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2.某パン工場

作業内容:ライン,蔵出し,他(日によって異なる)

実働:6時間(12時~18時)

休憩:なし

給与:9,000円+交通費

or

実働:10時間(18時~5時)

休憩:1時間

給与:18,375円+交通費


 特に技能を持たない成人男性が簡単にかつ定期的に就労できて、法に触れない範囲で1日に稼ぐことのできる金額の上限だと思っている。肉体を酷使する某物流現場での夜勤仕分け作業よりも優れている。もちろん例外もあり、今後紹介するであろう24時間勤務の交通量調査等は1日で25,000円稼げることもあった。ただ睡眠時間を加味した場合、金銭面でここを超えることは難しいように感じる。そのため家賃の支払いが迫っていた際には何度もお世話になった。


 勤務初日。長い安全講習を受講し、着替えてから配属先を伝えられた。蔵出しという、商品を移動する係のようだ。現場で実際に手を動かしてまず遭遇したのは理不尽であった。


 具体的には安全講習において「この台車は一人の場合、〇台までしか運んではいけません。それ以上は危険です。絶対に守りましょう」といった教えであり愚かにも私はそれを律儀に守ってしまったのだ。


「おい!?サボってるのか!?」


 すれ違い様、社員から発せられる罵倒、一瞬何を言われたのか理解できなかった。すでに他の現場で何度か日雇いを経験しており、肉体的な不調もなく、むしろ速いぐらいのスピードだと思っていたからだ。まだ現場に出て10分も経っていないが、額には汗が滲んでいた。どこからどう見れば、サボっていることになるのか。


「なんで〇台しか運んでねーんだよ!」


 衝撃。安全講習は単なるパフォーマンスであった。日雇い現場に限らず、どのような社会でもこういったことはままある。実態にそぐわない取り決め事。例えば労働契約では年休124日だったとしても、実際に休めるとは限らない。あの手この手で追い詰められて、年休が5分の1以下になることだって起こりえるのだ。それに比べたら多少安全度が落ちるくらいなんてことない。


 ただ、会社を辞めてから1年近く寝込んでいた自分は、ある程度の思考力が戻ってしまっていた。何の得にもならないとわかっていながらも口答えしてしまったのだ。「先ほど担当の〇〇課長という人から安全講習で〇台までしか運べないと言われまして」と。すると社員は更に血の気が増した。


「そんなの守ってたら終わるわけねぇだろ!バカか!」


 そう。そうなのだ。現場には現場のルールがある。管理する側がポーズでなんとなく決めた空想上のやり方は、意味がない。むしろ害悪といってもよい。ふつふつと沸きあがる労働者という名の、奴隷としての自覚。謝罪を済ませた私は、それ以降、安全講習で教わったことを全て捨て去った。周囲を見渡し、同じ数を運ぶよう努めたのだ。


 どれだけの時間が経っただろう。汗だくで台車を運び続ける私に対して、話しかけてくる人がいたのだ。その人は荒っぽい口調で「使えない!使えない!」を連呼していたため、緊張が走る。


「外人ってマジで使えないっすよね!」


 馴れ馴れしく媚びた表情でそう告げる彼とは、信じられないが初対面だ。距離感どうなってるんだ。恐らくは寡黙で淡々と作業をする私と友好的な関係を築きたかったのだろう。ただ、初対面で、仲良くなるために用いるのが他者の悪口とはどういった了見なのだろう。その後、何度も話しかけてくるため、私の職務に「気のない返事で躱し続ける心労」が加わった。


 長くなってきたので某パン工場編分割します。ライン作業のこととか、楽な部署含めて色々書きたいこともありますが。いったんここまで。

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