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大魔王ぽっちゃりピクシーの生存戦略は、勇者と密約・森の要塞化・国家を転覆……と、まるで自重せず。  作者: 枝垂みかん


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ボスウェーブ⑧


 戦術(タクティクス)ゲームが、弾幕ゲーに一変した。


「——ひぇ! ——ぅひゃ! ——ちょ待っ」


 これでもかと地面から怨嗟に満ちた黒モヤが襲いくる。ついさっきまでは掴む仕草だったのに、オレに向かってくるのは拳を握っていたり、貫手だったり、殺意満々。

 それをヒーヒー躱しに躱して、


「——ぶへっ!」


 捌ききれないときはブチの遠慮なしタックルに救われたり。

 でも逆を言えば、狙いがオレに絞られたことで、ミケたちは攻めに専念できるようになった。だから上空へは逃げない。

 今こそ好機とばかりにケットシーたちは襲いかかる。オレに世話を焼いてくれるのはブチだけ。


 それはそうと、まるで過加熱水みたいな女だな。レンジで温めすぎた水が百度を超えても沸騰しない、あれに喩えてみた。

 触れると途端に破裂する。ヴェ・ネフィカはそういう類の危うさを保ったまま——


「私の美脚には猫でさえ真っしぐらだというのに。〝預言(オラクル)級闇魔法・黒曜(オブシダン)〟」

「「「ニャんと⁉︎」」」


 攻撃を躱すしつつ、どこかで聞いたキャッチフレーズみたいなセリフを吐く。と同時に、足元を刈りに迫りくる猫爪をあしらった。

 ザラついた岩石が現れたかと思った直後——砕けて小片に。

 微細な鋭い刃が指向性をもち、鉈並みに頑丈な猫爪をスパスパと切断したんだ。


「フフッ。爪の手入れくらいしておきなさい」

 

 腕を負傷したケットシーにも切り落とした爪が消失するさまにも目をくれず。こちらに向き直ったヴェ・ネフィカの瞳孔はパックリ縦に開いていた。

 ……。どういう眼の構造してるんだよ。肉食獣じゃないんだからさ、怖いって。

 あからさまな殺気に気圧され、オレの身体は強張ってしまう。もしいま、さっきの凶悪魔法を向けられたら全身ズタズタ確定。そんな悲惨な未来が脳裏を過ぎる。

 だが、黒曜石の矢尻状小片(フレシェット)弾はオレにではなく、


「ヴェ・ネフィカよ。その妖精は殺すでない。二度も言わせるな——」

「うるさいッ‼︎」


 王へと放たれた。

 よっしゃ同士討ち! こう思えたか思わなかったか、それくらいの刹那——カレックス国王は眼前に迫った岩石を掴み取るなり地面へ捩じ込み、破裂を封じた。


「……フンッ。かような手品、余に通ずるわけがあるまい」

「まぁまぁ慌てちゃって。陛下、農夫の如く手を土で汚しておいでですよ。フフフッ」


 オレらなんて蚊帳の外で、王と魔女はピリピリと紫電を飛ばし合う。

 その隙に、ケットシーらのケガの具合に目を向けると、どうやら刺さった黒曜石の破片は消えたようだ。傷口も癒え、だがそのぶんだけ消耗した様子。

 でもホッとした。そもそも魔力による創造物なんだから、いつまでも残るはずがないか。もし無数の欠片が体内に残留したなら毒よりも遥かに残虐だ。


 チッ。なにを安堵している! 違うだろ。いま考えるべきは仲間の安否じゃない。いかにしてこの状況を利用するかだ。


 対立を煽るか? いいや、いくら言葉を弄したところで下等生物と侮っているオレの声なんか歯牙にも掛けないだろう。

 では、片方に助力するか? これも却下だ。一時は味方しても実質は敵。背中を見せるわけにはいかない。


 瞬き一つするたびに目紛しく案が浮かびは消えて、頭のなかはノイズに塗れていく。

 結果、導き出した答えは——


「おいおい無視するなよ」


 あえて捨て置かせる、だ。

 オレという存在を意識に割り込ませて、そのうえで居ないものとして扱わせるのが狙い。つまり背景として扱わせるのだ。

 強敵同士で睨み合う最中(さなか)。成功の見込みは高いと思うが、どうだ?


「……虫ケラが」

「構ってちゃんなのね。安心して、次はあなたよ。楽には終わらせてあげないわ。この世間知らずな王様に、世の中には怖ぁいお姉さんがいるということを教えてあげるの。ほぉんの少しあいだ震えて待っていなさいな」


 ぃよし、掛かったぞ!

 ここからは打ち合わせなしの一発勝負。伏せておいた切り札をまとめて投入だ。


 オレはチラリと魔王縄文に合図を送った。

 こちらの意図したところは、その配下にも正しく伝わったらしい。

 コボルト衆は一斉にスゥーッ息を吸い、ポコンッと腹を膨らませると、手にした新兵器——陶器製メガホンを口元へ。

 これでスタンバイオーケーだ。


「もう、せっかちさんなんだから」


 ヴェ・ネフィカもカレックス国王も煩わしげに顔をしかめた。


 もし二人がいったん鉾を納めて共闘したらどうするかって? ないないあり得ない。

 敵の敵は味方というが、白黒つくまで敵はどこまでいっても敵だ。ましてや拮抗した戦力が他所を向いたなら、迷いなく背後を突く。そういうもんだ。


 ではこのオレが、互いに手を出せず硬直してしまった時間を動かしてやろう。


「オンユアマーク、セット」


 と指をピストルの形にして天を指す。そして——


「よーいドンッ‼︎」

 

 戦闘開始のシグナル。

 オレの号令に合わせて一斉攻撃。


「「「グワルルルゥガォオオオオオーッ‼︎」」」


 コボルト衆が哮り咆えるなり、ケットシー勢は魔王ミケを先頭に襲いかかる。

 さらには、森の茂みからギラリと複数のガラス質な砲身が王と魔女を狙うのだ。


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