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大魔王ぽっちゃりピクシーの生存戦略は、勇者と密約・森の要塞化・国家を転覆……と、まるで自重せず。  作者: 枝垂みかん


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公共事業①


 集落を訪れると、コロポックルたちは物思わしげに労ってくれはする。しかし、


「えらかったねぇ」


 これは『大変だったね』の意。ドライとは言わないまでも意外と反応は軽めで、やはりコイツらも妖精らしい価値観を持っているようだ。

 この場合は生死感と言った方が相応しいか。オレらの被害を知ったうえで、深い悲しみに暮れた雰囲気などはなし。

 なんにせよ、メソメソしてたら次のアクションが遅れてしまうからな。


「あれやこれや頼みたいことがある。けどその前に」


 いままでは目についたヤツに要件を伝えてきたが、これからは違う。森の仲間として、そのあたりをキチンと示さねば。


「コロポックルのリーダーっているのか?」

「リーダー?」

「酋長、村長、そんな感じの」

「うちらにそういうのは、……いないんでないかい」


 あまりピンときてない様子。

 おそらく上下関係などなく、みんなが豊かに暮らせる素晴らしい共同体なんだろう。

 まず我の強い人間には永久に達し得ない世界観だな。コロポックルの個体数が少ないのも要因なんだろうが。

 そのへんも含め、今後のためにも代表者はいてほしいところ。


「とりあえずは一番の年長者でもいいぞ」


 とは言ってみたが、これも反応薄。穏やかな小人さんたちは年齢なんぞ気にして生きていないのかも。

 そういやオレらも何歳かなんて知らなかった。


「その、リーダーっつうのがいないと、よくないのかい?」

「オマエらの習慣に干渉をするつもりはないんだ。だけど、オレらピクシーやフェアリー、ケットシーにコボルト。森の妖精たちと協力して事に当たるとき、やり取りが円滑になるかと思ってな」

「ふぅむ。切れ者のぽっちゃりピクシーが言うんなら、そうなんだろうさぁ」


 ——という経緯があって、第一回、コロポックル村長選挙が開かれることとなった。

 問題の選出方法だが、


「うちはここ」


 と、十四あるスタート地点を任意に選んでもらう。そう、あみだくじだ。


 いきなり投票しろなんて言っても困らせるだけだからな。こういうのは一度やってみたのち、そういう視点で物事を観察できるようになってからじゃないと。

 もしかしたら今後『我こそは』ってヤツが現れるかもしれない。しかし穏やかなコロポックルのこと、いずれは当番制に落ち着きそうな気もするが。


 そして三回の予選と決勝の一回をやった結果、コロポックルの(おさ)が決まった。


「で、村長? 酋長? なんて呼べばいい?」

「うーん。せっかくだし、なんぞ洒落た呼び方はないのかねぇ?」


 ほう。新たに生まれた役割りというモノに、なにかしらを感じた様子。だったら受け継ぐに相応しい呼称を考えてあげないとだな。


「チャンピオン、チーフ、キングもプレジデントも違うし……」


 ダメだ。ぜんぜんしっくりくるのが思いつかないや。


「コロポックルのリーダー、リーダーリーダー……もうリーダーでもいいか——あっ、代表」

「なんか思いついたのかい!」

「ああ。オマエはレペゼン、レペゼン・コロポックルだ」


 洒落てるのかは微妙だが、たしかヒップホップの『代表する』って意味の用語だったよな。よく知らんけど。

 幸い、コロポックルたちは聞き慣れない響きを、


「これからうちはレペゼンさぁ。レペゼンって呼んでねぇ」

「「「れぺぜーん」」」


 と、いたく気に入ってくれたようだ。

 なにげに妖精って新しモノ好きが多いよな。寛容というか大らかというか、偏見なく受け入れた。

 こういう性質タチだからこそ、オレみたいな妙チクリンなピクシーの言葉も聞いてもらえるわけだが。


「さてレペゼン・コロポックル」

「なになにぃ」


 乗り気で応える彼を中心に、他のコロポックルたちも耳を傾けたまま。


「これからの話をしよう」


 オレは本題を切り出した。


 今回、我々は冒険者パーティーを二組も壊滅させた。

 これを妖精側の立場で考えた場合、被害甚大でとても喜べたもんじゃない。


 では逆に、冒険者ギルドから見たらどう映るのだろう?

 おそらく脅威だと考えるはず。依頼失敗のうえ二組が全滅ともなれば、慎重な調査をするか、大きな戦力を投じるかのどちらか。

 この世界の人間を見た限りだと、後者の見込みが高いのでは。


 以上のことから——


「オレらピクシーに相応しい武器を作ってもらいたい」


 真っ先に手をつけるべきは防衛力。こう結論を出した。


「構わんけど、あんたら針くらいしか持てないんでないかい」

「いいや。もっと発電のスキルをフル活用できる武器がある」


 基本的に電撃は接近戦をせざるを得ない。空から雷が落ちることも、目標まで紫電が走ることもあり得ないのだ。

 どうしたって放電により減衰してしまうから、遠距離攻撃には向かず。となると、アウトレンジから攻められないので魔法攻撃としては使えない部類に入る、というのがオレの持論。

 もし落雷を発生させるほどのエネルギーがあるのなら、それを別のカタチで直に伝えた方が効率的だからな。つまり、雷魔法のロマンなのだよロマン。


 こういった発想を経てオレは考えついたのだ。我らピクシーにこそ必要な兵器を。

 それを地面に枝で描きながら説明した。

 するとレペゼン・コロポックルは、


「ここの長い筒。焼き物で作るんなら、丈夫になる厚さでないとねぇ」


 こちらが提示する報酬についてを聞かずに、すんなり快諾してくれた。

 だが、なぁなぁの頼りっぱなしは良くない。きっと、いつかダメ出し&リテイクを連発する場面だって出てくるだろう。そのとき円滑な関係を維持するためにも、いまここで仕事としての線引きをしておかなければ。


「他にも水撒きの道具なんかも頼みたい。でだ、先へ進める前に報酬の話をさせてくれ」

「報酬?」


 また『なんもなんも』と温和に済まされそうだが、実は、欲のないコロポックルたちが喜びそうなことに目星をつけてある。


「フキ畑、増やしたくないか?」

「「「おお!」」」


 小人に森の開拓は酷だよな。

 しかしこれは急務。なぜならフキ畑が広がるイコール、コロポックルの個体数が増えることに繋がる。それ則ち、妖精の森全体の生産力アップに直結するのだから。


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