第8話 はじまりの探偵
登場人物紹介
明智桜子 新米探偵
一柳裕子 新米探偵助手
二階堂博士 超常現象研究者
*登場人物その他名称は全てフィクションです。
私はいつものように事務仕事をしていた。
OLとして何年やって来ただろうか。
このまま同じルーティンを繰り返すと思っていた時だった。
旧友の裕子から突然連絡が来た。
何やら切迫している感じだったので、直ぐに会うことにした。
「久しぶり裕子、仕事は順調?」
「桜子は相変わらずな感じね。」
裕子と会うのは何年ぶりだろう。
「ところで、急に呼び出してどうしたの?」
「実は…。ちょっと信じられないないと思うんだけど…。」
何があったと言うのだ?
「桜子、オカルトの話とか信じる?」
は?オカルトとはいきなりだな。
「あんまりそう言うのは気にしないな。」
「だよね、普通関わりたくないよね…。」
裕子の様子からふざけているようには見えない。
「何かあったの裕子。話を聞くから。」
「桜子、私何か変なモノ見たの。」
幽霊でも見た?何だろ。
「変なモノってどんなの?」
「分かりやすく言うと化物かな。」
「どこで?」
私は昔からオカルトの類いは信じないが、興味は何故かあった。
「うちの近所に森があるでしょ。」
「あの森、何だか気味悪いよね。」
「あそこに化物みたいなものがいたのよ。」
裕子の家の近くには森があり、不気味な雰囲気はあった。
「いつ見たの?」
「最近。今までは全然見なかったのに…。」
今度の休みの日に調べに行くことにして、その日は帰った。
数日後、私と裕子は懐中電灯片手に森の入口に来た。
「ここ、いつ来てもやな感じするんだよね。」
「桜子ビビってるの?」
「そんなことは無いけどねぇ。」
やっぱり怖い感じはする。
その時だった。
近くから男性の声が聞こえて来た。
「君たち、まさかこの森に入るつもりか!」
「少し調べようかと…。」
「何じゃ探偵さんか。」
探偵?私普通のOLなんですけど。
でも、ここは何かヤバい感じだから話を合わせよう。
「こちらの場所の調査依頼が来たものですから、こちらは助手です。」
「桜子、何で私が…。」
すまない裕子、なんとなく流れでつい…。
裕子も察したようで、
「最近こちらにて、不審な動きも目撃されております。」
男性は納得したようだったが、
「じゃが、中に入ってはダメじゃよ。」
直感的に森の奥には何か危険を感じる。
「この森、普通ではないですね。」
「お前さん、わかるんか。」
「私はちろらし探偵社の明智、こちらは助手の一柳です。」
「わしゃ、この近くで研究をしておる二階堂じゃ。」
二階堂?聞いたことあるなぁ…。
あっ!
「ひょっとして物理学博士の二階堂教授ですか?」
「いかにも、しかし今は超常現象を研究しとる。」
超常現象ですって?とんでもないことでも起こっているの?
「最近起こり始めた現象が超常現象と関係があるんですか?」
「わしの開発したこの機械で測定した結果、この森で異常量の異変指数を示したのじゃ。」
とにかくこの森は激ヤバなんだな。
「今日のところはこれ以上森に近づくな。良ければ後日調査に同行するか?」
教授と打ち合わせをし、後日改めて調査をすることになった。
翌日、裕子とカフェで待ち合わせ今後の話をする。
「桜子、私助手って酷くない?」
「ごめん裕子。あの場はああでも言わないと。」
昔から2人だけだとリードする癖があるんだよなぁ。
「でもさ、裕子。私、本気で探偵してみようと思うんだ。」
「桜子ならそう言うと思ったよ。」
よく分かってる親友ですな。
「最近、仕事してるとこのままでいいのか考えるんだよね。」
「桜子はOLより探偵の方が向いてるよ。」
「裕子、手伝ってくれる?」
「桜子には優秀な『助手』が必要でしょ。」
もうやるしかない。私は会社を辞め、事務所の立ち上げの手続きを開始した。
二階堂教授の指定した日が来た。
「いよいよ探偵社としての仕事ね。」
「依頼人いないけど。」
現場の森に着くと教授が機械を操作している。
「こんにちは、教授。」
「おお、探偵さんたちじゃな。ワシのことは博士と呼んでくれ。」
博士と言うと急に胡散臭い感じになるな。
「博士、これから中に入るんですね。」
「迂闊に入るな。準備が必要じゃ。」
博士は何やら道具を用意した。
「いいか、お前たち。森の中では勝手な行動はするんじゃないぞ。ワシについて来るんじゃ。」
そう言うと、何か道具を渡された。
「その機械は絶対放すんじゃないぞ。」
いよいよ森の中に入る。
森には細い遊歩道があるが、歩く人はいない。この辺りに住む人からは不気味な森として扱われており、入るのは肝試しする若者くらいだ。
「博士、この森昔から変だったんですか?」
「いや、最近じゃな。以前も雰囲気は不気味じゃが、異変は起こっておらんかった。」
最近何かが起こり異変が発生し始めたということか。
「桜子、この辺だよ。化物みたの。」
裕子が怯えだす。
「何でこんなとこ来たのよ?」
「親と喧嘩しちゃって頭きてたから、なんかねぇ…。」
そういうのあるよね。
「博士、化物とかいるんですか?」
「おそらくその化物は変異体じゃな。」
変異体?何それ...。
「変異体とは動物が異変により変化したモノじゃよ。通常よりも強化されてな。」
ヤバい動物ってこと?厄介そうだな。
「今日はこのへんにして撤収するぞ。」
博士がマジな顔してる。深入りしない方がいいのだろう。
事務所に戻り裕子とお茶を飲む。
「ねぇ、桜子。」
「どうしたの?」
「あの森のせいで困る人出てくるんじゃない。」
「そうね。でも博士が言うように、普通に入っては危険よね。」
困った人は助けてあげたい。でも怪異に対抗する術を持ってはいない。
「二階堂博士に協力してもらいながら依頼解決するのはどう?」
博士の協力は必須だ。
「それなら表向きは探偵社、実態は超常現象研究所ってのはどう?」
「それいいね。」
こうして私と裕子は探偵社の仕事を始めた。
第9話 予告
いよいよ怪異の本丸、謎の森の解決に向かうちろらし探偵社のメンバー。異変の発生は何故起こったのか?
次回 「不思議の森のネコミ」
若き頃の明智所長と一柳オーナー。旧友のバディと博士登場でいよいよクライマックスへ。
次からファイナルエピソードです。
ネコミとらっちーの活躍?!に期待。