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大魔王ぽっちゃりピクシーの生存戦略は、勇者と密約・森の要塞化・国家を転覆……と、まるで自重せず。  作者: 枝垂みかん


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公共事業⑤


「ご無沙汰な気がするな」

「いえ、先一昨日にお会いしましたよ」


 捕らえてすぐは足繁く通っていた牢穴も、近ごろは三日四日に一度。聞き取り方法も、以前のように三つ聞かせてもらう手間も惜しいので、木版にメモされた内容を読み取るだけに省略した。

 というか、必要に迫らせてからじゃないと新しい知識というのは身につかないもので、どんどん情報を注がれても頭に入ってこない。もしかしたら、これはピクシーボディの脳容量の問題かもしれないが……。

 とにかく、これまでの聞き取りはやめにして、提出されるものを好きに眺める調べ物スタイルに変更したんだ。


「うん。よくまとめてある」


 オレの反応に兵士Bはホッとした顔をみせた。


「冒険者は何人生き残ったんだっけ?」

「三名とも生かしてあります」


 かたや兵士A、ずいぶんと尋問官役に馴染んできた。

 生かしてあるとは、つまり生命に関わるケガ以外はそのままって意味であり、返答次第では患部を撫で撫で優しく問いただすわけだ。

 オレが教えた方法とはいえ、けっこうやってることエグいな。


「徴税官の捜索に来た冒険者が二パーティー合計八名。その誰も戻らないとすると——」

「冒険者ギルドがどのような対応をするのか、予想をさせておきます」


 やはり兵士Aは察しがいい。というかコイツ、腕っぷしを役立てるよりも文官寄りの仕事をさせた方が力を発揮するタイプと見た。


「あのさ、オレが聞くことじゃないんだけど、家に帰りたいとは思わないの?」

「……はぁ」


 うん。ごめんね、ヘンなこと聞いちゃって。


「我らに情でも湧きましたか」

「いいや。用がなくなればいつでも始末できるぞ」


 兵士Aから突き放すように言われたので、こちらもそれに倣う。

 ちなみに兵士Bのリアクションは素直で「え、帰れるの?」と喜色に染まったのちガックリ肩を落とす、だった。

 あまり上げて下げても気の毒だから、ここは正直なところを伝えることに。


「オレは王国と違って、良い働きには正当に報いるぞ。適材適所も大事だと考えているしな。どうだ? 妖精の森は勤め先として、いいところだと思うぞ」

「ハハッ。せめてお給金を頂かないと。我らも、ここでの働きでは実家に仕送りもできませんので」


 こういう軽口に時間を使うほどの関係性を築けている。しれっと実家の両親の存在を仄めかすまでされるくらいには、慣れた距離感。

 もうオレには、コイツらを手にかけるなんて無理だろう。やはり他者(ひと)に対する執着心というのは恐ろしいものだ。


「もっと冒険者がわんさか来てくれれば、その財布を当てにできるんだけどな」

「……かなりの被害があったとお見受けしますが」


 よく見ている。違うか、兵士Aはずっと穴牢の中だった。とすると、冒険者たちからの尋問で得た情報を元に、妖精の森の現状予測を組み立てたのか。

 今あんな襲撃があっては堪らないというこっちの本音は、知られてしまっているわけだ。やっぱり優秀だよコイツ。


「もう一度言うから忘れないでいてくれ。オレは良い働きには報いる——」


 もし王国を乗っ取ったあとに再就職してくれるなら厚遇するぞ、という余計な部分は沈黙で覆い隠して、


「その証拠に今日から食事を少しイイモノにしてやろう」


 すぐに示せるものを。

 このオレの発言に兵士Aは目を見開き、兵士Bは「こんな森にまともなメシなんかないだろ」と期待していない態度だ。

 今回の場合は、兵士Bの方が好感が持てる。なぜなら——


「ふおっ、この香り!」


 オレはこの反応を待っていた。

 食事に先日完成したばかりのお吸い物を追加してやったのだ。もちろん兵士AとBだけ。徴税官と冒険者たちにはなし。


「……もしや料理人でも攫ったのですか⁉︎」


 とんでもない言いがかりだが、満足できるリアクションをどうも。

 でもな、ちゃんと召喚勇者たちに裁量を与えれば、このくらい簡単に作り出すぞ。それをさせない帝国はどうかしている。


「まだ穴倉暮らしはつづけてもらうが——」

「いい働き、ですよね! このスープのためなら俺ガンバれますよ!」


 ダメ押しのセリフは、前のめりになった兵士Bにつづきを巻き取られてしまった。これはこれで良い変化と捉えておこう。


 さてさて、今日の牢穴訪問はこれでお終いではない。もう一つ用件があるのだ。

 もちろん食事が済むまで待つくらいの配慮するので、しばし待つことにした。結局、それほどの時間はかからず平らげてくれたわけだが。


「……あの、まだなにか?」


 ずっと居座るオレに兵士Aは怪訝に、それでいて遠慮気味な問いかけをしてきた。


「まだ調べ物が残っていてな」


 と、オレは羽をパタつかせて浮き、兵士Aの頭へ手を伸ばす。

 ……って、そんなにビクッとしなくてもいいものを。絵面だけをみれば、可愛い妖精さんによしよしされている画なんだぞ。

 だが実際になにをしたのかと言えば、鑑定——


個体名称 :アーマイロ

種族分類 :人類種 人間 兵士

魔力値  :83

理力値  :31

アビリティ:剣術C +109

      算術C +99


 ——シンプル。だけど、妖精の中央値を遥かに上回っている。

 コイツが特別優れているのかは、兵士Bを鑑定してみればわかること。


 では、さっそくとステータスをみてみた結果は、兵士AもBも大差なし。名前の違いとアビリティに『算術C』がなかった以外は、僅かに兵士Bの剣術の熟練度が上なくらいで、ほぼほぼ似た数値だった。

 とはいえ、これが才能なのか実務をこなしてきたゆえの差なのかは確かめたいところ。

 いつかスッピン無垢なステータスの人間を見つけたら、学習内容でアビリティなどが変化するのか試してみるのもいいだろう。

 あと他に気になるのは、コロポックルを少し上回る理力値なわけだが……。そのあたりも、つづきをやればなにかわかるかもしれない。


 というわけで残りの捕虜、徴税官と冒険者らのステータスをまとめてチェック——


個体名称 :プブリカーノ

種族分類 :人類種 人間 徴税官

魔力値  :34

理力値  :16

アビリティ:剣術D +6

      算術C +19


個体名称 :グラード

種族分類 :人類種 人間 冒険者(剣士)

魔力値  :471

理力値  :12

アビリティ:剣術B +429

      身体活性C +124

      限界突破D +39


個体名称 :カントール

種族分類 :人類種 人間 冒険者(魔法使い)

魔力値  :519

理力値  :18

アビリティ:杖術D +39

      火魔法B +389

      土魔法C +49

      幻魔法F +116


個体名称 :ネウルス 

種族分類 :人類種 人間 冒険者(斥候)

魔力値  :379

理力値  :49

アビリティ:弓術B +219

      短剣術D +98

      索敵B +1872

      危機察知C +224


 ——と、改めて冒険者がいかに強者かを思い知ることとなったわけだ。


 これら数値がどれほど実態に影響しているのか不明確なので、なんともだが、これだけは言える。前回の襲撃を乗り切れたのは奇跡に近い。

 多大な犠牲を払ったと思っていたけど、生き残りがいたことを驚くべきだ。それくらいの差なのではないだろうか。


 しかし悲観させられることばかりではない。というのは、圧倒的に力量の隔たりがあっても嵌め手が利くのだとわかったから。また、数の暴力が有効なことも嬉しい誤算だった。


 あと、少し気になったのは、やたらと熟練度の末尾に『9』が多かったこと。

 これってもしかしたら『桁が上がると限界を超えた』みたいに、大幅なパワーアップが見込めるのかもしれない。ちょっとゲーム脳がすぎるか。


 まだまだ知らないことが多すぎるな……。


 とはいえ、これは軽い自己弁護になっちゃうけど、そもそもステータスを鑑定できるのはレガリア『鑑定の皿』を所持しているオレだけ。ならばこれもしかたのないこと。というか、これから知っていけばいいことだ。


 では、気を取り直し、お次は楽しみにとっておいた妖精たちのステータス鑑定といこう。

 ここしばらくの開墾作業で鍛えまくってるから、期待は大だ。


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