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大魔王ぽっちゃりピクシーの生存戦略は、勇者と密約・森の要塞化・国家を転覆……と、まるで自重せず。  作者: 枝垂みかん


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第二ウェーブ②


 いつか、オレらの置かれた状況をタワーディフェンスゲームみたいだと喩えたことがあった。

 妖精の森という陣地を守るため侵入者にアタックをかけ、湧いては突っ込み散っていく……。そんな妖精らの儚さを知り、思ったことだ。


 ——だが今は違う!


 オレらの森にズケズケと踏み入る冒険者ども。

 ヤツらには大きな盾を持ったタンク役の重装戦士がいて、弓を手にした斥候兼遊撃を担うのアーチャー、そのあいだに剣や槍で武装した前衛アタッカーの軽装戦士と、杖を携えた後衛アタッカーの魔法使いというテンプレ編成。それが四組か。


 目の当たりにした物々しさに、オレは内心ビビっている。それは認める。

 ……しかしだ、コイツらあまりに教科書どおりではないか。まるで何者かが決めた『冒険者パーティーとはこうあるべき』論に従って組まれた寄せ集め集団にしか見えない。

 こういった思考停止は、自分たちが狩る側だという驕りゆえか、はたまた強者ゆえの油断なのか。

 なんであれ、


『オレらを嘗めてくれてありがとう』


 こう思わざるを得ない。単純に数を増やしての対応とは、ククッ、そんなものこちらの対処を容易にするだけだぞ。


 とはいえ半壊させられた前回の倍。かつての被害は記憶に新しいし、眼前の威容も凄まじい。

 だが、それほどの冒険者勢力と対峙して、我らの側には誰ひとりとして臆した者はおらず。ただただ穏やかな妖精らしからぬ静かな怒りを、その小さな身体の内に沸々と宿すのだ……。


 ピクシーやケットシーが血気に逸って飛び出すことも、フェアリーが逃げ隠れに徹することも、そしてコボルトの魔王が力を発揮できず終いで終わることも——ない!

 我らの目的はただ一つ。妖精の森と仲間を守ることのみ!


「縄文、コボルトの魔王として我ら妖精の威を示せ」


 オレは淡々と伝え、対する返事はなし。だが代わりに、縄文とコボルトたちの腹はポコリと膨れあがり——


「「「グワルルルゥガォオオオーッ‼︎」」」


 (たけ)()えた。

 空気の留まらず、地面まで揺るがされた、そう錯覚を覚えるほど怒涛、音の津波。


 オレら森の妖精とは違い、冒険者どもに『音波耐性』はないはず。

 よって、ヤツらが晒された『咆哮S※』プラス『咆哮C』複数を完全にレジストするのは、おそらく不可能! 


 どうやら耐久力が高い各パーティーのタンクでさえ、視点は定まらず脚にキているようだ。

 斥候兼アーチャーらは、優れた危機察知により弓を放り捨てて耳を塞いだか。しかしデバフ無効とはいかなかったらしく、膝が震えている。

 直撃した前衛後衛のアタッカーは、武器を取り落とさないよう耐え、得物を支えにして立っているほどの悪影響を与えた。


 やはり! 魔力値の差が開いていても攻撃の相性次第では通用する。

 いよし! この期を逃してなるものか——


「ヤれッ‼︎」


 抑えていたテンションが振り切れた。爆上がりでオレは叫ぶ。

 と同時にケットシーが、


「「「シャーッ‼︎」」」


 ピクシーが、 


「「「ぴーッ‼︎」」」


 コボルトの半数が、


「「「グワゥッ‼︎」」」


 未だ立ち眩みから回復できずにいる冒険者集団へと襲いかかった。

 狙うは後衛の魔法使いアタッカー。それと、


「「「ぴっひひ〜」」」


 斥候兼アーチャーが手放した弓だ。

 ピクシー四天王とその配下は、真っ先にそれを奪いとったのだ。

 この瞬間のヤツらの表情といったら、愉快にも『魔物が武器を盗むだと⁉︎』こう書いてあった。


 もちろんこれだけで終わりにはしない。冒険者どもの混乱と驚愕につけ込み——


「グアッッ」


 ミケとブチ率いるケットシーたちが猫爪で後衛魔法使いらの足を刈る。骨に至るほど深く。

 鋭い痛みからか、お得意の魔法で対抗することもできず、杖を振って追い払おうとブンブン必死。

 ククッ。これで移動砲台が固定砲台まで降格。ついでに言うと、撤退の選択はコイツらを見捨てることと同義となったわけだ。


 我らの奇襲に、剣を携えたリーダーチックな冒険者の一人が叫ぶ。


「各パーティーの重戦士(タンク)、協力して四方からの攻撃に備えろ! 負傷した魔法使い(メイジ)は中央で治癒、斥候兼弓手(スカウト)は武器を短剣に持ち替えて俺ら前衛に加われ! 見たところ咆哮の連発はない。みんな、デバフが抜け切るまで——凌ぐぞ!」


 まぁ順当に考えて、立て直しを図ろうとするよな。

 まずもって仲間を見捨てたりなんてできないだろう。それは一芸に特化したパーティー編成による弊害。のみならず、他者にはいくらでも残酷になれるコイツらであっても身内には慈悲を与える、こういう性質も原因の一つなのだろう。

 こんなこと、社会性を持った生き物なら当たり前の行動。こういう胸糞が悪い矛盾は前世の人間と大差ない。オレだって例外なく、な。


 さて、作戦は第二フェイズへと移行する。

 防御態勢をとる冒険者集団から、妖精たちは速やかに離脱。すぐさまオレの元へ集結。


「このまま帰るなら勘弁してやるぞ。まだやろうと言うのなら、オマエら全員ひん剥いて晒し者だ。クックックッ、よ〜く考えることだなぁ」


 オレが不敵に笑ってみせたら、ズラリ並んだ森の妖精たちもマネをして、


「「「ぴっ〜ぴっぴ」」」

「「「ニャッひっひ」」」

「「「ワッフワフフ」」」

「「「んぷぷ〜うっ」」」


 みんなしておちょくる。マジになって守りに入ったところを、小っちゃな妖精にケラケラと。

 とくに最後のフェアリーだけは煽りのニュアンスがマシマシだった。


「「「クッ。ぐぬぬぅううう……」」」


 これが効果絶大。

 考えてみれば当然か。なにもしないないヤツが後ろで嘲笑っていたら、そりゃあ腹立つよな。オレが言えた義理じゃないけど——っとお⁉︎


「退避ッ‼︎」


 怒り任せに魔法使いが火炎をブッ放してきた。

 チッ。アイツ、ここが森の中だとわかっているのか。

 幸い我らに損害はなし。拓けた野っ原に落ちた火の玉により焦げ跡が残った程度で済んだ。

 にしても一瞬で炭化って……火力がスゴイ? それとも魔法による燃焼自体がおかしいのか?

 とにかくビビったし腹も立った。が、ちょうどいいか。これを利用させてもらおう。


「ひ、引け! みんな引くぞーッ」


 ほら食いつけ。貧弱な妖精らしく魔法攻撃に畏れをなして逃げてやったぞ。ケガの手当てしたら懲りずに追ってこい。


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