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大魔王ぽっちゃりピクシーの生存戦略は、勇者と密約・森の要塞化・国家を転覆……と、まるで自重せず。  作者: 枝垂みかん


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息つく間もなく第二ステージ②


 こういうときはタスクを羅列して、それから優先順位を決める。これに限る。


 というわけで、やる事リスト——


・バケツリレーで火を消す。

・ヴェ・ネフィカの足取りを追う。

・逃走兵およそ五〇〇〇の捜索。

・発見次第、王国正規兵の拘束。

・雑兵らは兵役で駆り出されただけなので、エルラーレの支配下に取り込めるようなら取り込む。

・どれだけの人数の面倒をみなければならなくなるか不明だが、当面の食糧確保。

・対アンデッドの防衛ラインをどこに設定するか検討。これは村の住人の意思を確かめたうえで。他の村も助けたいというなら、受け入れる。だが王都まではムリ。そもそも助けてやる義理がないので見捨てる方針……。


 ああ、ダメだこれっ。

 書き出すうちに止め処なく愚痴と不安が増えていく。

 いつの間にか集まってきた妖精たちのリーダー格も気遣わしげにこっちを見ていて……。

 やめだやめ。とりあえず、いますぐできることから手をつけよう。


「縄文。コボルト衆で、野原の燃えさしを余さず消火してくれ。小さな火種も残さないように」

「ワウ!」

「ピクシー四天王は、二手に別れてくれ。すみれとあやめは消火の手伝いだ。前に作ったジョウロがあるだろ」

「ぴっ」

「そうそう、小さな穴が空いた水瓶。それで水を撒いてくれ。大丈夫だとは思うけど、ちょっとでも火事の可能性を減らしておきたい」


 これで戦場となった野原の火の始末はよし。


「つつじとすみれは、半数を連れて逃亡した兵士の捜索を頼む。見つけたらフェアリーに声をかけるように」

「「ぴ〜い」」

「できるもん、じゃない。オマエら人間がわかるように喋れないだろ」

「ぴぇぴぇっ」

「ぴい〜」

「ジェスチャーで伝えるって? そっちの方が余計に時間がかかる。却下だ。フェアリーズもそういうことだから。見つけた兵士は野原に集合で」

「ねーえ、ぽっちゃりピクシー。聖女ちゃんを連れてってもいーい?」


 詳しく頼むと目で促すと、


「人間はあの娘の言うこと聞くんでしょ?」


 なかなかに鋭い指摘。


「そういうことか。でもまだ本調子じゃないからなぁ。それに、あとで頼みたいこともある」

「ふーん。そっか。それじゃ、みんな行くよー」

「「「はーい」」」

「「「ぴーっ」」」


 抜け目ないというかなんというか……。フェアリーはよく見てるな。たぶん楽をしたかっただけなんだろうけど。それにしてもだ。


 さてと。


「おいミケ、ブチ。オマエらにもやってもらうことがあるぞ」

「ちょっと、シュバッ、待ってニャ」

「シュ、シュシュ。おうよ。すぐ決着つけっからよぉ!」


 なんでこの状況で猫パンチボクシングをはじめられる。コイツらいったいどういう神経してるんだよ、まったく。


「そうか。他でもないケットシー勢を見込んで、ぜひやってもらいたい仕事があったんだけどな。残念だ。忙しいみたいだからコボルトに頼むとしよう。ああ、これは真の実力者にしか頼めない、ものすごく重要な役割なんだがなぁ〜」

「「「————ニャんと⁉︎」」」


 わっかりやすっ。


「さすがに聞き捨てニャらねぇニャあ」

「んっ。ミケ、決着つけなくていいのか?」

「んニャもんあとでい」

「ブチがそういうなら話すけどさ、やっぱり怖いからイヤとか言うなよ」

「オイラに二言はニャいぜい!」


 ではお言葉に甘えて、ケットシーには森の外、王都方面の偵察に出てもらうことにした。

 もちろんめちゃくちゃイヤそうな顔をされたけど、ちゃんと言質はとってあるからな。文句をたれる前に「二言か?」と黙らせた。


「テんメェ、覚えてろい!」


 こんな捨て台詞を残してケットシー勢は出発した。

 外回りよろしく。あと、オマエらこそ「アンデッドを発見したら即退却」この指示を忘れないでくれよ。


 消化するなり新たなタスクは生まれてくる。やるべき事を思いついてしまうんだからしかたない。気づかずのちのち困るよりは遥かにマシ。

 というわけでやる事リストに——


・戦場に残った資材の回収。

・プロパガンダ用の台本を作成。


 上記を追加。

 そして、


「これもエルラーレにやってもらうか……」


 少ない数ではない亡き骸が放置されたまま。直接オレらが手を下したわけではないが、これは意図的に暴動を起こした結果だ。

 ふと『兵士たちの手で』とも考えたけど、すぐに却下した。

 敵だった相手が、仲間の死を丁重に扱われていたら好感度は高くなるはず。

 それに、惜しむ時間をかけていられない切実な理由もある。なにせ次はアンデッドと対峙するハメになるかもしれないんだからな。

 どういう風習なのかは知らないが、火葬を供養とさせてもらう。


 しばし自己嫌悪と自己弁護の攻防をさせていると、


「大魔王様ぁああ〜!」


 ベーが走ってやってきた。


「エルラーレ様の目が覚めました」

「もう動けそうか?」

「さすがに起きたばっかりなんで」

「では、手が空いてる村人とコロポックルたちを呼んできてくれ」

「わかりました」

「——待て」

「はい?」

「もし遺体を焼くと聞いたら、どう思う」

「えっ。まさか食べるつもりですか? それはちょっとぉ……」


 この反応なら大丈夫そうだな。


「もういい。火葬、つまり焼いて骨にしてから土に埋める。そのあたりをレペゼン・コロポックルにも伝えておいてくれ」

「はあ」


 どうしてそんな面倒なことを、とベーの顔には書いてあった。理由を説明して聞かせるのは、火の支度をしたあとでもいいだろう。

 なるべくなら、戻ってきた雑兵たちの目に放置された亡き骸を触れさせたくない。

 いま見せるべきは酷い有様ではなく、聖女の慈愛なのだから。


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