レガリア『鑑定の皿』①
古いRPGで、庭とか地面を適当に調べていたらお宝が見つかるってパターンはよくあった。超重要アイテムがなんのヒントもなく、それらしくもない場所にあったりとか。
オレらの住処である花の群生地に放置されたレガリアが、まさにそれ。
「たしか『闇の石板』だったか……」
スマホサイズの黒い石板には、これでもかとダークなフレーバーたっぷりの文字が刻まれている。
倉久手メグルの所有するレガリアで、所有者がいる以上それは動かせない。
まっ、そのうち踏みつけられた花が起き上がれば隠れるだろ。いちいち盗まれないよう気を配らなくていいのは助かる。
「さぁて、残る二つをどうするかだけど」
「ぴー」
「いつまで待たせるつもりニャんでい」
……。いつの間にかピクシーとケットシーがお行儀よく列になっていた。
どうやらコイツらは『鑑定の皿』を使わせたい様子。
でもなぁ、わくわくしてるとこ悪いけど、ガッカリするだけだぞ。ステータスを見なくても自分の実力くらいわかるだろうに。
いや、オレとしても興味はあるんだ。
しかしせっかくなら直接的なチカラが得られそうな『波の石板』を所有したい。二つともって手もあるにはあるが……、悩む。
「ぴー、ぴぴー」
「確かに。まずステータスを調べて、一番相性が良さそうなヤツが持てばいいだもんな」
という思慮深い同胞からのアドバイスを受け、とりあえずは森の妖精全員のステータスを鑑定してまわることにした。
まずは、いまかいまかと待ち侘びる面々から。
でもその前に、
「ええと、物理的に所持して所有を宣言、だったか」
ドーナツ盤を挟むように両手で保持。
よーし。いまから魔王になっちゃうぞー。なんてな。
「鑑定の皿はオレの物っと」
宣言を終えるや否や——ドクンッ。まるで身体の一部にでもなったみたいな一体感が走り、オレという存在に異物が割り込んだ。
「…………うえ、なんか気持ち悪っ」
気分が優れないのではなく、いきなり肩車されて視点が変えられた、そういう類の本能的な違和感に襲われた。
「……で、どう?」
「「「ぴー」」」
「「「んニャ⁇」」」
ほうほう。なんとなくわかったぞ。
ケットシーたちの態度は変わらないが、同胞ピクシーたちとはこれまで以上の信頼を寄せられたような気がする。
「ぴっぴー」
「いいから早く鑑定しろって。わかったよ」
……気のせいだった。というか自覚がないのかも。
オレとしても傅かれたいわけじゃないから、別にいいんだけど。
たしか倉久手メグルが『強い意志を持って云々』言っていたし、グループワークのときにでも試してみよう。
「じゃあ、いくぞ」
「ぴ」
身体測定じゃないんだからさぁ、そんなにピーンと背筋を伸ばさなくってもいいだろ。ホント、コイツらはノリだけで行動をする。
先頭のピクシーの頭に触れて「鑑定」と口に出した。すると——
個体名称 :なし
種族分類 :妖精種 ピクシー
魔力値 :34
理力値 :0
アビリティ:浮遊C +78
雷魔法F +1427
帯電体質F +1351
感電耐性F +1076
——と、ARグラスでもかけたみたいに宙に文字が浮かぶ。
どうやらオレが目にしたものは他のヤツには見えないらしい。というより、もし見えたとしても読めないだろう。だって日本語表記なんだもん。
しかし四桁とは……、予想外も予想外。これも含めた数値やアルファベットの意味は、あとでの検証にまわそう。
「あー、なんとも言えないけど、こらからもバリバリ発電しましょうって感じかな。頑張った成果は表れてると思うぞ」
「ぴっ」
つづくピクシーたちも魔力に一桁台の違いがあれど、大差なし。プラスが示すのは、おそらく熟練度だろう。これも似たような結果だった。
しかし参るぞ。全員に通信簿を口頭で伝えたから喉がカラカラだ。
こういうときこそ、茎ストローでツツーッと。花の蜜で糖分水分を同時補給。
ホッと息を吐く。と……、
「にゃんで列が伸びてるんだ」
「おいこらオイラのマネすんニャや。暇だったからニャ、フェアリーとコボルトも呼んどいた」
マジか。
「早くしてよねー」
「わくわくだワ〜ン」
……マジかぁ。
というわけで、妖精の森の仲間たちのステータス一覧。ザックリ(一の桁を四捨五入して)以下のとおり——
個体名称 :なし
種族分類 :妖精種 ケットシー
魔力値 :20
理力値 :0
アビリティ:猫打C +30
猫爪C +70
威嚇E +210
個体名称 :なし
種族分類 :妖精種 フェアリー
魔力値 :120
理力値 :0
アビリティ:浮遊C +440
魅了F
風魔法D +150
個体名称 :なし
種族分類 :妖精種 コボルト
魔力値 :30
理力値 :0
アビリティ:咆哮C +40
犬牙D +110
穴掘C +230
鉱石探知B +10
——以上。個体差は、ピクシーたちと同じく無視できるレベル。
コボルトの『鉱石探知B』など目を見張るものもあったが、総じて言えるのは、やはりみんな低いステータスだ。
あと、フェアリーの『魅了F』については触れないでおいた。言ったら拗ねそうだもんな。
なんとなくの傾向だけど、優秀なアビリティほどプラス値が低くなりがち。これって、高い技能ほど使用に際してたくさんの労力がかかるから、かもしれない。
逆に、ピクシーの『雷魔法F』なんかは静電気程度のチカラしかないので使いまくれる。結果、プラス値が増したんだと見た。
この推測が当たっているかは、そのうち要実験かな。
「アンタはやんないのー?」
フェアリーのやつ、少しくらい疲れたオレを労おうとは思わないのか。みんなに『よくできました』をしてオレはヘロヘロなんだぞ。
「どうせ他のピクシーと似たようなもんだろ」
「ええー。でもアンタっておデブじゃーん」
「——デブって言うなゴラぁあああーッ‼︎」
今回も完璧なタイミングで、髪の毛ブワリ。
こんなふうにピクシーたちは、蜂の一刺しみたいなピンチのときに使うスキルを、惜しみなく一発芸として使い倒してきた。だからこその四桁なんだろう。
それはよしとして、
「じゃあ、最後にオレか」
あんまりイイ予感しないんだよなぁ……。
ドーナツ盤を足で挟み、自分の頭に触れて、鑑定——
個体名称 :なし
種族分類 :妖精種 ぽっちゃりピクシーの魔王
魔力値 :5
理力値 :6319
アビリティ:浮遊F +8
雷魔法F +4
帯電体質F +1071
電撃耐性F +2782
——ほら、やっぱりバグってる。




