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大魔王ぽっちゃりピクシーの生存戦略は、勇者と密約・森の要塞化・国家を転覆……と、まるで自重せず。  作者: 枝垂みかん


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穴牢の底にて③


 正直、いくつも知りたいことはあったが、あえて口にしなかった。

 そうすることによって、徴税官と兵士二人が重要だと感じる順に情報を吐き出させるのが狙い。

 我ながら非効率とも思うけど、生殺与奪権を持つ相手がなにを求めているのかわからないというのは、かなりの恐怖だったのだろう。思っていた以上にいろいろな話を聞けた。


 報告は、想像力の働く兵士A——エルラーレを捕まえようと動かなかった方——にさせている。


「この森の近郊を治めるカレックス国王は、皇帝陛下より王権を賜りました」


 あーあ、まとめて話しちゃったよ。

 近隣の統治機構、国王の名前、王国の成り立ち、分ければこれで三つとカウントできるのに。いちいち教えてはやらないけど。

 コイツからしたら話の前振りなのかもしれないが、善良な妖精さんであるオレは一つと数えてあげた。


 人間の社会、というか妖精の森の外のことをほとんど知らないので、聞くことすべてが新鮮。

 約束では一日三つ話せばいいとした。その可否は、聞いてからこっちで判断する。重複する内容や相場などの時間経過で変わるものは却下だ。


 話は多岐に渡った。がしかし、残念ながらレガリアについては未だ語られずじまい。

 これも情報も一つ。王国の徴税官——オレが理解しやすくするなら、現場の判断で強制徴収が許される立場の国税局員——でさえ、存在を知らされていないアイテムということになる。

 となると、一般的な魔王の認識というのも気になるところ。


「魔王は多くの魔物を従える特殊で強大な個体、という認識です」


 ふーん。相手の顔色を見るのが得意らしい。

 兵士Aは聞きたいことをすんなり話してくれた。


「この森の近くですと、最近、勇者メグル一行の手によってゴブリンの魔王が討伐されたと聞きました」


 それは知ってる、と言いかけてやめた。

 わざわざアイツと繋がってることを教えてやるべきじゃない。ますますコイツらを生かしておけなくなってしまうからな。


「お疲れさん。今日はもう充分だ。なにか必要なものはあるか?」

「い、いえ。過分な待遇をいただいておりますので」


 コロポックル特製のどんぐりペーストと干し肉、あとは山菜の塩漬け。同じものがつづいているが、いちおう三食は出してる。

 とはいえ、狭い場所に三人を閉じ込めてるわけだから、結構な苦痛だろ。


「……ぁ、あの」


 おずおずともう一人の、兵士Bが口を開く。


「おい!」


 すぐさま兵士Aに肘で制されていたが、オレは「つづけて」と促した。


「なにか、覚え書きに残せるものがあれば……」


 つまりメモ帳をくれと。

 そんなものはない。だが、曲がりなりにも徴税官とその連れなんだからペンとインクくらいは持っているはず。


「板切れでよければ用意するけど」

「お願いします!」


 書きづらいと思うぞ、と言い終える前にハッキリ返事をされてしまった。

 約束したからには近いうちに用意しよう。


 さてさて、いまさらだが妖精の森には牢屋などない。なので花の群生地から離れたところに深い穴を掘り、三人ともそこへ閉じ込めた。

 脱出は飛べないとまず不可能。

 兵士ABの拘束は解いて武装も解除もさせてあるので、仮によじ登ろうとしても、ただ掘られただけの穴は壁が脆いので足場にはなららない。ヘタをすれば崩れた土砂で生き埋めだ。

 念のため木製格子の蓋もしてあるので、まずもって逃げられる心配はしなくていいだろう。


「じゃあまた明日」


 それだけ告げて、オレは空中遊泳で外へと出た。



 翌日——

 気が向いたころに牢穴へ向かうと、兵士から取り上げた兜を被る直立二足歩行の和猫が二名、見張り番をしていた。

 べつに頼んだわけじゃないぞ。これはケットシーたちのごっこ遊びだ。


「槍でも持ってれば少しはさまになるんだけどな」


 というか長靴の方が似合うのでは?

 などと独り言未満をボヤくと、


「あんニャもんに頼らニャくっても、オイラには——」


 シャキーンと猫爪を見せびらかしてきた。

 わかるけどさ、だったら猫パンチの練習なんかしてないで、猫爪の熟練度を上げたらいいのに。


「その兜、耳が塞がって邪魔だろ。コロポックルに頼んで穴を空けてもらったらどうだ」


 ほっ、とケットシーたちは納得するよう口を丸くして、


「こうしちゃいらんニャいぜい」

「またニャ」


 さっそくとばかりに駆け出す。

 オマエら牢の見張りをしてたんじゃないかよ。べつにアイツらのは、ごっこ、だから構わないんだけど。

 でもせめて、牢の蓋は開けていって欲しかった。


 しかたない、自分でやるか。

 ぜんぶは無理でもズルズル引っぱって、牢穴に入れる隙間だけでも作らなければ。

 うんしょうんしょとミリ単位の努力をしていたら、


「手伝おうか?」


 聞き覚えのある優しげな声をかけられた。


「……オマエに借りを作ると後が怖い」

「こんなことくらいで貸しには思わないよ」


 そっちを見なくても誰かはわかる。


「ずいぶんと待たせるじゃないか、メグル」

「いろいろあってね」

「それはこっちのセリフだ——」


 と、強く出ようとした。だが、あまりに陰りの差した表情を見てしまいオレは言葉を失う。倉久手メグルだけじゃなく、連れの女子二人も同じ顔色だった。


「なにがあったんだ?」

「ちょっとヘマをしちゃって。話しの前に、いったん預けたモノを返してもらっていいかな」


 ……なるほど。コイツら『死んでもコンテニュー』したあとなんだな。


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