心配する女の子二人、いや三人
ゴールデンウィーク最後の日、黒依と響子は前日に連絡を取り合って学校の前に来ていた。
響子はクラスが違ったので電話をかけたり出来なかったが、黒依はゴールデンウィークの間ずっと毎日のように君彦に電話をかけ続け、結局いつもバイトだったり忙しそうにしてたりと・・・。
連日、猫又に関しての話を切り出すことが出来なかった。
そして最後の日、さすがにこのまま放置しておくわけにはいかないと判断した黒依がわざわざ響子の連絡先を調べて、学校前まで呼び出したのである。
「とにかく! このままじゃ君彦クンも猫又ちゃんも可哀想だから、あたし達で何とかしよ!」
やる気満々の黒依とは裏腹に響子はいまいちノリ気になれず、しらけた表情で事実を述べる。
「何とかしよ・・・って言ってもさ、これって普通にあいつらの問題でしょ?
部外者のあたし達が口出しするようなことじゃないんじゃない?」
さらりと言い放った言葉に思いのほか黒依がムキになって反論する。
「そんなんじゃダメなのよっ!
志岐城さんだって学校に居る間中ずっと気になってたでしょ!?
猫又ちゃんがいなくなって放心状態になってる君彦クンのこと!
あれじゃただの抜け殻! 死人と一緒よ!」
「・・・何気に凄まじいこと言ってるわね、あんた」
全く会話が成立しないまま数分経過し、それからようやくこれからどうするのかを本格的に話し合うことになった。しかし黒依が先程から携帯で君彦の家に電話をかけているが一向に出る気配がないので、家にはいないと推測する。
家にいないとなればあとはバイト先しか心当たりがないと思った二人は、黒依が以前バイトに関する話を君彦としていた時に場所も聞いていたので、二人が早速君彦のバイト先に向かおうとした矢先だった。
遠くの方から女の子の叫ぶ声が聞こえたので響子は思わず振り向き、上を見上げた。すると青空の向こうから赤いスカートをはいた女の子、カナが慌てて飛んでる姿が目に入る。
「えっと、確かあんた猫又の知り合い・・・だっけ?
そんなに慌ててどうしたのよ」
「お姉ちゃん大変なの!
あたしずっと猫又ちゃんの行方を探してたんだけど、やっと見つけたと思って追いかけようとしたら犬のお兄ちゃんが出て来て、猫又ちゃんと一緒に犬の神社へ行っちゃったの!
犬のお兄ちゃんも猫又ちゃんもものすごく怖い顔してて、あたし怖くなって・・・っ!
でも君彦お兄ちゃんの家に行ったら誰もいなかったから、もしかして学校にいるのかと思って・・・。
そしたらお姉ちゃんがいたから・・・っ、ねぇあたしどうしよう!!」
咳き込むように喋り出すカナの言葉を整理しながら、もしかしたら事態は結構深刻なのかもしれないと察した響子は黒依の方に向き直る。すると黒依は笑顔でにこにこしたままだったので、黒依には幽霊の類を見たり聞いたり出来なかったことを思い出した。
「一体どうしたの? 志岐城さん」
(めんどくさ~・・・)
と思いつつ響子はカナの言葉を整理した状態で説明する。その間にもカナは相変わらず響子の後ろに隠れたままだった。
事態を把握した二人は物事を順序良く進める為に打ち合わせをする、主に黒依の提案であったが。
「それじゃあたしが君彦クンがいそうな心当たりのある場所を探すから、志岐城さんは犬塚クンの方よろしくね!」
「はぁっ!? なんであたしがっ!?」
無愛想な犬塚の顔を思い出すだけで胸の奥がイライラしてくる響子はすぐさま反論した、それ以前に相手は男。響子が最も憎むべき存在の元へ行かなければいけないと言われ、苛立ちは更に上昇する。
しかし黒依は正論を述べた。
「あたしには『何も見えない』し『何も聞こえない』けど、今も志岐城さんの後ろに幽霊の女の子がいるんでしょ?
それに猫又ちゃんの姿もあたしじゃ『見る』ことが出来ないから、志岐城さんが一番うってつけだと思うんだけど。
幽霊の女の子と一緒なら少なくとも、猫又ちゃんと犬塚クンが向かった場所がわかるんだから・・・ね?」
「う・・・、まぁ・・・確かにっ!」
ズバリなことを指摘された響子は反論する言葉が何もなく、言おうと思っていた文句を飲み込んだ。
これで役割分担が決定し、二人は早速目的地へと向かう。
響子はカナと一緒に犬の神社、すなわち犬塚の実家だという噂の犬塚神社へ。
そして黒依は君彦が立ち寄りそうな場所をくまなく探すことになった。
黒依と別れた直後に響子はふと思った。
(てゆうか・・・猫又のやつがどこに行ったのか探す方が、よっぽど大変じゃない?
面倒臭いこととかはちゃっかり避けるタイプだと思ってたのに・・・、それとも猫又の行動範囲が極端に狭いとか?)
そんなことを考えながら響子は、自分の背丈程の高さを飛んで行くカナを追いかけるように走って行った。