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大魔王ぽっちゃりピクシーの生存戦略は、勇者と密約・森の要塞化・国家を転覆……と、まるで自重せず。  作者: 枝垂みかん


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ボスウェーブ⑩


 演出などなく静かに、だが着弾は突然——


 電磁加速された鉄球は、ヴェ・ネフィカの背中と臀部の二箇所に命中。他の二発の内一つは顎下を掠めるに留まり、もう一つは外れた。


 ヴェ・ネフィカばかりに当たったのは、なにも魔女だけを的にしたからではない。そこまで射撃精度はないので、端からヘッドショットなど狙わず、最も命中率の高いところへ射ったはず。

 だというのに結果は偏った。

 どうしてこうなったかといえば、カレックス国王が無事な方の腕でドレス裾を掴み、魔女を肉盾にしたから。

 これは完全なるオレの失敗だ。チャンスに昂って声をあげてしまうなんて、どうかしている。


 反省はあとだ。それでも戦果はあったんだ。

 凄腕冒険者ヴェ・ネフィカをノックアウト。王が埃でも払うかのように掴んだドレスの裾を手放すと、グラリ、バタッと……。


 コイルガンの運用にあたり、ピクシー四天王には、威力と速度を捨てて四つに別れてもらった。というかオレの制御下にないと四段加速はできないのもあって。

 それでも生身に当たれば、大きなダメージを与えるのは変わらずだろう。近寄らないと正確なところはわからないが。


 とにかくいまは手を緩めたくない。

 しかしピクシー四天王には、一度撃ったら違うコイルガンに移動するように言いつけてある。反撃の遠距離攻撃に備えてだ。

 他にも第二射以降は四段加速とは別の方法で威力を高め、対処させないという狙いもあって。


 目前に迫った勝機に、ケットシーもコボルトも手負いの王を攻め立てた。息をつくことえ許さず。

 しかし前衛気質なのか、決め手に欠ける。コイルガンがカレックス国王に命中していたなら、残ったのがヴェ・ネフィカだったらこのまま押し切れたかもしれない。


 誰も彼もが遮二無二。

 声らしい声などなく、聞こえるのは荒い息遣いか雄叫びのみ。


 ほんの僅かな時間がめちゃくちゃ長く感じる。 


 そこへ不意に、天より飛来した陶器製ミサイルがガッ————シャアアアッッッン!

 ……明後日の方へ落ちた。

 やっぱり最初に当てられたのはラッキーパンチだったのか。これでフェアリーズは弾切れ。


 しかしムダではなかったようだ。刻まれた痛みの記憶が、カレックス国王を微かに硬直させた。

 そしてとうとう猫爪が王の頬を掠める。犬牙が王の装備に綻びを生む。


 積極的な攻撃イコール、負傷者の増加。果敢に肉薄することで反撃を受け、消失までいってしまう妖精も少なくない。


 オレは見ているだけか? 口先だけなのか? こういう馬鹿げた自責の念が心中で支配的になっていく。

 わかってる。これは甘さだ。指揮官が前線に立ってどうするだよ。わかってはいるんだが……。


「ミケ⁉︎」


 焦れに焦れた苛立ちは——プツンッと途切れてしまう。

 魔王ミケが消え、そこにはレガリア『幻惑の鈴』が残った。つまり幻体ではなく本体。その場面を目の当たりにしてしまったからだ。


「ミケぇええええーッ‼︎」


 チッ。だから名前なんかつけなければよかったんだ。

 こう己に言い訳したのを最後に、オレは地上スレスレを飛んだ。それだけじゃ足りないと地を蹴り、駆けに駆けて加速した。

 ものすごく焦げた地面が近い。でもきっと自分で思うよりは遅いんだろう。このまま突っ込んで、敢えなく返り討ちなんてパターンもあるのかもな。

 だが、止まってなるものか‼︎


 超軽量級たちが重量級相手にアウトインアウトを繰り返す。

 その蜜な出入りのなかに、ぽっかりと空いて見えたオレが滑り込める隙間。そこにはギラリと輝く鎧の装飾が見えた。おそらく金、となれば!


「くッッッッッううッ——」


 一発で魔力切れになっても構わない。それくらいの全力発電。蓄えに蓄えた電気を指の一点に絞り、


「ッらぇえーッッ‼︎」


 装飾に伝えてやった。

 すると、触れた部分から装飾が爆ぜ、バチビカ光と火花が鎧の上を走る。


「——キッ。この羽虫めッ!」


 怒り心頭のカレックス国王は、オレの首を絞めるなり立ち上がり、


「グペッ」


 地面へと叩きつけた。


 未だ鎧の装飾部はプスプス煙をあげているが、まったく感電には及んでいない。熱も鎧下によって遮られる程度だ。だがどうだろう、ククッ、最高の狙撃タイミングは作れたんじゃないか?


 ————ガゴッッッッッ‼︎


 ほぉらきた。ピクシー全員の発電を一点に束ねることにより電磁加速した、鉄の礫が!


 眼前だからか瞬く間が長い。コイルガンから放たれた鉄球は、メリメリとカレックス国王の鎧を歪ませ、変形させつつ癒着していく。クレーターを残し、内へは衝撃のみを伝えた。

 ここまでがスロー再生されたかのように、ゆっくり見えた。皆が目を点にした一瞬の出来事。


 おそらく肋骨なんかボロッボロなはず。臓器にもかなりのダメージを与えたに違いない。


「……ゥグ……ッ……カハッッ!」


 しばし王は耐えたが、よろよろと後退りを一歩二歩したところで、血飛沫を残して倒れ伏した。


 か、勝ったぁ……。

 勝った勝った——


「勝ったぞぉおおおおーッ‼︎ オレらの勝ちだ!」

「「「ワォオオオオオオオーン!」」」


 妖精の森に、咆哮ではないコボルトの遠吠えが響いた。


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