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大魔王ぽっちゃりピクシーの生存戦略は、勇者と密約・森の要塞化・国家を転覆……と、まるで自重せず。  作者: 枝垂みかん


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穴牢の底にて①


 なにを考えてるんだ、フェアリーのやつ。


「どうしてコボルトやケットシーを連れてこない」

「だってー、見るからに魔物って感じで怖がらせちゃうでしょー」


 直立二足歩行の柴犬ヅラと和猫ヅラを見て怖がる人間なんていないと思うぞ。

 それより遥かに、三桁近いピクシーの群れの方が恐れられるんじゃないか。主に農作物被害的な意味で。


「「「ぴぃ〜」」」


 ごめんごめん。べつにオマエらをディスったつもりはないんだ。ただな、羽の生えた三頭身マスコットも群れになると恐怖だろって話で。


「エルラーレ、悪いけど拘束できるものを分けてくれないか」

「うん。いいよね、お母ちゃん」


 ここに至って、ようやくフリーズしていた村人たちは動きだす。手早く徴税官らの手足を縛りあげ、犯罪者にするように胴にも縄をかけた。


「……ぽっちゃり妖精さん、ごめんね」

「なにが?」

「あたしがお花を見せたいなんて言わなかったら」


 たまたまだろ。コイツらがどれくらいの頻度で村に訪れていたのかは知らないから、かなりの偶然を引き当てたのかもしれないけど。それでも、


「今回のことと花を見にきたことに因果関係はないぞ」


 エルラーレのせいじゃない。


「んと……⁇」

「そうだなぁ、わざとってわけじゃないんだろ。これでわかるか?」


 ぜんぶ倉久手メグルが悪いんだ。すでにそう結論づけている。

 しかし、まだ落ち込んだままのエルラーレにかけてやれる適切な言葉を、オレは持ち合わせていなかった。


「じゃあな」

「……うん」


 はじめは『うるさいから帰れ』以上の感情を抱かなかった少女。その名前を聞き、生活のほんの極一部を知り、周囲ともコミュニケーションをとった結果が、別れ際のセリフにさえも気を使う始末か。

 なんなら、これから村に起こる今後のトラブルなどを危惧してもいる。オレは雑魚モンスター筆頭格——妖精のピクシーなのに……。ずいぶん大それたことを考えたもんだ。


 オレがエルラーレと話してるあいだに、


「「「ぴーぴっ、ぴーぴっ」」」

 

 ピクシー四天王が陣頭指揮をとり、徴税官と兵士二人を綱引きしていた。


「ガンバレガンバレ〜」


 フェアリーは手伝いもせず応援してるだけ。

 やっぱり、こういうヌルい感じがオレにはちょうどいい。



 ズルズル引きずりに引きずって、なんとか花の群生地まで到着。

 もちろん徴税官たちは途中で目覚めたが、ギャーギャー騒ぐままにさせておいたら、そのうち疲れたのかグッタリ静かになった。


 道中は問題なく、イイ汗かいたとばかりに花の蜜を茎ストローで啜るピクシーたち。それはいい。

 コボルトとケットシーが出迎えてくれたことにも言いたいことはあるけど、それもいい。

 だがしかしだ、目の前には絶対に見過ごしてはならない事態があった。


「これはどういうことだ?」


 出掛ける前に雑草を抜いたので、そこには本来、剥き出しの地面があるはず。なのにポッカリと大穴が空いているのはなぜだろう。


「掘ったワン」


 コボルトが掘ったのは見ればわかる。


「埋めるのが、人間を剥いたあとの後始末ニャんだろ」


 ……倉久手メグルめ。なんてことを吹き込んでくれたんだ。


「ニャ〜に、礼には及ばニャいって」


 ケットシーは招き猫みたいに手をパタパタ。猫っぽい妖精のくせして尻尾をフリフリ褒めろと要求。

 チラリと徴税官たちを見やれば、


「「「…………ン、ゴボッ」」」

 

 怯えた拍子に生唾を飲もうとしたが、叫びすぎてカラカラな喉が張りついて呼吸すら危うい感じで咳き込む。

 そんな過呼吸寸前で転がる捕虜たちを見下ろし、


「とりあえず剥くニャ」


 ケットシーたちは、シャキーンと猫爪を剥き出しにした。


「「「——ヒッ」」」


 待て待て、これ以上脅かすと酸欠でポックリ逝きかねない。コイツらには聞きたいことが山ほどあるんだ。


「叫ばれると喧しい。口に破いた布でも詰めておけ」

「おっ。ぽっちゃりピクシーは賢いニャ」


 ポンと肉球を打つと、いちおう持ち帰ったオレの衣服だった布を鋭い爪で、ツツーウ、音もなく裂く。

 あとは丸めてモゴモゴっと。

 これでおそらく呼吸は落ち着くはず。


 しかし、はじめから全力で脅すつもりだったので安心はさせてはマズイ。だから拘束したまま地面に転がしておき、一方的に話を聞かせつづけることにした。


「生き埋めにして、ここらの養分にするのも使い道としてはありだけど」

「「「……よーぶん⁇」」」

「ってなーに?」


 妖精たちに説明するのは、ムリだな。コイツらに理解できるわけがない。そもそもオレも園芸に詳しくないので、わかりやすく説明する自信もない。

 ガンガン圧をかけようとした途端、ほのぼの間抜けな会話になってしまったぞ。


「……フン」


 あっ、徴税官のやつ、いま鼻で笑ったな。兵士二人から信じられないものを見る目を向けられていることにも気づいてない様子。

 いいだろう。この期に及んでまだそういう態度を取るつもりなら、もう遠慮はいらない。

 とはいえこのまま埋める方向で話をつづけても、コイツのオツムじゃ実行まで移さなければ想像力が働かないと見た。ならばアレの出番だ。


「コボルト、例の水瓶を取ってきてくれないか」

「触るニャって言ってたやつか?」


 そう。コボルトの洞窟が襲われたときに電気分解して作った、アルカリ水。煮詰めたあとに厳重に封をして預かってもらっていたんだ。


「ああ。悪いんだがケットシーはコロポックルのところに行って、油と皿を分けてもらってきてくれ。あと干し肉も。つまみ食いしてもいいけど使うぶんは残しておいて」


 クックックッ。さぁて、恐怖の科学実験教室といこうじゃないか。


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