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 先述の通り、僕は堺のパチンコ問屋を飛んだ。一応退職届は書いたがあれが通るとは思っていない。

 さて、借金まみれである。何が「さて」なのかももはや分からないくらいには混沌とした様相を呈しているが、この頃はまだ辛うじて返済ができていた。労働時間が5倍になったとはいえ、一応月収も1,5倍にはなっていたからだ。

 それが辞めたとあればどうだろう。転職経験をお持ちの方は分かると思うが、転職をすると収入に間ができる。会社によって締め日も給料日もまちまちだからである。前職の給料がきちんと入ればまだ耐えきれるのだろうが、あの辞め方をして振り込まれていなくてもあまり文句は言えない状況にある。

 とはいえこのままではにっちもさっちもいかない。支払い方法はあちらが選べるが、貰う権利はこちらにあるということは知っている。

 辞めた翌月末、僕は堂々と件のパチンコ問屋に電話することにした。

「生きとったんかお前」

 そういえば退職届には「借金ヤバすぎ!逃げます!」みたいな雑な理由付けを書いたような気がする。「仕事しんどい」も書いたが、それをぼかすようになんかテキトーなことを付け足したせいでむしろ心配されていたようだ。

「とりあえず来いや。手渡しやわ」

 どの面下げてと皆様思うかもしれないが、20数万はでかい。翌日早速取りに行くことにした。

 翌日、僕は堺でくどくどと説教を受けた。若者だから許される顛末と、若者でも捌ききれないっぽい借金を抱えた人間に対する初老連中の対応は、とりあえず説教をしたもののなんとなく優しい感じがした。

 僕は晴れて前月分の給料を手にした。すぐ返済で7割消えた。

 ところでこの時点での僕の職場は奈良の田原本である。賃金格差という単語があるが、腐っても都市圏である大阪府とTHE地方都市の奈良県では当時最低賃金に100円弱くらいの差があった。しかもアルバイトである。何が言いたいかというと、月収が半減に近いのだ。

 ここにきて支払いは滞りがちになっていた。粘り倒せば1ヶ月くらいは待ってもらえるということにこの頃になると気付いている。とりあえずアコムを待ってもらうことにして、約定額が安いレイクを払う。家賃も駐車場代もずるずると遅れていく。

 その中で唯一楽天カードだけはちゃんと約定日に支払いができていた。生活費のほとんどを楽天カードで賄っているので、止められると割と困るのだ。おかげさまで限度額も上がっていた。

 しかしその分支払い額も大きい。田原本で働き始めて2ヶ月目にして僕は悟った。

「こら無理やな」

 待ってもらったアコムを払い、遅れていた家賃を払うとどうしても楽天カードが詰まる。レイクとライフティもあるのだ。大体年金も奨学金も猶予してもらってこれである。国保料も払わないといけない。

「…飛ばすか」

 人生案外なんとかなることをここのところ覚えた。どうせ口座に金が入ってなければ引き落としもへったくれもないのだ。

 しかしただ飛ばすだけでは勿体ない。この発想が意味不明だと思う方はこの先読み進めるのが難しくなるかもしれない。ちなみに僕も意味不明だと思う。

 僕は40万に上がった限度額いっぱいにゲーム機を買ってきた。一度思うと妙にアクティブなのが前田という男で、方々の家電量販店でプレステだのWiiだのを買ってきて、それを自宅に大量にあった小説やマンガやCDと一緒に箱に詰めて駿河屋とかいう買取サイトに送り付けた。所謂現金化というやつである。買取金額の振込口座はカードの引き落とし口座と別にしておいた。そしてその口座から借金を返して、楽天カードからの連絡はガン無視することにした。

 しかし頑張って(?)現金化したものも滞納していた国保料で持っていかれて大して残らない。多少残ったものは「これだけ残っててもしょうがない」という訳の分からぬ理由で競馬に突っ込んで、無事スってしまった。

 ただありがたいことにおかげでアルバイト代は生活費に回せる。ふりかけご飯からの脱却だ!

 とはならないのがギャンブル中毒の性である。負けたら負けたまま終わるのが癪でしょうがない。「これは生活費!」と言って避けていた金を、ちまちま手をつけては負けていく。

 田原本での仕事は楽しかった。アダルトショップなのだが、アダルトゲームが売りの店だった。昔懐かしのでかい箱に、シリアルコードとCD-ROMが入ったあれである。基本ワンオペだったが、そんなに忙しい店ではなかったのでその間に色んな勉強をした。同業以外で役に立たない知識ばかりだったが、割合面白い世界だった。

 しかしここだけではどうにも金が回らない。やむなく、副業を探すことにした。

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