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死神さんは私の守護神  作者: あいはらしのや
5/10

作戦会議

「体…ですか?」


日は傾き、立ち込める雲に夕日が飲み込まれる。


お店はそろそろ閉店の時間。立ち話は難しいと感じ、店裏の自宅へ連れてきた。


6畳の畳部屋に、小さなキッチンがくっついた部屋。真ん中に置いてある古いこたつテーブルを囲む、幽霊3人、死神1人、行きてる人間1人と、まぁカオスな状況だけど…


「なんで、桂木さんも居るんですか!?」


ちゃっかり座ってる…。


「オレにも、手伝わせて下さい!!」


「今回は、憑依とかそんなんじゃないし、桂木さんを巻き込むわけには行きません!」

「水臭いこと言わないでくださいよ!!オレだって、兄貴や鬼十さんの役に立ちたいッス!!」


「この子可愛いねー!」

「若いよねぇ!?」

「この子は視えてないの?」


ジーッと桂木さんを左右で囲み見つめ、話す女性幽霊3人組。


「なんか、寒いッスね…。」


「桂木さんは視えない人です。19歳です。」


私は一応6人分のお茶をそれぞれ並べ、着席する。


「そ~なのね〜!」

「10代かぁ〜。」

「犬みたいで可愛い〜!」


「やっぱり、オレだけ寒いッスか?」


「寒いのは…桂木さんの右手に2人と左手に1人、其々女性が座っていらっしゃいますので。」


「…マ…マジですか…?」


「コイツらの話を聞くためだ。お前は辞めとくか?」

黒神さんが桂木さんの様子を伺う。


桂木さんは顔をブンブン左右に振り、

「だ、大丈夫ッス!!」


めちゃくちゃ固まってるけど、意欲はあるようだ。


「最初に、お名前を伺っても良いですか?」


桂木さんの左手に座る、明るい茶髪のストレートロングの女性に話しかける。


「わたしはの名前は杉浦美津紀。宜しく。」


金髪ロングで髪を巻いた女性が続く。

「わたしは、立川梨花。こっちは、」


「山本麗奈でーす!」

猫っぽいボブカットの女性。


3人共に美人だ。


「私は鬼十結月です。こちらは黒神零さん、そちらは、桂木高志さんです。」


私の左に座る黒神さんと、テーブルを挟んで向かいに座る桂木さんを紹介する。


「では、本題に入りたいんですが。」


私も話を進めよう。


「えー?もうちょっと話してからでいいじゃない〜」

「「ねぇ〜!!」」


 はぁ…。こういう人達、面倒くさいかも。


「探さなくて良いんだな?」


黒神さんがちょっぴり脅してくれる。空気がピリッとした。


「分かったわよ。」

「久しぶりだったから、楽しかっただけ。」

「そうね、話すわ。」


3人の内、一番落ち着いた雰囲気の杉浦美津紀さんが、事の経緯を話し始める。



「私達は大学の心霊サークル仲間なの。

6年前、その日はサークル仲間で心霊スポット巡りをしてた。男3人女1人と私達3人の合わせて7人。

色々巡って、最後に着いたのはあの倉庫だった…。

====================================

建ち並ぶ倉庫のひとつに足を踏み入れる。

ガランとした倉庫の中を、懐中電灯の明かりが複雑に照らす。


「こんな所、入って大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫!此処、使われなくなってから15年くらい経つんだよ。」

「へぇ~!!イイ感じだねぇ。」

「うん。イイ感じに出そう〜!!」


鉄の匂いと埃を被ったままの機材が、雰囲気をより一層強める。


「此処で昔、工場長だった人が溶鉱炉事故で亡くなって、その後使われなくなったらしい。」


「その人には子供がいて、ある日その子供が誘拐されたんだ…。

一生懸命働きながら見つけようと、毎日毎日働いては、夢中で探し回った…。

そして、遂には過労で自分が溶鉱炉に転落して亡くなった。

火だるまになり、体が焼け無くなったそのお父さんは今も、誘拐された子供を探して、その爛れた姿を引き摺り、まだ彷徨ってるんだって〜!!」


抑揚を付け語られる言葉に、皆の背筋が凍る。


カンッカンッカカンッッ!

突然の甲高い鉄の音が響き渡る。


【ぎゃぁーーーーー!!!!!!】


私達は絶叫した。

音に驚き、散り散りに逃げてしまった事で、男子3人だけが持っていた懐中電灯の明かりが消え、暗闇に私達は包まれた。


「痛っ!!」


何処かに足を引っ掛け、麗奈が動けなくなった。


「ちょっと待ってて、私見てくる!」


そう言って芽郁が何処か行ってしまった。


あ、芽郁っていうのは、もう1人の女子ね。


暗闇で一応くっついてた私達は、2つの光が見えた。何かがキラリと光り、多分箱みたいなものだったと思う。そんな物持ってきた覚えはなかったけど、怖かったのと明かりが救いに見えて、


「こっちこっち〜!!」


私は暗いながらも手を振った。

すると、そのうちの1つの光が近づいて来た。


ピカッ!!


当てられたライトに目が眩んだ瞬間、私達は意識を失った…。

====================================

そのまま、私達は死んでいたの。だから、どう亡くなったのか、何処に体があるのか分からないの。」


話終わった彼女達は、疑義の念に苛まれているように見えた。


「そうだったんですね。だから、場所しか分からないと…。」


「そうです。だけど、あの場所も時が経ってアイツらの根城になってしまった。」


「その後も、探しに行ったりしたんですか?」


「あ、あの!オレにも話してもらえますか?」


今まで黙っていた桂木さんが、口を開く。

あ、忘れてた。でも、ある意味聞こえてなくて良かったかもしれない。

あのビビリな桂木さんには、怪談話にしか聞こえないだろうから…


「3人共鉄工所で亡くなったが、場所以外憶えておらず、体が何処にあるかわからない。という話だ。」


黒神さん、いくら何でも掻い摘んで話しすぎでは…。


「そうなんすね。理解したっす。」

単純だ。


「私達だって、何度も探した。けど、無いの。」


「ご家族はいらっしゃいますか?」

探してくれる生きている人がいる筈。


「私達、捜索願は出ているの。」

立花梨花さんがポツリと話す。


「だけど見つかってない!!もう、誰も探してくれないよ…。」

山本麗奈さんは苛立つも、その頬にはほろりと涙が伝う。


そんな顔をされたら…


「大丈夫です!!私が必ず探し出します!!」


言わない訳にはいかない!!


「ありがとうっ!!」

ぱぁっと表情が明るくなる。


「でも、どうやって探すつもりだ?」

黒神さんの言う通り。


そう、どうやって…

…あっ!!


「黒神さん!そのコートって、姿が見えないんですよね?」

「ああ。フードを被れば普通の人には見えない。」

「だったら、そのコートを貸して下さい!私があの倉庫をくまなく探してきます!!」

「無理だ。貸したところで姿は消えない。コレは俺が着るから見えなくなるんだ。」


「エッ。」


そうなの〜!?だからあの時、黒神さんはコートで包んだだけだったんだ!!ん〜二人羽織で探しに行くのは難しい。なら……


「私があのヤンキー達を引き付けるから、黒神さんが探すっていうのは?!」


【ダメ(だ)(ッス)!!】

その場の全員の声が揃う。


「良いわけ無い!貴方が怪我をする可能性が大き過ぎる!!」

「そうよ!さっきだって危ない所だったのに!!」


「見ていたんですか?」


「えぇ。私達が気づいた時には囲まれてたから、この人に伝える事しか出来なかったけど。」


黒神さんを指差し、心配してくれる。


「ありがとうございます。でも、他に方法が……。」


一同黙り込む。口火を切ったのは桂木さんだった。


「それにしても、何で亡くなったんすか?」


今までの会話が中途半端に伝わってるから、よく分かってないみたい。雑なんだよな、、黒神さん。


「大学の心霊サークル7人で鉄工倉庫にいたけど、暗闇で音がして散り散りに逃げ、こちらの3人が残り、明かりが見えたから声を上げると、ライトを当てられ、その瞬間亡くなっていた。もう少し説明するとこんな感じ。」

怖くない程度に説明を付け足す。


「心霊サークル……。」


桂木さんは絶対入らないだろうな…心霊サークル。


「一緒にいた方達は無事だったんすか?」


「ええ。大学まで見に行ったもの。」


「無事だそうです。大学まで見に行ったそうです。」

私が通訳する。


「じゃあ、誰がライト当てたんすかね?」


確かに。別の人物がいたって事…?


「当時7人以外に、誰か居たとか思い出せませんか?」


「ん〜。誰も居なかったよね?」

「居たら、入れなかっただろうし。」

「でもあの時、遠くに明かりが見えた一瞬だけど、光った“箱”みたいなのを持った人が…」


「いたんですか!?」


「多分ですけど。」


だとすれば、他殺が濃厚だよね…。


「倉庫 殺人 ジュラルミン 検索っと」


通訳を聞き、桂木さんがスマホで検索する。


「ジュラルミンって…決まったわけじゃないよ?」

「光った箱、倉庫=裏取引のジュラルミンが俺の想像っす!」


「あながち間違ってはないようだ。」


今まで俯き、静かだった黒神さんが口を開く。


「どういう意味ですか?」

「今、情報が入った。あの倉庫で死人が出た。」


手には掌ほどの小さなカード。見せてくれたそのカードには、[大塚慶次 享年36歳]とだけ書かれていた。


「これだけで、何で裏取引だなんて。」

「コイツは刑事だ。桂木のバイク事故を調査した刑事。」

「そうなんすか!?」


「2年前麻薬取締班に移動したのも、わかっている。」

「いつの間に…。」

「死神をなめるなよ?!」


「では、当時もそんな麻薬取引があったって事…?」

「可能性が高い。」

「じゃあ、警察に行って事件に巻き込まれたって言えば…?」

「コイツらとの関係をどうやって説明すんだよ。」


黒神さんの言う通り。警察に突撃したって、私がこの女性達との関係が無さすぎる。

まして、私が“視える人”って言ったところで、信じてはくれないだろう。それなら…


「倉庫で何があったのか、証拠があれば良いって事ですよね!しかも、黒神さんに名簿が届いたということは、大塚慶次さんが浮遊霊として居るってことですよね!!」


「そうだな…。また、仕事が増えたってことだ…。」


「そうと決まれば、私は黒神さんと大塚慶次さんを探して、情報を得ましょう!!」


「オレも、そのヤンキーの情報を集めてくるッス!」


「私達も、まだあの倉庫で得られる情報があるかもしれないから、見張ってるわ!」


「では皆さん、協力お願いします。絶対体を見つけましょう!」


【オー!!】


満月の明るい夜、小さな部屋での決起集会となった…。

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