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君彦のモットー

 

 君彦の何気ない言葉に、猫又と響子は口をあんぐりとさせながら絶句していた。

 猫又に関しては絶句と共に含み笑いすら浮かべているが、二人のそんな反応を見て自分が何かおかしいことでも言ったのかと全く自覚がない態度で君彦は首を傾げている。


『をいをい、エライまたスピーディーな展開じゃねぇか。 まさか会っていきなり交際宣言たぁ、お前も隅に置けねぇなぁ・・・って黒依はどうすんだよ? あぁ、二股? 二股君彦ってか?』


「お前は一体何の話をしてんだよっ! オレが言いたいのはそういうことじゃなくてっ!! 猫又に取り憑かれてるオレが志岐城さんと一緒にいることで、その間だけでも色情霊を何とか出来ないかって意味でだなぁ! 全く・・・オレはともかく志岐城さんに失礼だろ」


 君彦からハッキリとそう訂正されて、何とも複雑そうな表情を浮かべる響子。

 本来ならばこんなぞんざいな扱いをされる方が響子にとっては願ってもないことなのだが、ここまで眼中にない扱いをされるのも色情霊に取り憑かれて以来滅多にないことであった。

 とりあえず君彦の言いたいことはわかったのだが、どう考えてもその案が無謀かつ有り得ないという事実だけは否めない。


「言っとくけどそんなのあたしは絶対お断りだからね!? ただでさえ男が大嫌いなのに、何で今日初めて会ったばっかのあんたとこれから先もずっと一緒にいなきゃなんないわけ?」


「確かにそうかもしれないけど・・・、せめて凄腕の霊媒師が見つかるまでの間だけでもさ」


「却下!」


『もうやめとけって君彦、本人がイヤだっつってんだから放っておきゃいいんだよ』


「あんたは黙ってなさいよ!」


 響子が苛立ちを猫又にぶつけると、猫又もまた響子に向かって『フーッ!』と威嚇した。

 このままでは埒が明かないと思った響子は君彦を睨みつけながら、本当の目的を尋ねる。

 やはりどうしても君彦のことが信用出来ない。

 自分に色情霊が取り憑いているという点に関しては認めるとしても、響子と全く関わりがない上に放っておいても君彦自身に何か災いが降りかかるわけでもない。

 響子を助けることに何の利益も発生しないのに、なぜ君彦はこうまでして響子を助けようとするのか理解出来なかったのだ。

 ましてや君彦はれっきとした『男』だ、『オス』だ、『male』だ。

 色情霊に取り憑かれている限り響子が戦い続けなければならない最大の敵である。

 だから響子は、君彦ですら心から信用することが出来ずにいたのだ。


「・・・ひとつだけ聞くけど、何であんたはあたしなんかの為にそこまで必死になって助けようとすんの? あたしを助けてあんたに何か得があるわけ? 仮にあんたのお陰であたしが色情霊から解放されたとしても、あたしがあんたにお礼をするとは限らないのよ。 だってあんたが勝手に一方的に助けようとしてるだけだもの。 先に言っておくけど、あたしに見返りを求めてるつもりなら全くの無駄だから。 さ、どう? あたしなんかを助ける気持ちなんて綺麗さっぱりなくなったでしょ?」


 かたくなに拒絶する響子の姿を見て、君彦は真っ直ぐと・・・真剣に見据えた。

 響子もまた、これで君彦が男としての本性を現わして自分の前から去ってくれることを願っている。

 見返りも何もなしに、自分のような敵対心剥き出しの女なんかを助けようとする男がこの世にいるわけがない。

 どうせ結局は・・・最終的には見返りを得ようとするはずだ、男はみんなそうなのだから。

 響子はまるで自分にそう言い聞かせるように、心の中で何度も繰り返した。


「オレのお祖父ちゃんが・・・」


「・・・え?」


 君彦の声が囁くように小さくて、響子は思わず聞き逃す所だった。


「オレのお祖父ちゃん、すごく霊感が強くて霊媒師みたいなことをしてた人だったんだ」


 突然身の上話を語りだした、響子は少し動揺しながらも君彦の言葉に割って入ることが出来ずにいた。

 祖父の話をする君彦の表情がとても寂しく、孤独を感じさせるような・・・そんな物憂げな雰囲気を感じたからだ。

 猫又は顔を洗うフリをして、窓の外に目をやる。


「別に商売として悪霊退治をしていたわけじゃないけど、お祖父ちゃんも幽霊や物の怪のことで困ってる人達を放っておけない性分だったみたいでさ。 たまに知り合いから悪霊退治みたいなことを頼まれたりして、それでたくさんの人達を幽霊や物の怪から助けて来たんだよ。 オレ・・・ずっと幼い頃に両親を事故で亡くしてて、以来ずっとお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに育てられたんだ。

 色んな人達の頼み事を聞いて、そして感謝されてるお祖父ちゃんを見て、とても尊敬してた・・・。

 

 困ってる人を見たら助けてあげること。

 自分に出来ることなら、最後まで頑張ってみること。


 お祖父ちゃんからもらった最期の言葉なんだ、・・・結局オレが10歳の時に亡くなったんだけど。 だからオレはお祖父ちゃんみたいに誰かの役に立ちたいって思うようになったんだよ、助けたいって。 見返りとか、お礼とか・・・そういうのは関係ないよ。 だって言い変えてみればこれはオレの自己満足のようなものだし、そんなものを求めるものじゃないからね。 志岐城さんが困ってるから助けてあげたいって思った。 自分に出来ることがあるから、最後まで諦めないで頑張りたいって思った。 ・・・ただそれだけだよ」


 本当の気持ちを告げた、包み隠さずに・・・ありのままを。

 ただ、『信じて欲しい』から。

 だから君彦は祖父のことも話して聞かせた、今まで友達の誰にも・・・君彦が想いを抱いている黒依にすら話していないのに。

 目の前にいる女性を助けたい一心で、君彦は自分の過去を話して聞かせたのだ。


 言うべきことは全て伝えたつもりだ。

 あとは・・・、響子次第。

 響子が君彦を信じてくれるかどうか、全てはそれにかかっていた。


 



 響子がなかなか君彦のことを信じてくれないので話が進みません(泣)

余談ですが、お互い自己紹介はきちんと済ませております。 一応本名をフルネームで明かしておりますが響子に至っては住んでる所を始めプライベートな内容は一切君彦に話していません。

いつの間にやら君彦が響子のフルネームを知っている状態からスタートしていたので、不思議に思っている方へ参考までに。


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