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物の怪の世界へようこそ

 紺色のジャージを着た黒髪のおさげ娘、もとい志岐城 響子に殴り飛ばされた君彦はそのまま気を失ってしまった。

 ハッキリ言って君彦はケンカが弱い、運動神経も鈍い、ボクシング経験のある響子の右ストリートを避ける反射神経などを持ち合わせているはずもない。

 完全に伸びてしまった君彦の回りを二本足でちょろちょろと走り回りながら猫又は、前足をバタバタとバタつかせて慌てふためく。


『君彦っ!? 君彦――っ!! しっかりしろ、傷は浅いぞっ! 不死鳥の如く蘇りやがれぇ――っ! そんで早く家に帰ってオレ様にメシをたらふく食わせるんだぁぁぁ~~っ!!』


 所詮猫の考えることなど、飼い主(?)より食い扶持である。

 響子は伸びた君彦を毛程も気にすることなくそのまま立ち去ろうとしたので、猫又の目がキランと殺意に満ちてると二足歩行で追いかける!

 ぼてぼてとお腹を揺らしながら!


『おいテメー、待ちやがれぃっ! オレ様の食い扶持に何てことしやがんだ、しかもそのまま見捨てて立ち去ろうたぁどういう了見だクラァッ!』

 

 びしぃっと左前足を突き付けるが、当然響子に猫又の声どころか姿すら見えていない。

 響子にまとわりついている色情霊はクスクスと含み笑いを浮かべながら、冷たい眼差しで見据えている。


『カッチ――ン! 完全にキレたぞ……このオレ様を馬鹿にしたらどうなるか! 身を以て教えてやるぜ、ッッシャアァァ――!!』


 牙を剥き出しにして威嚇すると猫又は全身の毛を逆立てて、ぽっちゃりした体とは思えない程高く高くジャンプした!

 その優雅で華麗なジャンプはフィギュアスケートのようにとてもしなやかで、猫又は多少自分に酔ったような表情を浮かべながら大股を広げて、160センチはある響子の頭の上を軽々とまたいで行く。

 それから見事に四本足で着地して、満足げな笑みを浮かべた。


『ふっ……、華麗に決まったぜ!』


 猫又にまたがれた響子は突然、持っていたエコバッグを落としてそのまま硬直していた。

 まるで金縛りにでもあったかのようにじっと立ち尽くしたまま、怪訝な表情を浮かべて視線をきょろきょろさせる。


(え……、今のは何!? 何か急に全身が軽くなったような……、なんだか頭がスッキリしたような??)


 言葉ではうまく説明出来ない奇妙な感覚に頭を悩ませていると、自分の目の前に立っているものがふいに目に入った。

 毛色はアメリカンショートヘアを思わせるが、模様はマーブル状ではなくトラネコそのものである。

 子猫とは到底思えないそのふてぶてしい顔はどうひいき目に見てもせいぜい7~8歳といった所、メタボ気味なぼってりとした体型と普通の猫とは思えない巨大な体。

 小型犬にすら匹敵する……いやそれ以上かもしれない大きさであり、響子はこれ程までに大きな猫を今まで一度も見たことがなかった。

 なぜか挑戦的な眼差しでこちらを振り返ったポーズのまま、響子をじっと見据えているではないか。

 そして何より……体型や大きさ以前に、その猫は今まで響子が見て来た猫とは明らかにオカシイ所があった。


(――え!? 何、……え!? 尻尾が……、尻尾が2本生えてる!? ――えぇっ!?)


 奇妙な沈黙が流れた。

 響子は商店街の裏道でナンパしてきた男の子を殴り飛ばした後、変な猫と一触即発な雰囲気に直面している。


 ――と、まさにその時だった。


「うぅ~~ん……、いたたぁ……」


 響子の後ろで気を失っていた君彦が意識を取り戻して、呻きながら起き上がった。

 それを確認した猫又が声を上げる。


『情けねぇぞ君彦、女のパンチで伸びるなんざ男じゃねぇぜ!』


「――えっ!?」


 響子は耳を疑った。

 後ろを振り向いた途端、猫がいた方から声がしたのだ……おっさんみたいな声が。

 そしてもう一度瞬時に振り返るが、目の前におっさんなどどこにもいない。

 ――いるのはブサイクな猫だけ。

 まさかと思いつつも、響子は顔を引きつらせながら冷や汗をかいている。

 響子が震える手で猫又の方を指さし、口を金魚のようにパクパクさせているのを見た猫又は面白げに、悪巧みを思い付いた笑みを浮かべた。

 動物が笑ったり怒ったり出来ないと思うことなかれ、特にこの猫又は……。

 君彦は殴られた頬をさすりながら呆然とした仕草で目の前の光景に目をやる、そこには色情霊に取り憑かれている女性……響子と猫又が向かい合っていたのだ。

 事情がうまく飲み込めない上、猫又の姿は普通の人間には見えないと理解していたので、余計に向かい合っている光景が不思議に思える。


「……え? 何この風景。 何が一体どうなってるんだ!?」


 君彦がこちらの状態に気付いたのを合図に、猫又はひょうきんな笑みを浮かべながら軽くジャンプすると二本足で着地して、この間テレビで見た大物お笑い芸人のコマネチを完コピして見せた!


『コマネチっ!!』


 それをバッチリ目撃した響子は悲鳴を上げる。

同時に君彦は響子の絶叫を聞くなり、この女性には猫又が見えていると瞬時に把握した。

 基本的に他の小説と違って、こちらの方では短めの掲載といたします。

ギャグ・コミックス感覚で書いているので気持ちの方をリラックスさせて、頭の中の方もゆるゆるにして読んでいただけたらと思います。


 ちなみに、猫又のモデルは作者が現在飼っている愛猫をそのまま描写しております。

今年の夏で15歳、猫は10歳を超えると猫又の修行期間に入り人語も理解するとのこと。

うちの猫も猫又の修行中、現在人語を(一応)解しておりますが猫集会には参加していないので試練を受けることはないと思われます(・・・ほっ)

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