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死神さんは私の守護神  作者: あいはらしのや
6/10

作戦決行

 決起集会から1週間が経った。


 時刻は18時頃。既に日は落ちた上、厚い雲に覆われ月も星も見えない。


『黒神さん、居ないですね。』

『ああ。見当たらないな。』

『少しずつ右に歩いてください。もうちょっと…』


 ここは薄暗く鉄臭い、あの鉄工所倉庫の中。

 私は黒神さんのコートの中。

 警察官大塚慶次さんの目撃情報を彼女達から貰い、直ぐそこに居るヤンキー達に見つからないよう、二人羽織で張り込み中。。。


『もう少し右ですって!』

『歩き難いんだから、待ってろ。』


『うぉっ!?』

 黒神さんのコートを踏み、2人の体が倒れる!


 ドサッと倒れたものの、黒神さんが庇ってくれたため、一応バレてはいない。


『良かった〜』

『良かったじゃないだろ!何でついてきた!』

『そんなの、1人だけで張り込みなんて、黒神さん強く無いし。』

『なに~!?』


「誰だ!!」

 暗がりに響く声


『!!!!』

 口を塞ぎ、息を殺す。


「おい!お前見てこい!!」

「エッ!マジっすか?」

「いいから見てこい!!」

「ウッス。。」

 少しづつ、足音が近づいてくる。


 コツン。。コツン。。


「ハッ…」

 黒神さんマジ!?このタイミングのくしゃみは無しだから〜!!!


「誰だよ…!!ゆ、幽霊じゃないよな!?」


 ぶつぶつ言いながら、近づいてくる。ヤンキーは、幽霊怖い人多いの?


 え~い!どうにでもなれ!!


 私は近くにあった小石を手に取り、鉄製の機械に向けて投げつけた!!

 カーン!!

 と高い音が響くと同時に、

「うゎあああ!!」『ハクション!!』


「どうした!何かあったか?!」

「ゆ、幽霊っす!!」

「はぁ?いるわけねぇだろ!」

「い、いるっす!!鉄の音が、、カーンって!!カーンって!!」

「ふざけてんじゃねぞ!お前は役に立たねぇな!!」

「す、すんません!」


 バタバタッと走っていく姿を、コートの隙間から覗く。

 良かった〜!!何とかなった〜

 もう!!くしゃみなんて、タイミング悪すぎ!



 どこからか、着信音が鳴る。

「はい。…分かりました。…ではそのように。」


 男が返事をしている。その男は電話を切ると、近くに居た若い男を呼び寄せる。


「今日、決行だ。準備しとけ。」


 言葉を発さず頷いた若い男は、誰かに電話を掛け始める。


「準備しろ。人を集めとけ。今日0時決行だ。」


「今日0時です。いだちさん」


 何かが起こる…。このまま見ていても、埒が明かない!!

 今日の0時には何か分かる!!なら!


『黒神さん、私に考えがあります!!一旦帰ります。』

『分かった。』


―――――――――――――――――――――――――


 家に帰り、皆に集まってもらった。


「何か策があるの?」

 杉浦美津紀さんは食い気味に詰め寄る。


「今日の0時に決行とだけ聞いただけだが、どうするつもりだ?」

 黒神さんも不思議そう。


「大丈夫。任せて欲しい!」

 大丈夫。上手くいく。絶対に、見つけてみせる!!


「オレは何すればいいっすか?」

「先ずは、桂木さん。警察を連れて、あの倉庫に来てください!」

「エッ!オレが逮捕ッスか?」

「違う違う!連れてきてほしいだけです。タイミングは、私が連絡します。」

「分かったッス。」


「それなら、その場で110番のが早いんじゃないか?」

 黒神さんに問われる。


「それでは、意味がないんです。麻薬取締班に来て欲しいので。」


「あと、杉浦美津紀さん、山本麗奈さん立川梨花さんは、怖いかもしれないですが、私と一緒に来て下さい。」


「なにか出来るわけじゃないよ?」

「物は触れないし…。」

 3人共、不思議そうな顔をしている。


「大丈夫です。何かあった時に黒神さんに連絡して欲しいだけです。」


「おい!なにする気だ!!」

 黒神さんが困惑している。が、そのまま話を続ける。


「黒神さんには、この内容で手紙を書いてほしいんです。その手紙を、姿を見られないように、警察の麻薬取締班の方に渡るようにして下さい。」


 下書きの内容を書いた紙を手渡す。

「コレは…!?」


 手紙の内容を見た黒神さんは驚きの表情を浮かべる。大丈夫。多分。使えるものはすべて使って、必ず成功させる!!


「黒神さんはその手紙を渡し、桂木さんと一緒に倉庫に来て下さい。

 黒神さんに頼むことが多くて申し訳ないですが、よろしくお願いします!」


「分かった。お前はどうするつもりだ?」

「私は、タイミングを見て電話します。」


「あの倉庫にずっと居るつもりか?危なすぎる!!」

「大丈夫です。この間みたいに無理はしませんから。」

「……分かった。絶対に出しゃばるなよ!!」


 黒神さんは、心配してくれているらしい。


「分かりました。では、皆さん決行です!!」


―――――――――――――――――――――――――


 PM11:45

 暗闇に人影が集まる。

 いくつかの懐中電灯の明かりが集まり、少しづつ消え、残る3つのライトが照らすのは、ジュラルミンケース。


『アレか。』

 私は身を潜め、カメラを構える。

 フラッシュは焚けない。タイミングを見て音を消しシャッターを押す。


「そろそろだな。見張りは良いか?」

「大丈夫です。」


 昼間のヤンキーとは違う人物達。多分、この場所を“その日”だけ使う為、カモフラージュで奴等は居ただけなのだろう。


 私も、メールをする。

[桂木さん、そろそろ来て下さい。]

 よし。準備は整った!!


 PM0:00

 暗闇に紛れるように、黒塗りの車が入って来た。車のドアが開き、スーツのおじさんが2人出てくる。

 一人はジュラルミンを持っている。


「おう。揃ってるか?」

「こちらです。」

 ジュラルミンが開けられ、中には入った白い袋が見える。


『今だ!』シャッターを押す。


 キョロキョロっと周りを見渡す側近の男。

 スッと隠れた。危なー!!


「では。これを。」

 もう一つのジュラルミンが開けられるが、中身が見えない!


『早く来て!桂木さん!』


 これでは現行犯で捕まえれない!せめて、写真を…


 ジャリッ

『!!!!』ヤバい!!靴の音が!!

 静かな真夜中、ポツポツと雨が降り始める。


「誰だ!?」

「探せ!!」

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!

 息を殺すが、鼓動は高鳴り、息遣いが荒くなる。小さくしゃがみ、目をぎゅっと瞑った!お願い!見つけないで!!

 

 すると、私に覆いかぶさる杉浦美津紀さん、山本麗奈さん立川梨花さんの3人。

「お願い!!」

「来ないで!」

「結月ちゃん!!」






「…ダメだよ?こんな所に女の子1人じゃ。」


4人の思いは無惨にも打ち砕かれた。


「!!」


 3人をすり抜け、腕を強く引っ張られ、ボスらしき男の元へ連れて行かれる。握られた腕を必至に振り解こうとするが、ビクともしない。足で踏ん張り、投げ飛ばそうと身を捻るが、あっさりと両手を後ろに組まされた。

 コレは完全に捕まった!!


「誰か!!」


 出た声は、自分の思っているよりも、か細く、到底誰かに届くものではなかった。それは、私が恐れていることを意味している。


 そして、私が初めて“死”を意識した瞬間だった。


「連れて行け。」

「はい。」


 私は口にガムテープを貼られ、手を拘束された。頭に布を被せられ、視界が真っ暗になった。


「#*%@#$*&!」誰か助けて…!

 


「コイツ以外見当たりません。」

「そうか、前と同じように処理しとけ。」

「はい。」



 車に乗せられた私は、後部座席に放り入れられ、横になる。

 あゝ、これで死んじゃうんだろうか?死神をボディーガードにしたのが、神様の機嫌を損ねたのだろうか。日々の行いが災いしたのかな。

 杉浦美津紀さん、山本麗奈さん、立川梨花さんの体、見つけられなかった…。大きな口叩いたくせに…。私は目を瞑りその時を静かに待った。


 車のエンジン音と男達の気配。解けるはずのない腕を捻ってみる。痛いだけで、どうにもならない。はぁ…


 ふっと頭によぎった言葉。

「前と同じように処理しておけ」


 そう聞こえた…。

 私はずっと、あの倉庫に体があると思っていた。だから探したし、捕まえたら見つけられると思っていた。だけど、別の場所だったら…?今、私が一番彼女達に近づいているなら!?


 これは、チャンスだ!最後のチャンス!

 スマホはズボンの後ろポケットに入っている。連絡が取れれば良い!

 そっと縛られた手で、取り出そうとする。あとちょっと…


 キキィーッ!!  あっ!

 車の急ブレーキでスマホが手から零れる。


「コイツ、連絡取ろうとしたのか!大人しくしてろ!!」

「オッッァ!!」

 腹部を殴られた。痛い…痛いよ…。


 車は蛇行し、何処に向かっているのか分からない。少し寒くなった気がする。高度が上がったのか?山…?


 車が止まった。バタンッバタンッと数人が車を降りた音がする。

 外で何が起こっているんだろう。声も聞こえない。


「降りろ!!」

 腕を掴まれ、車から引き摺り出される。足が言うこと聞かない。震えてるのか?私って、情けないな。


 足を蹴られ、ドサッと転んだ。そこは冷たい土の上。


「じゃあ、埋めとけ。」


 ドンッと背中を蹴られ、体がフッと落ちる感覚があった。落ちた距離はそんなにないはずなのに、視界が奪われているからか、物凄く深く感じる。


 雨がポツ。ポツ。っと体に当たる。男達の声を掻き消すように、木々に当たる雨音が大きくなり、より一層肌寒くなる。


 硬い、冷たい、痛い…。

 こんな思いであの3人は亡くなったの…?

 ごめんなさい。助けてあげられなかった。見つけられなかった。これで私も終わり…。


 土が少しずつ掛けられ、足や頭に小石が当たる。足が埋もれて動かない。遂に首元に砂がかかる。雨に濡れ重くなった土が、空気をも奪う。



 黒神さん、、、シュークリームごめんね。

 そんなつもりじゃなかった。私、少し嫉妬したんだ。勝手に、待っててくれるなんて思った。勝手に、私にだけ優しいなんて思った。シュークリームだけで、助けてくれるなんて虫が良すぎるよね。


 バイバイ…。

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