追想
カルシュはその夜、物思いにふけり、あまりよく眠れなかった。キネクという少女の事を思い浮かべていた。友人のようであり、兄妹のようであり、恋人にさえ思えた彼女。ただ一度だけ大喧嘩したことがあった。それもこんな夜のことで、人口月が綺麗にでていた。
「カルシュ、私……皆に必要とされているかな」
「何をいっているんだ、キネク、君ほど必要な人はいない」
「でも、あなたに戦闘の腕も、拳銃の腕も勝てない」
「そんな小さなこと……」
「それだけじゃない、あなたには才能がある……」
「??俺に才能なんて」
少女キネクは振り返った。牢獄のような狭い孤児院の大所帯の寝室で月を背景に、涙をながしていた。
「あてつけのつもりなの!!あなたは人に嫉妬させるほどの才能をもっている、それを人に当てつけているのよ!!!」
「!!?」
カルシュは混乱した。本当に自分の能力になんの自信ももっていなかったから。彼女が何をいっているかわからなかった。
「あなたは、私の夢の邪魔よ……」
「じゃあ、どうすれば……どうすればいいんだ、君のためなら、何でもできる」
「!!」
カルシュがなきだしそうに顔をゆがめると、少女はカルシュによりそった。
「あなた、無責任よ」
「本当に自覚がないんだ……」
背を向ける少女。
「神は残酷ね……無自覚は罪よ、あなたはまた“私の背中を押す”のね」
そう言って、少女はカルシュを振り返りまたないた。