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相性、最悪!?

 

 ようやく1時限目が終わり、早速君彦は隣のBクラスへ向かおうとした。

 終業ベルが鳴った途端に席を立って出て行こうとする君彦に、斜め前の席に座っていた黒依が気付き声をかける。


「あれ? 君彦クン・・・どこ行くの?」


「隣のBクラスだよ、ほら今朝志岐城さんとの会話が途中になっちゃったからね」


 黒依に声をかけられすっかり緩んだ顔になった君彦は、満面の笑みで答える。

 一瞬だけ君彦の答えに首を傾げた黒依は、にっこり微笑むと席を立って君彦について来た。


「ねぇ、あたしも一緒に行っていいかな?」


「うんうん勿論! 全然構わないよ~!」


 何の疑いもせず憧れの黒依に付き添われ全く悪い気のしない君彦は、天にも昇るような思いであっさりと承諾してしまう。

 君彦と一緒に教室を出て、そのまま向かって左隣のクラスへと向かう。

 教室はすぐ隣なので時間がかかることなくすぐに到着するが、その間にも二人は会話を交わしていた。


「君彦クンって今朝会った志岐城さんって人とお友達だったの? あたし全然知らなかったな~」


「実は昨日初めて知り合ったんだよ、それまでは志岐城さんが同じ学校に通ってるってことも知らなかったんだけどね」


 ―――――――ガラッ!


 君彦がBクラスのドアを開けようとした瞬間、突然ドアが勢いよく開いて思わず驚く。

 すると目の前には響子が立っていて、当然その足元には猫又が眠そうな顔をしながら座り込んでいた。

 ぎろりと君彦を睨みつけて来る響子に君彦はたじろぎながら、片手を上げて挨拶をする。


(―――――――――怖っ!)


 響子はいかにも不満たっぷりの顔で君彦を凝視して来るので、君彦は猫又が何か余計なことをしたのかと思い・・・呑気にあくびをしている猫又に向かってしゃがみこむと、思い切り睨みつけて問いただした。


「猫又・・・、お前まさか志岐城さんに何か迷惑をかけたんじゃないだろうな!?」


 両手で顔を掴まれ、そのまま顔の皮膚を横に引っ張られた猫又はあられもない表情になる・・・(猫又はオスだが)


『何もしてねぇって、むしろ大人しくしてたっつーの!』


「じゃあ何で志岐城さん、こんなに怒ってんだよ!」


「別に怒ってないわよ、ただ1時限目の間ず~~っと自分の今までの人生の空しさを振り返って腹が立っただけ。大体こいつが足元で―――――――――」


「わぁ~~、もしかしてここに猫又ちゃんがいるの!?」


 急に空気が乱された。

 響子の話の途中に割って入った黒依の黄色い声が響き渡り、一瞬Bクラスの教室内にいた生徒がこちらを振り向く。

 それでも黒依は気にすることなく君彦が掴んでいるであろう場所を見つめながら、にっこりと羨ましそうに微笑んでいた。

 突然会話を中断させられて、響子は呆れた表情になりながらしゃがんでいる君彦に向かって話しかける。


「つか、この子誰!? 確か今朝もあんたと一緒にいたようないなかったような・・・??」


 そう問われ、君彦は頬をピンク色に染めながら黒依を響子に紹介しようと立ち上がる。

 急に君彦の態度が急変したように感じた響子は、眉根を寄せた。


「あぁ、彼女はオレと同じクラスの狐崎こざき黒依ちゃんって言うんだ。黒依ちゃんとオレは・・・、その・・・」


「単なるお友達だよ!」


 可愛い声で断言する黒依に、君彦は少しだけ・・・ほんの少しだけ肩を落としてがっかりとしていた。

 それから再びしゃがみこんでぶつぶつと独り言を呟き出す。


「友達・・・、そう・・・友達だよ。そうなんだけど、何だろ・・・この寂しい気持ち・・・」


『まぁまぁ、所詮お前はイイ人止まりなんだからあんま気にすんなって、な? 君彦』


 苦笑しながら寂しげに涙を堪える君彦の肩にぽんっと片方の前足を乗せて、慰めるポーズをする猫又。

 そんな君彦と猫又のことは無視して、響子は黒依のことをじろじろと見つめた。

 すると黒依は始終笑みを浮かべたままで、響子に向かって片手を差し出し声をかける。


「初めまして、志岐城さん! あたしのことは黒依って呼んでね、良かったらあたしともお友達になってほしいな」


 唐突な申し出に響子は当然戸惑う、しかし全く物怖じせずに握手を求めて来る黒依の姿に響子は押されて思わず頷いてしまう。

 そして初めて友達になろうと言って来た黒依に対して、握手に応じようとしたその瞬間だった。

 再び2時限目の授業が始まるベルが鳴り出し・・・。


「あっ! 次の授業がもう始まっちゃう、君彦クン・・・教室に戻ろ!」


 そう叫ぶと黒依はしゃがみこんでいる君彦の腕を引っ張って、Aクラスの教室へと戻って行った。

 当然・・・片手を差し出したままで固まっている響子、ひくひくと笑顔が引きつる。


「何・・・あれ、―――――――――わざとかっ!?」


 急に怒りが込み上げて来た、そして狐崎黒依とは気が合わないかもしれないと瞬時に悟った響子に・・・猫又は興味のない顔でアドバイスらしきものをした。


『気にすんな、黒依は大体いつもあんな感じだから』


「大体あんな感じって、どんな感じよ! 向こうから友達になろうって手ぇ差し出して来たのに、ベルが鳴った途端置き去りにして行くか普通っ!?」


『だから気にすんなって、あれが黒依にとっての普通なんだよ。興味のない話には未練がないし、人の話も・・・まぁ大体聞いちゃいねぇけどな。でもそんなに悪い女じゃないぜ? 扱いに慣れさえすれば・・・だけど』


 響子はまだ腑に落ちない様子で席に戻ると、まだもやもやとした感情がなくならずに悶々としている。

 それから急に、突然に・・・なぜ君彦が黒依と共にこの教室へやって来たのかが気になって来た。


(・・・あの二人、一体どういう関係なわけ? さっききっぱりと友達って断言してたけど、猫又君彦の方はそうでもない素振りだったし・・・。大体なんで猫又迎えに来んのにあの子も一緒に来るわけ、意味わかんないんだけど。・・・あれ? そういえばさっきあの子、猫又の存在を知ってるっぽくなかった? まぁ見えてなかったみたいだけど、何であの子は猫又のこと知ってんのよ・・・。あ~~~全然わけわかんない! てゆうか、何でこんなにイライラするわけ!? 何かよくわからないけど無性に腹が立つ! すっごいムカついて来た!)


 完全に黒依に対して拒絶反応が現れた響子は、その後も授業の合間の休み時間に教室に訪れて来る君彦と黒依をあしらう度に苛立ちがどんどん募って行ったのは言うまでもない。

 そして遂に、昼休みになったら一緒に弁当を食べようと誘われた響子は、ムカつく気持ちとは裏腹に猫又や色情霊に関して話したいことがあったのも事実なので、結局誘いを断ることが出来なかった。

 



 

 基本的に今回のような日常的な学園生活が繰り広げられます、この小説は。

猫又やら物の怪やら幽霊やら出て来ますが、決して霊界探偵モノではないのでバトルとかそういった展開にはならないと・・・思われます、きっと。

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