第10話(最終話) ちろらし探偵社よ永遠なれ
登場人物紹介
明智桜子 ちろらし探偵社所長
猫柳明美 通称ネコミ、超力探偵。
らっちーとバディ。
二階堂 通称シザー、博士の息子。
らっちー しゃべる犬、探偵犬。
一柳裕子 明智所長の元バディ。
加賀照美 シェフ探偵
二階堂博士 超常現象研究の第一人者。
シザーの父親。
*登場人物その他名称は全てフィクションです。
目の前にあるアレが今まで起こった異変の元凶だ。
ここからは少し距離があるが相当大きい。
「あの大きな玉が皆を困らせていたんですね。」
明智所長が頷く。
『どうすんじゃ、あれだけのもの。』
らっちービビってる?
そうだよね。今までは何とかなってきたけど、これは流石に…。
「この物質は不安や恐怖、人間のマイナスオーラを吸収し拡大しておる。」
「博士、何か対処法はあるんですか?」
皆博士に注目する。
「無意識に、この近くにいる者は、森が不気味だとか、何か出そうで怖いという思念を飛ばすのじゃ。ならば、逆のプラスオーラをたたきつければ、アレを抑えることは出来るな。」
博士は機械を動かし始める。
「しかし、問題はまだある。」
「博士、どんな問題が?」
「あの変異のコアじゃ。そもそも何らかの事象が変異のコアに起こり膨張したんじゃ。」
「なら、まずオーラを小さくしてコアを排除するってことですよね。」
でもどうやって?
『ここはワシの出番じゃな。』
「らっちーどうすんの?」
らっちーの目がマジだ。
『ワシゃ異変によって話せるようになった。じゃが探偵社の皆と事件に関わり楽しさも持っとる。』
所長がいつになく厳しい顔つきでらっちーをみる。
「らっちー、あなたから変異を取り除けば話すことは二度と出来ないけど。」
えー!らっちーしゃべれなくなるの!
まあ、元々話すことなんて出来ないから変異のせいで会話出来てたけど…。
「らっちー…。」
『ネコミどの。ワシゃバディを組めて楽しかったぞ。じゃが、あの異変を解消しない限り安心して暮らせん。』
横にいた鹿も頷き、
『私も手伝うよ、らっちーさん。森の仲間も困っているからね。』
博士が、
「準備が出来たぞい。これより、怪異の元凶駆除作戦を説明する!」
全員博士の周りに集まる。
「まず、威力を増すあの球体に突っ込むのは無謀じゃ。よってこの電磁波発生装置にて異変のパワーを落とす。」
何か機械のエンジンが激しく動き出した。
「球体のパワーが落ちたとしても、常人が近づける代物じゃない。そこで、異変の影響を受けとるらっちーと鹿に球体内部に潜入し、この機械をコアに着けるんじゃ。」
『コアとか分からんが…。』
「実際の物は分からんが、感覚的に察知出来るじゃろ。」
シザーさんが何やら準備している。
「コアが分かれば、うちの息子とお嬢ちゃんの空間操作能力で破壊するんじゃ。」
ここまで来たらやるっきゃないと。
「では球体に照射する。」
博士の動かす機械から何やら発射し球体に当たる。
暫くすると球体が小さくなって来た。
らっちーと鹿が球体の中に入って行く。
らっちー大丈夫かな?とか思ってたら2匹とも出て来た。
『多分コアだと思うもんに付けたぞ。』
こんな時だけど、何からっちーらしい。
博士が見ているモニターに何か映った。
「これじゃな。」
「博士これがコアなんですか?」
箱みたいな物が見える。その周りに雲状の異変がまとわりついてる。
「シザーさん!」
「ネコミ、コア周辺は俺が蹴散らすから、お前はコアを圧縮破壊しろ!」
シザーさんは球体に近づき、機械を振り回す。
球体の中心付近が明るくなり、真ん中にコアが見えた。
アレだ!頭にコアの箱を圧縮するイメージを思い描く。瞬間真ん中が眩しく光る。
光りがおさまり森が静かになる。
異変の球体は無くなっていた。
「危機は去ったな。」
博士が機械を片付けてる。
あのコアって何だったんだろ。
「博士、元凶の箱って何だったんですか?」
「箱自体ではなく中身に相当なものが入っていたんじゃろうが、そんなもの確かめる余裕は無かったな。」
これで、異変も起こらなくなるんだよね。
「らっちー、やったよ!」
「ワンワンワン!」
しゃべれなくなったけど、らっちーの言いたいことは分かる気がする。
数日後、事務所で掃除してたら二階堂博士とシザーさんが来た。
「所長はおるかね。」
「今呼んで来ます。」
所長室から明智所長が出てくる。
「二階堂博士、この度はありがとうございました。」
「なに、わしもあんな厄介なもんがあったらゆっくり研究も出来んからな。」
「二階堂君はどうするの?」
「俺は親父の手伝いで、物理なんとかをするよ。探偵ごっこは終わりだな。」
二階堂親子は一礼すると帰って行った。
奥で食事を作っていた加賀さんが美味しそうな料理を運んで来る。
「加賀さん、めっちゃ美味しそうです。」
「ありがとな、ネコミちゃん。」
「所長、ちょっといいですか。」
「照美、どうしたの?」
加賀さんどうしたんだろ。
「私、料理人として本格的に仕事しようと思います。ですので、探偵としてはケジメをつけます。」
えー、加賀さん辞めちゃうの。
「いいんじゃない。自分のお店出したいとか言ってたし。」
所長引き留めないんだ。そうだよね、加賀さんも自分の人生があるんだ。
「加賀さん、寂しくなっちゃいますが、頑張って下さいね。」
「ネコミちゃん、店出したら来てね。」
きっと評判のレストランになるよね。
ちろらし探偵社も明智所長と私だけになってしまった。
私の能力も異変の消滅と同時に無くなった。
らっちーの散歩をしながら、ふとこれからの事を考えた。
事務所に戻り所長と話す。
「所長、私一人前の探偵として活躍したいです。」
「そうね。ネコミなら出来るんじゃない。」
これからも依頼人の為にちろらし探偵社でガンバルぞー!
ちろらし探偵社の事件簿 完
ネコミちゃんが巻き込まれた事件簿はこれにて終了です。また別のお話しでお会い出来ればと思います。




