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初めまして今晩は

 今回新キャラが登場します、かなりのキーマンです(笑)

これからも重要人物が登場しますので、楽しみにしていてください。

 響子がマンションへ帰る途中、相変わらず不審な男に付け回され、ナンパされ、何度も道や時間を尋ねられた。

 いつものように適当にあしらってようやく自宅に辿り着く。

 独身用のマンションの5階、一応セキュリティシステムが万全にされているので不審者はここまで来れないようになっている。

 特にこの5階は響子の保護者の知り合いが部屋を借りて住んでるので、気兼ねなく出入りすることが出来るのだ。

 つまり響子に言い寄って来る不審な男がこの5階をうろつけば、すぐさま管理人や警察に通報されるという寸法になっているのである。

 マンションの鍵を開けて中に入るなりリビングの方を覗く、時計の針は6時。

 まだ早いがシャワーに入ろうと、響子はもう一度室内の戸締りを厳重にチェックしてから着替えを取り出しシャワー室へ行く。

 ジャージや下着を脱いでシャワーに入るが、響子は普通の女の子とは少し違っていてものすごく入浴時間が短い。

 最短記録で3分、最長でも10分程度しか入らないのだ。

 テキパキとシャンプー、リンスを済ませると、花○のせっけんを泡立てたスポンジで全身を磨き、あとはサッとシャワーで流す。


「はぁ~~、サッパリした!」


 満足気にシャワー室から出て、バスタオルでロングヘアの水気を取る。


「それにしても・・・、ホント今日は変な一日だったわ。まさかこのあたしに向かって悪霊が取り憑いてる・・・なんて言って来る男、今までいなかったからね。・・・悪いヤツじゃないみたいだけど、男であることに変わりはないし。一応警戒だけは怠らないにしても・・・明日から面倒臭いわね、ずっと一緒にいるって・・・もしかして登下校とか弁当時間とか休み時間とかも一緒ってわけじゃないわよね・・・!? でも、本当ならどこにいようと声をかけて来る男が後を絶えなかったのに・・・今日あいつと一緒にいる間はそれ程声をかけられたりしなかった。もしかして本当にあの猫又っていう化け猫と一緒にいることで、あたしに取り憑いてる色情霊って奴が退いてたことになるのかしら・・・!?」


 本当の所はどうかわからないが、あの猫又が普通の人間に見えていない事実だけは否定しようがなかった。

 大きな溜め息をつきながら響子が顔を上げて洗面台にある鏡で自分の姿を見た時・・・。


「―――――――――っっ!!」


 シャワーの湯気に紛れて響子の顔のすぐ横に、まるで平安時代かそこらの古めかしい雰囲気をした花魁風の若い女が、鏡越しに響子に向かって微笑んでいるのがハッキリと目に映った!

 半透明でうっすらとしているが、見間違いでも何でもなく・・・まとわりつくようにしっかりと響子の背後にしがみつく形で取り憑いている色情霊を目にした響子は悲鳴を上げた。


「きゃあああああああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁああああっっっっ!!!!」


 すぐさま鏡の前から身を隠し、しゃがみこむ形で腰を抜かした響子は恐怖の余り自分の足で立つことが出来ずにいた。

 手に持っていたバスタオルを力一杯抱き締めるようにして、湯気で曇る鏡を涙目で見つめながら震える。


「そ・・・っ、そんなっ!! あれが・・・あれが幽霊、嘘でしょ!? 本当にこのあたしに悪霊が取り憑いてるって言うわけ!?

 冗談じゃないわ・・・あんなのがあたしのすぐ近くにずっといるなんてっ!!」


 殆どパニック状態に近い形で響子が脅えていると、どこからか響子の名前を呼ぶ声と共にまるで牛が突進して来るような騒音と振動が近付いて来た。

 ドドドドドドッとものすごい足音が近付いて来る、それと同時に野太い声が響子の名前を叫びながら迫って来ている。


「ど―――――――――したの―――――――――っ!? きょおおおおおおおおおこおおおおぉぉぉおおおっっっ!!!」


 響子のマンションのドアがものすごい音を立ててこじ開けられて、『何』かが室内に侵入して来た。

 ドスドスと大きな足音を立てながら近所迷惑などお構いなしに声を荒らげる。


「きょおおこおおっっ!? どこなの!? 一体どこにいるのっっ!? 無事なのっ!? どこか怪我でもしたのっ!? またストーカーに襲われたのっ!? イタズラ電話がかかって来たのっ!? 下着を盗まれたのっ!? この間みたいに5階で足の踏み場すらないのに響子のお風呂を覗こうとする、随分と根性の座った変態ストーカー野郎がまた覗きに来たのっ!? 返事しなさい、響おおぉぉぉ―――――――――子おおぉぉぉぉ―――――――――っっ!!」


 早く出て行かなければすぐさま警察に電話をするかもしれない勢いに、響子は急いで用意していた着替えを着て出て行った。

 リビングの方へ歩いて行くとそこには身長190センチ、盛りに盛りまくった茶髪のヘアスタイル、がっしりとした体型にも関わらず着ている衣装は豪華絢爛な着物。


「・・・蘭子さん、あたしなら平気だから」


 懸命に何事もなかったかのような笑みを作って、響子はその巨大な物体を安心させるように落ち着いた口調で声をかけた。

 響子の声を聞いた物体はものすごい反射神経で振り返ると、目に涙を一杯浮かべながら唇を噛み締めている。


「んもう! 驚かせないでちょうだいよ、響子ちゃんっ!! 私ったら・・・本当に心配してたんだからね!」


「ホント、ごめんなさい蘭子さん。ただ・・・その、体重が増えてて思わず悲鳴を上げちゃったって言うか・・・何と言うか・・・。」


 蘭子と言う名の物体が響子の手を握り、涙を流しながら再度確認する。

 響子は何とか納得してもらう為に説得し続け・・・ようやく安心すると蘭子は気を落ち着かせて、笑顔を取り戻した。


「響子ちゃん、私はい・つ・で・も・響子ちゃんの味方だからね!? 可愛い姪っこを傷付ける奴はこの私が絶~~っ対に許さないんだから、安心していいのよ。それじゃ私、もうお店に行くから・・・私が出た後はしっかり鍵をかけて、ね?」


「はいはい、ありがと蘭子さん。それじゃお仕事頑張ってね!」


 まだ後ろ髪引かれる様子であったが、響子は大きな背中をぐいぐい押して部屋から出した。

 パタンとドアを閉めて鍵をかけようとするが蘭子の馬鹿力によって壊されたドアの鍵を見て響子は絶句する、しかし以前にも同じことがあったので響子は平静を保ちつつ玄関の靴箱の中に隠し持っていた換えの鍵を取り付けて、何とかその場を凌ぐ。


 先程の巨大な隣人、名前は蝶野ちょうの 蘭子らんこ(本名・志岐城 則雄のりお

 響子の母親の実の兄であり、現在はゲイバーのママをしている。 響子の両親が他界した後、彼女の身元引受人・・・もとい保護者として面倒を見ている人物だ。

 男性不信の響子がなぜ彼(彼女?)だけ受け入れることが出来ているのか・・・、それは蘭子が伯父(伯母?)という理由もあるが・・・それ以上に蘭子は全身の工事を全て済ませている、いわゆる完全なニューハーフなのだ。

 故に心は正真正銘完全なる『乙女』なので、さすがの響子でも蘭子に対しては『女性・同性』として接することが可能なのである。


 

「はぁ~・・・、あたしこれからどうしたらいいの!?」


 幽霊に取り憑かれている。

 それはまるでストーカーのように、自分の生活の全てを覗かれているようで実に気分が良くない。

 ストーカーや変態を撃退する方法ならある程度心得ているのだが、幽霊だけは専門外だった。

 どうすればいいのかわからない響子はこの時だけは心底、幽霊が見えるという君彦の存在がとても有り難く感じられた。


「・・・ムカつくけど、明日あいつに幽霊を気にしないでやり過ごす方法でも聞いてみよ」



 余談であるが、この晩・・・色情霊の存在がずっと気になっていた響子は結局一睡もすることが出来なかった。


 



 別に読まなくても物語に支障がないコーナー。

志岐城響子のプロフィール。


志岐城響子、15歳、8月23日生まれ、O型、160センチ。

趣味はオシャレすること、買い物、一人カラオケ。

好きな食べ物はフライ系、嫌いな食べ物はホルモン系。

特技はボクシング。

性格は本来は心根の優しい女の子なのだが色情霊のせいで極度の男性不信に陥ってる為、若干凶暴性が増している。 男相手だと口が悪く、暴力を振るうこともある。

現在は黒髪に染めているが、本来は茶髪でウェーブがかっており腰の辺りまで長い。 視力は良い方、少しハーフっぽい顔立ち。 勉強や運動は比較的得意な方だがコミュニケーション能力が劣っている。


 響子が14歳の時に両親と他界、その後ニューハーフの蘭子が保護者になりマンションで一人暮らしを始める。 蘭子は響子の隣の部屋。 同じ階には蘭子の知り合い=ニューハーフや、キャバ嬢達が暮らしている。


響子の詳しい過去は、本編で明かしますので今回はこの辺で・・・。




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