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私の中のもう1人の私が好きな人  作者: 秘翠 ミツキ


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22話



「色々調べて考えてみたんだ。今回のパターンとは少し違うけど……」


 数日後、再び蓮と勇希は文子の元を訪ねた。なんとも言い難い空気が流れる中、口火を切ったのは勇希だった。


「ーー文ちゃんの想いが強過ぎたからそれが消えなかった。ならその原因を取り除けば良いんじゃないかって思ったんだ」


 先日の事を踏まえた説明を勇希からされ半信半疑ではあるが、やってみる価値はあると思う。

 陳腐で単純な考えだが、要するに心残りがあるから想いが消えず成仏出来ない。その心残りを解消出来れば文子の意識は消えるというものだ。


「という事で文ちゃん、心残りは?」


「う〜ん……分からない」


「なんでもいいんだよ。行きたかった場所とかやりたかった事とかさ」


「う〜ん……やっぱり分からない」


「……」


「……」


 一応考える素振りを見せてはいるが、真剣さを感じられず苛っとしてくる。隣に座る勇希に視線を向けると苦笑した。恐らく同じように思っているに違いない。


「取り敢えず、文ちゃんが今やりたい事を全部やってみよう」


「そうだな、それしかない」


 しらみ潰しにやってみるしか今出来る事はない。 




 令和7年8月15日晴れーー朝から日差しは強く、ぐんぐんと気温も上がっていく。まだ午前10時だというのに既に汗ばむのを感じる。

 

「このソフトクリーム美味しい〜」


「本当だ、かなり濃厚な味がする」


 文子と勇希は呑気にプレミアムソフトクリームを食べながら仲良く雑談をしていた。その様子に蓮は深いため息を吐く。

 1時間半程掛けて同県の山の方にある牧場までやってきた。何故なら文子が動画で観た牧場のソフトクリームを食べたいと言い出したからだ。正直、ソフトクリームなら近場で買える所は沢山ある。だが文子の心残りがないようにわざわざ来るしかなかった。


「これなんの動物?」


「モルモットだよ」


「可愛いね」


「でもよく実験とかに使われてーー」


 勇希からの説明に、笑顔だった文子の顔は見る見る曇っていく。


「こんなに可愛いのに可哀想……」


「でもそのお陰で僕達は安心して薬とかを飲めてるんだよ。多少の犠牲は仕方がないのかもね」


「そうだね……」


 目を細め唇は弧を描くが文子からは悲しみの感情が伝わってきた。


「楽しかった!」


「結構歩いたし疲れた〜」


 丸1日牧場で過ごし帰路につく。

 テンション高く子供のようにはしゃいでいた2人は帰りの電車に乗ると程なくして寝てしまった。

 蓮は隣に座っている文子を見やる。

 身体は琴音に違いないが、本当に中身は別人だ。蓮や勇希以外の前では琴音として振る舞っているみたいだが、それでも蓮からすると違和感は拭えない。

 以前に感じた不安が現実となってしまった。

 それに本当にこんな事で琴音は目を覚まして元に戻るのだろうか……。

 電車の揺れる振動と走る音に耳を傾けながら、最寄駅まで呆然と座っていた。



 8月16日曇りーー池辺里駅近くのゲームセンターでクレーンゲームなどをして遊ぶ。帰りに二頭山神社でコンビニで買ったアイスを食べた。


 8月17日曇りのち晴れーーショッピングモールで買い物、文子に強請られてフリフリの日傘を勇希が買った。


 8月18日晴れのち曇りーー子供向けの遊園地に行き、子供に混ざって乗り物に乗った。


 8月19日晴れのち曇りーー二頭山神社のベンチに座り、暑い中雑談をした。


 8月20日晴れのち曇りーー今日は昼過ぎから琴音の部屋で3人は話し合いをしていた。


「それで何か変化あった?」


「う〜ん……よく分からない」


「分からないって、今琴ちゃんはどうなってるんだよ⁉︎」


「怒鳴らないでよ。勇希くん、蓮くんが怖い」


 文子は大袈裟に言いながら勇希に擦り寄る。

 この数日間で、2人はかなり仲良くなった気がする。元々勇希は文子に恋をしていた事もあり必要以上に優しく接しているし、文子は文子で勇希を勇の生まれ変わりだと思っているので妙に馴れ馴れしくしている。身体は琴音なので不快に感じるが、蓮にはどうする事も出来ない。その事がもどかしく余計に苛立ちを募らせた。


「中里くん、ちょっと落ち着いて。文ちゃんだって悪気はないし、ちゃんと協力してくれてるんだしさ」


「協力もなにも当然だろう。そもそも……」


 原因は文子にあると言い掛けた瞬間、文子が静かにほくそ笑む姿が目に映り口を閉じる。だが次の瞬間にはいつも通りの表情に戻っていた。見間違いだろうかと思うが、蓮は何か嫌な予感を感じる。


「まだ1週間も経ってないんだし、もう少し様子みようよ。夏休みだって後10日はあるんだからさ。という事で、今日は宿題終わらせちゃおうよ」


「喉乾いたでしょう。なにか持ってくるね」


「僕、コーラがいいな」


「蓮くんは?」


「……麦茶で」


「は〜い。じゃあ、今持ってくるね」


 文子のペースにハマっている気がしてならない。そう思うのに反射的に素直に返事をしてしまう。この数日、同じような状況に陥っている。

 その日は結局、3人で夏休みの宿題をやって解散をした。



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