家 08
成人向けPCゲームの専門誌。すでにダウンロード販売が主流に切り替わり、月刊テラビジョンはこの翌年に廃刊となった。
雑誌の内容としては新作ゲームの紹介が雑誌の半分。残り半分は成人向け漫画の連載が掲載されていた。編集後記は紹介ページと漫画の間に小さく載せられていた。
約2年間の発行期間、上記のメンバーは必ず編集後記を載せていたのだが、この次の号では編集長の、たろすけ、の名前が消えていた。その理由は不明だ。
⑨
株式会社マナベグループ営業部美濃部タダシの恋
著者 高野辺ナオ
あとがき
言い訳からはじまりますが、高野辺は就職をした経験がありません。それどころかアルバイトをした経験もありません。
なので作中の出来事は友人たちから聞いたことを、妄想で膨らませたものです。なのでこのマナベグループは高野辺が就職するならこんな会社がいいな、と妄想して、頭の中で設立した会社です。
そしてこの物語はまだ続きがあります。作中にも会話だけで登場した美濃部課長の同期である製造部の岬部長を主人公にしたお話です。
引き続き、この株式会社マナベグループシリーズをお楽しみください。
アトガキ収集家 09
大手出版社から発行されているヤングアダルト向けノベルであった本作。本作はシリーズ物として続刊が出る予定だったが、残念ながら十年以上経った現在、発行はされていない。
作者である高野辺ナオもこの一作のみであり、別名義での活動も確認されていない。
その原因は不明だ。
⑩
メール(下書き)
送信者 七里コウ 宛先 七里マリ
ReReRe:いま会社でた
ごめん
会社はとっくに退勤してるよ。どうにも電車が動かないみたいで、なにか事故みたい。もう一時間は駅前にいるんだ。
タクシー乗り場もすごい行列できてるし。携帯も充電切れて、コンビニで携帯充電器買って今ようやくメール確認したとこ。電話もごめんね。
とにかく交通機関はダメそうだから歩いて帰るよ
それからく
――――――――――
ねぇ、なにしてるの!
電話にも出ないし
いい加減にしてよ
ご飯だって冷めちゃうし、今日は折角の記念日なのに
最悪
あなたっていつもこう
遅くなるなら言えばいいじゃん
どうせまだ会社に残って仕事でしょ
もう知らない
アトガキ収集家 10
少しこれまでと形式が異なるアトガキだ。
このアトガキを収集した経緯としては、私の趣味である夜歩きの最中に拾ったガラケー内に残されていたものだ。
SIMカードはすでに抜き取られ、電池パックも無くなっていた。修理して内部のデータを確認したところ、この下書きデータを見つけたのだ。
どういう経緯で、持ち主はこのメールを送信しなかったのか?
そしてどうしてこのガラケーは捨てられていたのか?
味わい深いアトガキだ。
⑪
図解解説 柔道入門
監修 六道大学柔道部部長 相良ミノル
最後に
日々の稽古をただ消化するだけでは上達などありません。
動きのひとつひとつに意味を持たせ、高い意識のもと稽古することが大切です。
それは稽古だけではなく、普段の家での過ごし方や学校での過ごし方、その中にも柔道に繋がる事柄は多いのです。
ただ漠然と過ごすのではなく、明確な目標と意思を持って生きていく。
それこそが大切なことなのです。
アトガキ収集家 11
六道大学系列はスポーツ強豪校として有名だ。
特に柔道では国際大会で活躍する選手を多数輩出している。この相良氏も昭和後期の柔道界では有名人だった。オリンピックは怪我に泣いて出場できなかったけれど、直前までは金メダル候補として注目されていた。
現役引退後は母校の六道大学で後進の育成に勤めていた。
しかし、女子部員へのセクハラ報道。さらには行き過ぎた指導による暴行被害の告発。
昭和の時代を生きた武道家は、変化する平成の世を生き残れなかった。
⑫
イオリくんはイキってる
著者 りんた(サークル scandal)
あとがき(読まんで大丈夫です)
はじめましての方ははじめまして、いつも買って下さる方はこんにちは。りんたです。
いやいや、バニスカ熱がやばいですね。アニメ二期でイオりんの大活躍。りんたのタイムラインもイオリくんだらけです。そもそもああいう生意気チョロイン俺様ショタが大好物なわけですよ。あの伝説の七話を観て速攻で漫画全巻揃えてしまいました。マキイオ、カサイオ、コノイオ、イオリくんはまさに魔性のショタですね。
鉄は熱いうちに、というわけで滾るリビドーのままこんな分厚い本を仕上げてしまいました。
そしてゲスト原稿として、石動ミャオ先生の小説‼(まじで神シチュを作り出す神)感謝してもしきれんです本当っ!
原稿を手伝ってくれた友達のYちゃんや妹ありがとう。
読んだ感想を貰えるとめっちゃ嬉しいです。では受かれば夏に会いましょう。
アトガキ収集家 12
これは先に紹介したaNriが原作をしている『ウサギくん、スカイフォール』を題材とした同人誌のあとがきだ。
ゴールデンウィークに開催された女性向けの大型同人誌イベントで領布された。
りんた氏はこのひと月後、SNS上で『ウサギくん、スカイフォール』のオンリーイベントを主催していた朧ユキノ氏と、作品の解釈をめぐって対立。過熱化していく中でりんた氏はイベントに対して直接的な妨害工作を行ってしまい、それが原因で炎上。アカウントは閉鎖。同人活動も停止。
昨年、ペンネームを変えてオリジナルBL作品を商業向けに発表したが、その画風からりんた氏であることが発覚。それ以降の活動は現在も確認できていない。
⑬
週刊少年ビッグバン 23・24合併号
出版 集段社少年ビッグバン編集部
巻末作者コメント
初連載、大変なことばかりでしたが楽しかったです。応援してくださった方々ありがとうございますっ‼ (まきオ)
アトガキ収集家 13
これは週刊少年誌に掲載された作者コメントだ。『春風トルネード』の作者と言えば一部の読者は納得するはずだ。
高校野球を題材にしたスポコン漫画で、単行本は全二巻。打ち切り漫画だ。ストーリーはありきたりで平凡なものであったが、作画に関しては評判がよかった作品。
掲載誌にはすでにアニメ化もされている看板野球漫画が連載されていたため、読者からはまきオ氏に同情的な声も多かった。
しかし連載終了後、自身のSNSアカウントで編集部批判を連投。けれどそれは作者自身の実力不足を他人の所為にしているだけ、と多くの批判がまきオ氏に殺到する流れとなってしまった。
連載終了から数年が経った現在も、打ち切り漫画としてネットではおもちゃにされている作品のひとつだ。
⑭
クサカホームセンターのレシートの裏面
執筆者 不明
つかれました。ごめいわくをおかけします。
アトガキ収集家 14
これは旅行で訪れた観光地で拾ったレシートに書かれたアトガキだ。
レシートの日付は私が拾った一週間前だった。
調査した限りではその日付前後での自殺者は存在しなかった。
この執筆者の無事を祈るばかりだ。
掠れた、弱々しい字で書かれたこのアトガキは今も私の財布に入っている。
⑮
電柱の張り紙『インコ、探しています』
執筆者 野崎 キイチロウ
お願い
ぜひ捕まえた方、もしくは情報をお持ちの方は些細なことでもいいのでご連絡下さい。
アトガキ収集家 15
これは私が住んでいる街で見かけたペットの捜索願の張り紙だ。
インコの写真、それから特徴が書いてある。そしてこの捜索者の野崎氏の電話番号が書いてある。
一見すると、なんてことのないたまに街中で見かける張り紙の類だ。アトガキ収集家たる私が収集するようなものではない。けれどこの張り紙はおかしいのだ。
何がおかしいか、それはこの張り紙は私が幼い頃より、ずっと張られているのだ。剥がし忘れ、というわけではないのは日焼けして文字が読めなくなると、新しく張り直されているので間違いはない。
少なくとも20年以上、野崎氏はインコを探していることになるのだ。彼が探しているのはセキセイインコ。一般的にセキセイインコの寿命は五年~十年ほどらしい。
さらに私が住んでいるのは東京23区内だ。動物が生きていくには厳しい環境であることは間違いない。
気になった私はこの野崎氏について調査してみた。
結論、野崎キイチロウ氏はすでに亡くなっていた。
昭和54年、私の家の近くのアパートで孤独死していたのを、区役所の職員が発見したらしい。
この張り紙がいつから張られているのかは定かではない。けれど、この捜索者である野崎氏はこの世にはいない。
野崎氏には親族はなく、無縁仏として供養された。
誰が、何の目的でこの張り紙をしているのか?
私は記載されている電話番号にかけてみることにした。
『ピーっという発信音のあとに』
留守番電話に繋がった。
一体『誰が』、『何を』探しているのだろうか?
あとがき
執筆者 アトガキ収集家
これが私の集めたアトガキだ。
もちろんこれらはほんの一部で、私の家には膨大な量のアトガキが眠っている。
また機会があれば紹介したい。
もちろん、あなたの持っているアトガキを紹介してくれるのもありがたい。
では、また。
ありがとうございました。




